<本音を言う人>と<正直な人>はイコールではない。71歳プロダクトデザイナー「相手への配慮を欠いた本音は、ただ相手を傷つけるだけ」
内閣府が令和5年に行った「国民生活に関する世論調査」によると、60〜69歳の人が最も多く答えた悩み・不安の内容は「老後の生活設計について」だったそう。しかし「60代になったからといって『それらしく振る舞わなきゃ』と行動を制限する必要はない」と語るのは、SNSのフォロワーが10万人を超える71歳のプロダクトデザイナー・秋田道夫さん。今回は、秋田さんの著書『60歳からの人生デザイン - 手ぶらで、笑顔で、機嫌よく過ごすための美学』から、60歳から毎日を機嫌よく過ごすための生き方を一部ご紹介します。
【書影】毎日が「腑に落ちた日常」に変わる、最高にポジティブな60点主義のススメ。秋田道夫『60歳からの人生デザイン - 手ぶらで、笑顔で、機嫌よく過ごすための美学』
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正直は相手に苦みを与え、素直は甘みを与える
「正直」と「素直」。同じ字が含まれていますが、そのニュアンスは大きく異なります。
「正直」とは、自分に対して正直であること。「素直」とは、相手の言うことを受け入れること。
「正直」というのはいい表現に聞こえるかもしれませんが、自分が中心の考え方で、相手に対する慮(おもんぱか)りはないですよね。
社会に出ていろいろ経験すると、「素直さ」より「したたかさ」の必要性に目覚めます。
そこで「素直さ」を置いていきます。
そして「したたかさ」に疲れた頃に「素直さ」が大切だと気づくのです。
20年前のわたし
かく言うわたしも20年前は「正直」だったと思います。
たとえばネット上での発信を比べてみても、それは明らかです。当時発信していたブログはわたしの手続きミスによりうっかり消滅させてしまったのですが、尖(とが)ったことを書いていました。「怖そう」という印象を与えていたかもしれません。
でもそんな時代を経て、いまのトーンや見せ方に落ち着いているわけです。
「そんな過去があったとは意外です」とよく言われます。
振り返ると「これから世に出てやるぞ」という思いもあり、爪痕を残したかったのでしょう。だからエキセントリックなことを言いたくなってしまう。若気の至りです。
でも今はもう「エキセントリックなわたし」である必要はありません。
自分も含めて誰かを傷つけるようなことは、一切書きたくないんです。
そりゃ今でも、書こうと思えばそういう内容はいくらでも出てくるでしょう。でも、書いていません。書いてないから「柔和な人」と思ってもらえるんです。
「正直」とは
「本音を言う人」は、「正直な人」とイコールではありません。
言葉を相手に伝える時に大切なのは「相手が聞いて不快ではないか」です。
(写真提供:Photo AC)
相手への配慮を欠いた本音は、相手を傷つけます。
「正直」とは配慮の先にあるものです。
わたしはこの考え方を広めたいと願っています。
「正直」は自身に、「素直」は相手に。
正直は自分に対する誠実であり、素直は相手への誠意があればこそです。
「素直さ」には相手の心の壁をスッと通り抜けるチカラがあります。
素直に好意的に物事を受け止められる人は最強です。
大事なのは「目の前にいる人」の話に耳を傾け、素直に対応することです。
難しく受け取らないで、素直に受け止める。
受け止められない場合は気持ち良く受け流し、きれいに忘れて次に備える。
そんな態度が一番です。
素直さが一番
素直さは、いろいろなところで役立ってくれます。
素直に聞く。
素直に受け取る。
素直に考える。
素直に工夫する。
素直に行動する。
素直に感謝する。
日常も言動も仕事も、素直さが一番です。
では「素直さ」とは一体何か。
「誠実さ」と「真摯さ」に分解できるような気がします。
※本稿は、『60歳からの人生デザイン - 手ぶらで、笑顔で、機嫌よく過ごすための美学』(ワニブックス)の一部を再編集したものです。