4年間オスとの接触がなかったメスのサメが卵を産んだことが報告される
イリノイ州ブルックフィールドのシカゴ郊外にあるブルックフィールド動物園では、4年間オスのサメと接触しない環境で飼育していたメスのサメが子サメを出産した事例が報告されています。サメのような複雑な脊椎動物では受精を必要としない単為生殖で胚が成長することはまれですが、生まれたサメは特に健康上の異常を見せることなく成長しています。
Brookfield Zoo Chicago - Brookfield Zoo Chicago Press Room
Shark has virgin birth after no male contact for 4 years in Chicago zoo | Live Science
https://www.livescience.com/animals/sharks/shark-has-virgin-birth-after-no-male-contact-for-4-years-in-chicago-zoo
人間を含む哺乳類は精子から特定の遺伝子を得る必要があるため、無性生殖はできません。一方で、通常は有性生殖する種でも、鳥やサメ、トカゲ、ヘビでは無性の卵から子どもが産まれる「処女受胎」するケースが観察されています。2023年6月には、オスと接触していなかったメスのワニから、クローンのように親とほぼ同じ遺伝子を持った子どもが生まれてきた単為生殖の事例が初めて報告されました。
ワニが「処女懐胎」した事例が初めて報告される - GIGAZINE
by Šarūnas Burdulis
2023年に無性生殖をしたと話題になったのが、オーストラリアとニューギニア島の浅瀬に生息するマモンツキテンジクザメ(エポーレットシャーク)です。このサメの体長は1m以下で、細長い体形にオールのようなヒレがあり、浅瀬や海底を歩くように動くことが特徴的です。
ブルックフィールド動物園には、2019年に3歳のエポーレットシャークのメスが到着しました。そこから数年間オスと接触しない形で飼育されてきましたが、成体まで育ちつつある2022年から、エポーレットシャークは毎月2〜4個の卵を産み始めました。動物園の声明によると、通常それらの卵は孵化(ふか)することのない無精卵ですが、ある日の卵は1個だけ受精卵となっており、5カ月後に赤ちゃんサメが孵化したそうです。
以下は、ブルックフィールド動物園が単為生殖の赤ちゃんサメの誕生をFacebookで報告した投稿。生後2カ月で、体長約12〜15cmほどです。
また、以下はブルックフィールド動物園がニュースメディアに提供したムービー。子どものエポーレットシャークが、ヒレを使って地面を歩くように移動していることがわかります。
Baby epaulette shark hatches at Brookfield Zoo - YouTube
ブルックフィールド動物園の主任動物ケア専門家であるマイク・マセリス氏は「単為生殖は一部の無脊椎動物では自然に起こりますが、サメなどの複雑な脊椎動物ではそれほど起こりません。動物園水族館協会の認定施設から、無性生殖でエポレットシャークの幼生が生まれた可能性があるという報告があったのは、今回が2番目の事例です。単為生殖で生まれたサメの赤ちゃんはとてもデリケートですが、当館で産まれた幼生のエポーレットシャークは、細かく刻んだシシャモやミンチのイカなどを食べ、元気に育っています」と報告しています。
単為生殖で産まれたエポーレットシャークは、健康状態に配慮しながらブルックフィールド動物園で来場者向けに公開されており、マセリス氏は「来場者のみなさんに子サメを見てもらえるのが楽しみです」と語りました。