アメリカ大富豪がはじめた「剛腕ロビー活動」の中身がヤバすぎた…!イーロン・マスクがトランプにかけた「ケタ違いのギャンブル」の結果
大富豪が「政治献金しまくり」のアメリカ
事前に予想されていた接戦とは裏腹に、大統領選挙でトランプが圧勝しました。
激戦とされた7つの州を取った上に、2004年のブッシュ大統領以来初めて共和党候補として全米での得票数でも上回りました。圧勝劇の一番の立役者といわれているのが、世界一の大富豪であるイーロン・マスクです。
前回のコラムで、シンガポールでは、政治家への利益供与について非常に厳しく制限されていることを紹介しましたが、米国ではスーパーPAC(政治活動団体)という制度が誕生して以来、党を問わず大富豪たちがほぼ無制限に懇意の政治家に資金を提供できるようになっています。
米国でも政党や政治家に直接資金を提供することは禁止されていますが、表向き各政党や政治家から独立したPACを設立すれば、特定の候補への投票を呼び掛ける以外の個別政策への支持や相手候補への批判については制限がなく資金を提供できます。
今回の大統領選挙では10月末時点でハリスが個人献金とこのスーパーPACを合わせて約15億ドル(約2300億円)、トランプも同じく約11億ドル(約1700億円)を集め、様々な媒体での広告や大規模なイベントの開催に投じてきました。
イーロン・マスクは、元々民主党支持者で前回の大統領選挙でもバイデン候補を指示していました。トランプ支持に転じたのは、自身が手掛ける宇宙事業への民主党政権における規制があまりに厳しいこと、また、衰えが目立つバイデンや選挙の数ヵ月前に急遽出馬することになったハリスを手放しで支援する米国の主要メディアの姿勢への反発がありました。
マスクとトランプの関係構築のきっかけとなったのが、トランプの娘であるイバンカと結婚した不動産実業家のジャレッド・クシュナーといわれています。クシュナーは弟のジョシュアがベンチャー投資家であることから、マスクと学生時代からの付き合いで2016年の大統領選挙においてトランプをサポートしたピーター・ティールなど、シリコンバレーのテック起業家たちとの人脈を持っており、その中でマスクとも親交を深めたようです。
実際にマスクとクシュナーは、2022年W杯の決勝戦を隣同士で観戦しているところを目撃されています。
トランプの「X」を復活させた
イーロン・マスクは、このW杯の決勝戦をクシュナーと観戦する2ヵ月前の2022年10月に、当時のレートで440億ドル(約6.4兆円)をかけて当時のtwitter(現X)を買収し、前経営陣が凍結したトランプのアカウントを22年11月に復活させました。
トランプのアカウントの凍結は、トランプが当時のtwitterなどSNS上で20年の大統領選挙の結果を不服とする支持者たちを煽ったことで、連邦議会議事堂の襲撃につながったためでした。しかし、イーロン・マスクは言論の自由こそ米国の最も重要な基盤であるという自身の政治信念に基づいてアカウント復活の決断を下しました。
トランプはアカウントの凍結解除後もしばらく活動していませんでしたが、23年8月から投稿を再開し、選挙戦が本格化してからは活発に投稿を行い、記事の執筆時点で彼のXアカウントは約9400万人のフォロワーを集めるまでになっています。
イーロン・マスクが得た「ケタ違いのリターン」
24年8月には、マスクともX上で2時間以上にわたってライブ対談をして、2500万回以上も閲覧される人気となりました。これも、Xのオーナーにして、世界最大の2億以上のフォロワーを誇るマスクが呼びかけたからこそでしょう。
マスクはこうしてSNS上でトランプとやり取りするだけではなく、トランプを支持するスーパーPACに200億円近い資金を投じ、さらに選挙戦の終盤となる24年10月にはトランプを支持する政治集会に参加して、ハイテンションな演説も行いました。
また、10月後半からは今回の選挙の趨勢を決めるとされた7つのスイングステーツ(激戦州)において、マスクのスーパーPACの活動方針に沿っているという観点から選ぶことにより、実質的にトランプの支持者に絞った形で毎日1人に100万ドル(約1.5億円)をマスクがプレゼントするという強烈な実弾攻撃も行いました。
果たしてその結果、トランプ再選が実現したのです。これにより、イーロン・マスクの狙いは見事に当たったわけですが、その見返りもまたケタ違いでした。
つづきは後編記事『トランプ当選でイーロン・マスクの資産がとんでもないことになっていた…!「トランプ大投資」の巨大リターンのヤバすぎる中身』でじっくりお伝えしていきましょう。