Photo: Kohei K

皆さんは小学生の時、理科の授業で太陽光パネルを使った実験をしたことがありますか?

私の学校では、ミニ四駆のような玩具の車のモーターにソーラーパネルをつなげ、どうやったらうまく動かせるかという授業がありました。誰かが「何枚もつなげたら速く走るんじゃない?」といい始めて、実際やってみると太陽光パネルの重さでなかなか速度が上がらなかったりと、車好きの子どもとしてはとても楽しかったことを覚えています。

振り返ってみると、現代の電気自動車が抱える、重さと航続距離のバランスを取る縮図だった気がします。

従来のシリコン系のデメリットを解消するペロブスカイト太陽電池

太陽光パネルというと、アウトドア用のポータブル電源などで使われるような、黒くてキラキラ反射する板を想像される方が多いかと思います。一昔前は電卓の一角にあったものが、今ではビルの屋上、砂漠の真ん中、国際宇宙ステーションなど、あらゆるところで見るようになりました。

この板状の太陽光パネルは「シリコン系」と呼ばれ、耐久性と太陽光エネルギーを電力に変える変換効率が高いという特徴があります。一方、耐久性向上のためにガラスやフレームを使用しているため重いことや、折り曲げられない、コストが高いなどのデメリットもあります。また、これらのデメリットにより設置場所が限られるため、設置可能な平面スペースの確保にも課題が残ります。

そこで最近注目されているのが、「ペロブスカイト太陽電池」です。ペロブスカイト太陽電池は軽くて柔軟、かつ低コスト化が見込める上、主原料であるヨウ素は日本が生産量世界2位の資源。しかし、寿命が短い、耐久性が低い、大面積化が難しい、変化効率を向上させる必要があるなど、ペロブスカイト太陽電池はシリコン系太陽電池と正反対のデメリットも抱えています。

しかし、これらのデメリットを改善できれば、これまでシリコン系太陽電池が入り込めなかったスペースをペロブスカイト太陽電池が埋めることができます。そのため、多くの企業が実用化に向けて取り組んでおり、パナソニックホールディングス(以下パナソニック)もその一社です。

パナソニックが開発を進めるペロブスカイト太陽電池

先月ベルリンで開催されたIFA 2024のパナソニックブースには、ペロブスカイト太陽電池の展示がありました。

同社が開発しているガラス建材一体型のペロブスカイト太陽電池はガラス板としてビルや施設に使えるほか、ガラスに挟むことで耐久性を高めています。

Photo: Kohei K

さらにおもしろいのが、このガラスに挟んだペロブスカイト層は透過性やパターンをカスタマイズすることができる点です。

たとえば会議室の仕切りなど、ガラスを使いながらも透過性を下げたい場合、現在ではすりガラスであったり、普通のガラスにフィルムを貼ったりしています。ペロブスカイト太陽電池であれば、どれだけペロブスカイト層を詰めるかによって透過性を調整することができるため、眺めが良い高層オフィスの窓は低めの40%、ある程度光を遮りたいバス停のひさしは70%、従業員専用入口のドアは100%などとすることができます。

ブースの担当者の方によると、赤外線と紫外線は透過するものの可視光はブロックされるため、夏場には室内が涼しくなり、「創エネ+省エネ」という一石二鳥が達成できるとのことでした。パターンの印刷も、配線のハードルさえ乗り越えてしまえばできるとのことでした。

ペロブスカイト太陽電池でネックとなっていた変換効率も、パナソニックでは業界最高水準の18.1%を達成しており、モデルハウスでの実証実験もいつから始まっています。パナソニックでは、2026年からは市場でのテストを行い、2029年には市場投入を目指しているとしています。

パナソニックのペロブスカイト太陽電池は、ガラスに挟んでいるためシリコン系と同じく、曲げることができず、大幅な軽量化とはなりません。しかし、「窓」を発電に使えるため、発電可能な面積を大幅に引き上げることができますし、機能性もあるためこれまで導入が検討されていなかったところも設置候補となります。

ペロブスカイト太陽電池の使い道は他にも

大切なのは、これはペロブスカイト太陽電池の実用例の一つに過ぎないということです。前述の通り、ペロブスカイト太陽電池は、「軽く、曲げられ、低コスト」がメリットとなっており、これまで難しかったところにも設置できるようになります。曲面が多い車のボディーや、毎日持ち歩くアイテムやデバイスの表面なども候補に上がってきます。また、軽さを活かして従来のシリコン系太陽電池の上に乗せ、「太陽光の二重取り」をするという実証実験も行われています。低コスト化が進むと、廉価なアイテムにも搭載されるようになるかもしれません。

どんな面でも太陽光発電ができるようになると、どこを発電に使うべきで、どこを使わないべきかの線引きが、「できる、できない」から「する、しない」に移ります。現実的に、できるからと言ってなんでもすべきではありませんが、あらゆる面が発電に使える近未来を想像してみるのも楽しみかもしれません。

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