「ポップで可愛い」→「ガールクラッシュ」 電撃イメチェンのNiziUに何が起こっているのか
日本の9人組ガールズグループ
日本の9人組ガールズグループ・NiziU(ニジュー)が新曲で大幅にイメージチェンジし音楽業界とファンを驚かせている。NiziUは韓国大手芸能事務所であるJYPエンターテインメントに所属しており、9人組ガールズグループ・TWICE(トゥワイス)の妹分的な存在だ。
2020年6月にミニアルバム「Make you happy」でプレデビュー。同曲のYouTubeミュージックビデオ(MV)は公開から半年で2億回再生を超える大人気となった。彼女たちの魅力は可愛らしい楽曲とはつらつとした若さ。しかし、7月24日リリースの1st EP「RISE UP」収録の同タイトル曲は大方の予想を裏切るガールクラッシュ路線だった。
【写真】雰囲気ガラリ…「大人っぽい」「すべてが異次元」の声。電撃イメチェンが話題になっているNiziU
K-POPに詳しい音楽ライターがこう指摘する。
「NiziUはJ.Y.パークがプロデューサーを務めた日韓合同グローバルオーディション『Nizi Project』の最終選考の上位9人で結成されたグループで、日本市場向けにローカライズされた日本人メンバーだけのK-POPグループと言えます。シングルではプレデビュー曲の『Make you happy』、デビューシングル『Step and a step』、『Take a picture/Poppin' Shakin'』、『CLAP CLAP』、ウィンターバラードの『Blue Moon』、『映画ドラえもん のび太と空の理想郷』の主題歌となった『Paradise』を発表してきました。今回発売された『RISE UP』はこれまでのポップで可愛いイメージとは、正反対のクールでダークなガールクラッシュな仕上がり。ここまでのイメチェンはかなりの冒険だと思います」
ガールクラッシュとは「女性が憧れるかっこいい女性」という意味合いを持つ言葉。「自分だけのスタイルを強く主張できる女性」を表現する歌詞やダンスが特徴で、K-POPガールズグループの多くがこのコンセプトを採用。2009年にデビューした2NE1(トゥエニィワン)が元祖とされており、16年デビューのBLACKPINKの登場により一気に定着した。自己の積極的な肯定はファッションやメイクにも及び、最近ではITZY(イッチ)、宮脇咲良の所属するLE SSERAFIM(ルセラフィム)、aespa(エスパ)、IVE(アイヴ)が、代表的なガルクラ系のガールズグループとして世界的な人気を獲得している。
NiziUをガルクラ系に仕上げた楽曲「RISE UP」にはそうそうたるミュージシャンが結集している。作曲に加わっている韓国のクリエイターズレーベル「153/Joombas」には、EXO、NCT、少女時代のテヨン、THE BOYZ、OH MY GIRLの制作に加わった作家が所属。作詞を担当したラッパー・ソングライター・トラックメイカーのKENTZは、Number_iの「Is it me?」やJO1の「Your Key」(テレビアニメ「七つの大罪 黙示録の四騎士」オープニングテーマ曲)、Snow Manの「JUICY」「EVOLUTION」「TIKI TIKI」の作詞作曲を手がけたヒットメーカーだ。
来年、TWICEが再々契約
今回のNiziUのガルクラ系進出について、レコード会社関係者がこう話す。
「JYPは来年、TWICEの再々契約が控えています。メンバーの結束は固いですが、ナヨン、ジヒョ、ツウィがソロデビューし、日本人メンバーのミナ、サナ、モモは『MISAMO』として個別活動を始めました。予想されるTWICEの活動休止に備えて、NiziUの振り幅を広げてグローバル市場を狙う必要があったのでしょう。ガルクラ系のコンセプトを加えることで、男性ファンよりグッズの購入に熱心な女性ファンを新たに引き込む作戦です」
NiziUの「RISE UP」はTVアニメ「神之塔-Tower of God- 王子の帰還」 のオープニングテーマで、収録曲「BELIEVE」も同アニメのエンディングテーマとなっている。今回のガルクラ路線は世界的な大ヒットを記録している同アニメの原作漫画の世界観を取り入れており、英語版や韓国語版も出荷されている。
今後の活動としては、8月31日にHARD OFF ECO スタジアム新潟での「⾳楽と髭達2024-END OF SUMMER-」に出演し、翌9月1日には東京・調布の味の素スタジアムで開催されるエイベックス主催の夏フェスa-nationに初参加。同17、18日に千葉・ZOZOマリンスタジアムでコンサート。さらには、11月23日の福井からスタートする初のウィンターツアーを全国8都市計18公演で行うという目まぐるしいスケジュールが組まれている。
「NiziUは華々しいデビューを飾りましたが、K-POP第4世代や日本では坂道系など多くのガールズグループが乱立する中、存在感が薄くなった時期もあります。ただ、全国ツアーやコンサートは盛況で、東京ドーム公演も実現させました。今回の『RISE UP』は新たな女性ファンとアニメファンの両方を狙ったチャレンジ曲で、予想以上の反響を得ています。実はライブではメンバーのリマ、マユカが強烈なラップを放ったり、他のメンバーも強烈なダンスブレイクを披露したり、ガルクラ系の演出は多数ありました。今後は、単独で味の素スタジアムや日産スタジアムなどの巨大スタジアム公演に進出できるかがカギですね」(前出の音楽ライター)
ガルクラ路線を続けるのかどうかは今後を注視するしかないが、振り幅の拡大でTWICEのように世界市場を狙えるのか――。
デイリー新潮編集部