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厚生労働省の発表によると、1999年から2022年までの間に、一般労働者の平均年齢が39.7歳から43.7歳に上がったそうです。このような状況のなか、流創株式会社代表取締役の前田康二郎さんは「仕事で『メンター』として慕われる人と『老害』として嫌われる人は紙一重」と語っています。そこで今回は、前田さんの著書『メンターになる人、老害になる人。』から一部引用、再編集してお届けします。

【書影】経験豊かなあなたが老害と思われないために、部下・後輩から信頼される秘訣がわかる一冊!前田康二郎『メンターになる人、老害になる人。』

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老害の構成軸

「老害」という言葉を調べると「年齢や経験をたてに幅を利かせ、周囲に迷惑を及ぼしたり、不愉快な気持ちにさせたりする老人」という説明が出てきます。

しかし、現在の「老害」は、年配の方だけを指すのではなく、幅広い世代、つまり10代や20代でも老害になっている人はいます。

松本清張氏の長編小説『迷走地図』(1982年〜83年)で「老害」という言葉が登場していますが、この時代は終身雇用、年功序列がベースでした。

そのため、「年齢が高い人が、社歴も長く、経験も豊富」という前提が成立しており、「老害=年配の人」とも言えましたが、今は違います。

終身雇用や年功序列が崩れ、中途採用も増えたため「年上の部下」「年下の上司」も存在します。

また、リスキリング(新しい職業、職種に就くため、あるいは企業から求められるスキルの変化に適応するため、必要なスキルを獲得すること)によって、40代、50代からこれまでとは違う新たな仕事で1からスキルを構築される方もいます。

そのため20代、30代の社歴やスキルが豊富な人が、そうではない40代、50代に「老害」をしているケースもあるということです。

現代の老害の構成軸

現代の一般社会においては次のような老害の構成軸があると思います。

老害の構成軸

・生きてきた年数(年齢)

・特定の組織に所属してきた在籍年数(会社、団体、地域コミュニティなど)

・特定の専門分野の実務経験歴年数(営業歴、制作歴、編集歴、人事歴、経理歴、教師歴、作家歴、野球歴、など)

・組織のポジションの経験年数(社長、部長、理事長、編集長、など)

これらの年数が長いほど、その人が周囲から「メンター」となる要素もあれば反対に「老害」となる危険性もあるわけです。

「老害」よりも「長害」という言葉のほうが、現代の社会にはしっくりくるかもしれません。

業務経験と人生経験

たとえば、60歳で定年を迎えた方が、以前から興味のあった業界でアルバイトとして働いてみよう、と、近所の飲食店で働き始めました。

その店には入店歴3年の大学生のアルバイトリーダーが君臨しており、「いらっしゃいませの声が小さい!」「何度言ったらわかるの!」「もっとさっさとやって!」とスタッフを怒鳴り散らしていました。


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その様子を見ていた60歳の人が、休憩時間にアルバイトリーダーの人に「気持ちはわかるけど、怒鳴り声がお客さんのところに聞こえるかもしれないし、もう少し楽しくやってもいいんじゃないのかな」と意見をしました。

するとそのアルバイトリーダーの人は「私はここで3年もやっている、しかもリーダーですよ。あなたは自分が年上だからというだけで私のやり方に意見してくるんですか。それって老害じゃないですか? 私が年下だから馬鹿にしているんですか?」と言い返しました。

60歳の人は「確かに自分は業界未経験でこのお店にも入店したばかりだけど、人生経験は豊富だから皆のために良かれと思って言っただけなのに……。そっちこそ入店歴と経験を盾にした老害じゃないか」と思ったことでしょう。

現代の老害は年齢だけではない

このケースのように「年下の上司(業務経験が豊富)」と「年上の部下(人生経験が豊富)」の関係性は、双方に双方のメンターとなれる要素がありますので、互いに敬意を持った関係性が築ければ「メンター&メンター」となり最高の組み合わせになります。

しかし反対にその関係性が築けないと「老害VS老害」で互いに攻撃し合う危険性もはらんでいます。

同様の例として、他社から引き抜かれてきた人材が中途入社でその会社のリーダーとして部下を率いていくとき「社歴の浅い上司&社歴の長い部下」という組み合わせになります。

この場合も、相互に補完し合い最高のチームになる可能性もある半面、反目し合ってバラバラなチームになってしまう危険性もあります。

現代の「老害」というのは単に年齢だけではなく、若い年代の人においても、十分キャリアを積まれて強みを持っている方でしたら若くしてメンターにもなる半面、若くして老害にもなりうる可能性があるということです。

※本稿は、『メンターになる人、老害になる人。』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。