南野のゴールなどで日本が敵地でインドネシアを下した。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部/現地特派)

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[W杯最終予選]日本 4−0 インドネシア/11月15日/グロラ・ブン・カルノ・スタジアム

 日本代表は北中米ワールドカップ・アジア最終予選の第5節でインドネシアに4−0で快勝した。

 最初のほうは雨が強くて、芝生も滑るなかで、立ち上がりのゲームの入り方は少しまずかった部分があったね。

 3バックがいて、相手のロングボールのバウンドに対する判断が悪くて、板倉が裏を取られて、GKとの1対1に持ち込まれたシーンがあった。一個のパスで抜け出されてボールをコントロールされたのは怖かった。

 雨の影響はあるかもしれないけれど、板倉がセンターにいるのなら、町田にしても、橋岡にしても、逆サイドで抜けてくるかもしれないというポジショニングの準備は多少必要だったのかなと。立ち上がりの15分くらいで危ないシーンを作られてしまったからね。
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 序盤はピリッとしていなかったけど、その大ピンチを彩艶がファインセーブで止めた。あれが本当にゲームを変えた。

 あの1対1になったシーンで落ち着いて、相手のキックフェイントにも惑わされずに近づいていって、足でカバーして防ぎ切ったプレーが実はこのゲームの一番の肝だったんじゃないかな。悪い流れを断ち切った彩艶のセーブは、日本を救ったビッグプレーだったと言えるよね。

 試合を90分間通して見れば、相手の実力を見ても、無理をするゲームではなかったと思う。ワールドカップ仕様で考えたら、あそこのプレーはこうだとか、オフザボールはこうだとかというように、そこまであまり求めるゲームでもなかったよ。

 インドネシアも勝ちにきていたようには見えなかった。今後も日本戦に勝とうとするよりもほかのチームとの争いに勝って、グループ首位の日本相手には勝点1でいいという戦い方をしてくるチームが増えてくると思う。

 そんななかで日本がアジアの中でチームを強化していくのは難しい気はするよね。アジアの中ではそれなりにやっていたら基本的には勝つわけで、格上の南米やヨーロッパのチームと戦うチャンスがないのが一番のネックだね。
 
 今日の試合で特に目についたのは町田。ゲームを全体的に良くしたのは、町田のパフォーマンスが大きい。非常に良かった。

 あのがたいがあって、空中戦でも安定感があって、確実に競り勝ってはね返せて。さらにワンタッチコントロールで足もとに置いたボールをあれだけ正確にインサイドキックができるっていうだけで日本の武器になっている。

 あれは相手も予測できない。サイドを走った選手に向けた長い距離のパスも素晴らしかった。町田のコントロール、守備力、空中戦の強さ、ビルドアップにおける精度の高い左足は、代表の中で今後も肝になっていくはず。もうこれ以上求めることもないよ。

 あとひとつ気になったのは、パリ五輪組の高井、藤田、関根がベンチ外だったこと。やっぱり、この3人のプレーも見て見たかったよね。こういう試合でチームのモチベーション上げていくには選手間の競争も必要。ピッチ上の選手もポジションを取られるっていう危機感がもっと必要なんじゃないかな。
 
 新しい選手を使ってみて欲しいとは思う。藤田のパスセンスは相当なものだし、高井はいらないパスを繋ぎすぎるという欠点はあるけど、あの身長と強さはすごく魅力的。なかでも個人的に関根には注目している。

 センターバックもできるし、187センチもあって、がたいもある。ボランチもできる選手だし、足もとも上手い。とくに彼のクロスは非常に武器になると思う。経験のある菅原を右サイドで使いたい気持ちも分かるけどね。下の世代が上を押し上げていってチームを活性化する選択もありだとは思う。

 でもやっぱり見る側はそうやって「〇〇のプレーを見たい」って思っちゃうけど、ワールドカップを見据えた上で逆算して、一番代表のことを真剣に考えている森保監督が考えていることなので、信じてその選択を応援していきたいね。

【著者プロフィール】
金田喜稔(かねだ・のぶとし)/1958年2月16日生まれ、66歳。広島県出身。現役時代はドリブルの名手として知られ、中央大在学中の1977年6月の韓国戦で日本代表デビューを飾り、代表初ゴールも記録。『19歳119日』で記録したこのゴールは、現在もなお破られていない歴代最年少得点である。その後は日産自動車(現・横浜)でプレーし、1991年に現役を引退。Jリーグ開幕以降はサッカーコメンテーター、解説者として活躍している。