LINEを交換して、彼女の投稿を見ていると高額のバッグやコートを買った写真をアップしていて、本当に稼いでいるんだなと信じていました」

◆2度目のデートでいきなり“仮想通貨”の勧誘

 それから1週間後。またも新大久保駅に集合し、別のカフェでデートをすることに。河田さんは「お酒を飲まない?」と誘ったものの、美奈子さんは下戸ということでランチを提案。できればお酒を飲んで距離を縮めたかった河田さんだが、切り替えてランチデートを楽しもうと思い、待ち合わせ場所に向かったという。しかし、ここで彼女の本性が明らかになった。

「ランチプレートを食べ終わった後に、彼女の口から『仮想通貨って分かりますか?』という言葉が出たんです。

 俺は投資に興味がなかったので『聞いたことはあるけど……』とだけ答えると、これまで以上にハイテンションになって、『仮想通貨の代理業をやっているんですけど……』とまくしたててきました。その常軌を逸した目つきや口調にようやく違和感を覚えました」

 早口で語られた内容を要約すると、彼女はアメリカ生まれの新しい仮想通貨『S』の代理取引に関わっており、自分に初期費用60万円を預ければ3カ月で倍にさせることができるという勧誘だった。

 初心者の美奈子さんでも現在は月に200万近く稼げるようになったのは「AIを駆使した自動取引ツールがあるから」とも説明。さらに「河田さんも始めたら、ブラック労働から逃げられますよ。絶対稼げます!」と追い打ちをかけてきたという。

「勘の鈍い俺でも『これは詐欺じゃないか』と感じました。でも、いきなり彼女に反論することもできず『考えさせてほしい』と伝えると、慌てた彼女は『キャンペーンが終わりますよ。早くしないと稼げなくなりますよ』とムチャクチャなことを言ってきたので、ランチ代を渡して解散しました」

◆デート場所で“仮想通貨マルチ”だったと確信

 帰宅した河田さんは仮想通貨『S』について調べると、同様の勧誘を繰り返して会員を増やすマルチ商法が行われているニュース記事を発見。初期費用が戻らないまま連絡が取れなくなった大学生の被害が綴られていた。また、こうした仮想通貨マルチを行なう集団の拠点が“新大久保駅周辺”だということを知り、戦慄が走ったそうだ。

「待ち合わせ場所が2回とも“新大久保”であることにずっと疑問を持っていましたが、ようやく合点がいきましたね。最初に仕事の話をしつこく聞かれたとき、違和感に気づくべきでした……。それからも彼女からLINEでパーティーの誘いなどが来ましたがすべて無視しましたね」

◆アプリでの“運命の再会”の真相

 そもそも河田さんはマッチングアプリのプロフィール欄に大学名と学部を入力しており、美奈子さんは検索機能を利用して“運命の再会”を探っていたのではと推測。

「大学時代のキレイな後輩とマッチングできるなんて……と浮かれていた自分が情けないです。すぐにプロフィール欄の大学名や学部は伏せるようにしました」

 世の中にはドラマのような運命の再会も、ラクな金儲けもないことを痛感した河田さん。それからは地道にマッチングアプリ出会いを探し求め、公務員の彼女ができたそうだ。皆さんもウマすぎる話には要注意を!

<ライター/木田トウセイ>

【木田トウセイ】
テレビドラマとお笑い、野球をこよなく愛するアラサーライター。