「ボランティア休暇」の利用者が多いトップ100社
能登半島地震の避難所を巡回する様子。認定NPO法人ジャパンハートは企業向けに同様の災害ボランティア研修を実施する(写真:認定NPO法人ジャパンハート)
1月1日に発生した能登半島地震、日本列島を次々と襲う台風。日本だけでなく世界中で大災害が増えている。さまざまな被害が出る中で必要となるのがボランティアだ。もちろん緊急事態以外の日常の課題でも必要とされる場面は多い。
こうした際に対応できるよう、大企業中心に従業員へのボランティア休暇が広がりを見せている。その実態はどのようになっているのだろうか。
今回は『CSR企業総覧(雇用・人材活用編)』2024年版掲載データ(原則2022年度)を基に「ボランティア休暇利用者」の上位100社のランキングを作成した。ボランティア休暇取得に積極的な企業をご紹介する。
1位の住友生命保険はボランティア活動経費も支援
ランキング1位は昨年に続き住友生命保険。取得人数は4万9601人だった。ただ、この人数は参加した延べ人数であることに注意が必要だ。同社は1992年から職員参加型ボランティア活動を海外も含む各地で継続実施してきた。取り組みは清掃活動やフードドライブなど多岐にわたる。会社によるボランティア活動にかかる経費支援や全社対象セミナーでのボランティア休暇周知も行い参加者増につなげている。
従業員の能力を生かしたプロボノ活動にも積極的だ。保険に関する知識の普及や社会的理解の促進を目的に役職員による講義などを行う。
2位はデンソーの2306人。2021年度からボランティア休暇制度を導入し、休暇制度の周知などを積極的に行い昨年から1511人増えた。従業員や役員からの寄付金を助成金として地域団体の運営に協力している。
3位はJ.フロント リテイリングの1946人。大丸松坂屋百貨店での就業時間中の地域防災や祭事といったボランティア活動参加をカウントしている。
4位は積水ハウスの1419人。従業員向けにマッチング・ギフト団体が活動紹介する「つながりカフェ」をWeb開催するなど制度周知に力を入れている。
5位は大和ハウス工業の1410人。1時間単位でのボランティア休暇が取得可能だ。
以下、6位丸井グループ1317人、7位NIPPON EXPRESSホールディングス1286人、8位ナブテスコ878人、9位オムロン797人、10位サンケン電気748人と続く。
利用者が100人以上なのは16位日本電信電話の140人まで。10人以上は78位の東日本旅客鉄道ほか4社までだった。今回のランキング対象438社で取得人数の合計は6万6142人だった。対象社数は異なるが2019年度は10万人以上いたことからコロナ前の水準はまだ遠い。
2022年度のボランティア休暇制度は543社(比率43.2%)が導入し、社数は13年連続の上昇となった。ただ、導入比率は昨年の43.7%を下回り、比率上昇は6年連続で止まった。ボランティア休暇に対する企業の関心に温度差が出始めているようにも見える。
NPOと企業が共同でボランティア参加を増やす取り組み
そうした中、従業員のボランティア参加を促進する取り組みも始まっている。国際医療支援などを行う認定NPO法人ジャパンハートでは、医療分野以外の災害ボランティア研修を企業ごと(対象は従業員)に10月から有料で実施する。
この研修を担当する同災害支援・対策セクション責任者の高橋茉莉子氏は「災害発災時に非医療としてボランティア活動に参加できる人材を育成するだけでなく、自らが被災した際の減災に役立てることもできる」とメリットを語る。こうしたNPOと企業が共同でボランティア参加を増やす取り組みは今後広がっていきそうだ。
従業員がボランティア活動をすることで、企業のイメージアップが期待できるが、さらに効果が高いのが、社会課題解決への意識が高い従業員を育成できることだ。
企業は社会課題を解決することを求められる時代になっている。従業員の社会課題意識を高めることが10年後、20年後に大きな差になっている可能性は高い。多くの企業に従業員のボランティア参加を推進する取り組みを進めてほしい。
1〜49位
51〜100位
(岸本 吉浩 : 東洋経済 記者)