アメリカの司法省が2024年7月26日に、宗教や中絶、銃の規制といったアメリカ社会を分断させるような問題に関するユーザーの意見をTikTokが収集し、中国の親会社に流していたとする法廷文書を裁判所に提出していたことがわかりました。

#01208647195 in TikTok Inc. v. Merrick Garland (D.C. Cir., 24-1113) - CourtListener.com

https://www.courtlistener.com/docket/68506893/01208647195/tiktok-inc-v-merrick-garland/

TikTok Collected U.S. Users’ Views on Gun Control, Abortion and Religion, U.S. Says - WSJ

https://www.wsj.com/tech/tiktok-collected-u-s-users-views-on-gun-control-abortion-and-religion-u-s-says-4fcf19f6

DOJ claims TikTok collected U.S. user views on abortion, gun control

https://www.cnbc.com/2024/07/27/justice-dept-asks-court-to-reject-tiktok-challenge-to-crackdown-law.html

Justice Dept. asks court to reject TikTok challenge to crackdown law | Reuters

https://www.reuters.com/legal/usdoj-tells-court-reject-tiktok-challenge-crackdown-law-2024-07-27/

TikTokを運営する中国企業のByteDanceに対し、アメリカ事業の売却か撤退を求める「TikTok禁止法」をめぐってByteDanceが提起した訴訟で、当局は新たな資料をワシントンの連邦控訴裁判所に提出しました。

その資料によると、TikTokはByteDanceと直接やりとりするための社内システム「Lark」を使用しており、TikTokの従業員はLarkを通じて中絶や宗教などデリケートな話題に関する意見を含むアメリカのユーザーのデータを親会社に送信していたとのこと。ByteDanceに送られたユーザーのデータは中国国内のサーバーに保存され、中国にいるByteDanceの従業員がアクセスできるようになっていたと、当局は主張しています。

以前にも、TikTokがLarkを通じて住所などの機密データや、児童ポルノに該当するコンテンツをByteDanceと共有していたことを示す内部文書の存在が発覚したことがあります。

TikTokユーザーの運転免許証・住所・写真などを中国人社員が社内ツール「Lark」で共有していたことが内部文書で発覚 - GIGAZINE



by Solen Feyissa

TikTokがアメリカ社会の分断を招く問題に関する意見を収集していたことについて、ケーシー・ブラックバーン国家情報長官補佐は「このレポートは、ByteDanceとTikTokが中国国外のコンテンツを検閲するという中国当局の要求に基づいて行動していたことを改めて実証するものです」と述べました。

当局はまた、TikTokには従業員が手動で特定の動画の露出を増やす「heating(ヒーティング)」という機能があることも明かしました。ヒーティングは、TikTokが人気のあるコンテンツを使って広告の効果を高める上で有用な機能ですが、アメリカ当局は「中国政府が望んだコンテンツを普及させるのに使われるおそれがある」と危惧しています。

アメリカ司法省は資料の中で「TikTokがもたらす深刻な国家安全保障上の脅威は現実のものです。TikTokは、『データ収集』と『秘密裏にコンテンツを操作する』という2つの方法で、アメリカの国家安全保障を弱体化させる手段を、中国政府に提供しています」と述べました。

一方、TikTokの広報担当者であるアレックス・ハウレク氏は「提出された資料は、憲法が我々の味方であるという事実を変えるものではありません。TikTok禁止法は、1億7000万人のアメリカ国民の声を封じ込め、憲法修正第1条にも反しています。これまでも述べたことですが、政府は自らの主張の証拠を、議会がこの違憲法案を可決した時も含めて1回も示していません。今回もまた、政府は機密情報を盾にして前例のない措置を講じていますが、私たちは法廷で勝利すると確信しています」と述べました。

ジョー・バイデン大統領が2024年4月に署名したこの法律に対し、2024年11月の大統領選に出馬する予定のドナルド・トランプ氏は「TikTokの禁止を決して支持しません」と発言したことがあります。

ドナルド・トランプ氏が「私はTikTok支持」「TikTokがなくなるとFacebookとInstagramがさらなる力を持つ」と発言 - GIGAZINE



by Gage Skidmore

また、選挙戦から撤退するバイデン大統領の代わりの候補として民主党から擁立される見通しのカマラ・ハリス副大統領も、7月25日にTikTokに公式アカウントを開設しました。もっとも、バイデン陣営も若者にリーチする手段としてTikTokを活用していくと明言したことがあり、選挙活動でTikTokを使用しているだけではTikTok禁止法に対する見解はわかりません。

TikTok禁止法が違憲か否かを問う裁判の口頭弁論は、2024年9月に開かれる予定です。