キャンプで乾杯

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「ニッポン人は働きすぎ」と諸外国からいわれるなか、仕事より余暇を重視する割合が年々増加しており、7割近くの人が「余暇派」であることがわかった。

公益財団法人・日本生産性本部が2024年7月22日に発表した「レジャー白書2024」(速報版)によると、特に「仕事より余暇に生きがいを求める」という人が3割以上いる。

日本人はいつから、どうしてレジャーを大切にするようになったのか。調査担当者に聞いた。

「余暇のゆとり感指数」も、マイナスからプラスに

日本生産性本部の調査(2024年2月)は、全国の15〜79歳お男女3303人が対象。

「あなたは仕事と余暇のどちらに重きを置いているか」と聞くと、余暇重視派(「仕事よりも余暇の中に生きがいを求める」と「仕事は要領よくかたづけて、できるだけ余暇を楽しむ」の合計)は2023年には65.7%となった。2009年の50.5%の1.3倍となり、増加傾向が続いている【図表1】。

特に、「仕事よりも余暇の中に生きがいを求める」(34.1%)と答えた人が3人に1人を超えたのが特徴だ。

逆に、仕事重視派(「仕事に生きがいを求めて全力を傾ける」と「余暇も時に楽しむが、仕事のほうに力を注ぐ」の合計)は2023年には11.5%となり、2009年の19.1%に比べ6割に減った【図表1】。

「仕事に生きがいを求めて全力を傾ける」という猛烈な仕事人間タイプが2%以下に減ったことが目立つ。

毎年の調査では、「余暇時間のゆとり感指数」と「余暇支出のゆとり感指数」を出している。それぞれ、余暇時間と余暇支出について、前年より「増えた」と回答した人と「減った」と回答した人の割合の差分を表示したものだ。

2つともコロナ禍前の2018年までマイナスだった。それだけ余暇に関する「ゆとり」がなかったわけだ。

ところが、コロナ禍の2019年から2022年にかけて、「余暇時間のゆとり感指数」が大きくプラスに転じた一方、「余暇支出のゆとり感指数」が激しくマイナスに急降下した。そして、2023年には「余暇支出のゆとり感指数」もプラスに転じている【図表2】。

これはいったいどういうわけだろうか。

働き方改革関連法が、余暇派の人間を増やした

J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を行なった日本生産性本部の広報担当者に話を聞いた。

――2009年以降14年間の【図表1】のグラフをみると、仕事より余暇を優先する人が増えています。いつから日本人は「仕事人間」から「余暇人間」になったのでしょうか。ズバリ、その理由は何ですか。

広報担当者 「仕事よりも余暇の中に生きがいを求める」と答えた人(青色のグラフ)を見ると、2014年頃まではほぼ横ばいなのです。ところが、2015年から2017年にかけて増え始めています。

2015年は「働き方改革の元年」といわれます。4月に大きな柱である「時間外労働割増賃金の削減」「年次有給休暇の取得」「フレックスタイム制度の見直し」「裁量性労働体制の見直し」「高度プロフェッショナル制度の創設」など5点を主な内容とする「労働基準法等改正案」が国会に提出されました。

つまり、「ワークライフバランス」について、「ワーク」(働く)より「ライフ」(生活)を重視する気運が、企業と働く人々の間に盛り上がるきっかけになったのです。

――たしかに社会全体に「働き方改革」と「ワークライフバランス」という言葉が広がりましたよね。

広報担当者 【図表1】では、2019年には青色の「仕事より余暇に生きがいを求める」人の割合がまた増えましたが、これは2019年から働き方改革関連法が順次施行されていったことが大きいと思います。

「読書」「動画視聴」がレジャーのトップとは、悲し過ぎる

――その後、2021年以降に青色グラフの人がまた増えていますが、こちらはコロナ禍を経験したことが大きいですか。

広報担当者 そう思います。【図表2】を見てください。コロナ禍の期間中、「余暇時間のゆとり指数」(青色の折れ線グラフ)が大きくプラスになる一方、「余暇支出のゆとり指数」(オレンジ色の折れ線グラフ)が、その3倍もマイナスに下がっています。

自粛の巣籠もり生活を強いられて、余暇の時間はあまるほどあるのに、逆にお金を使う機会がほとんどなくなったということです。2021年に開かれた東京五輪だった無観客試合で行なわれたほどで、人々は、旅行や観劇に出ることもできませんでした。

コロナ禍の2020年と2021年に、余暇活動に参加した項目の上位を聞くと、1〜2位が「読書」と「動画鑑賞」(レンタル、配信含む)です。それ以外の年は「国内観光旅行」や「外食」「ドライブ」が上位の常連だから、いかに余暇を楽しめなかったかわかります。

――「読書」や「動画視聴」がレジャーのトップなんて、悲し過ぎますね。

広報担当者 コロナ禍では仕事もオンライン中心で、あまりできませんでした。そうした生活の中で、改めて仕事のあり方を考え直し、余暇の大切さに気付いたとも考えられます。

いつも一定数いる「要領のいい人」と「猛烈仕事人間」

――なるほど。ところで、【図表1】のオレンジ色グラフの「仕事は要領よく片付けて、できるだけ余暇を楽しむ」という要領のいいタイプはコンスタントに3割をキープしています。

また、青色グラフの「仕事に生きがいを求めて全力を傾ける」という猛烈仕事人間タイプもコンスタントに1〜2%います。これはどういうことでしょうか。

広報担当者 それぞれのタイプが、どの時代にも一定数いるということだと思います。

灰色グラフの「仕事にも余暇にも同じくらい力を入れる」という人と、黄色グラフの「余暇も時に楽しむが、仕事のほうに力を注ぐ」という人が、それぞれ14年間で7ポイント以上減っています。

一貫してこうした傾向があり、全体的に「仕事派」より「余暇派」を増やしていったと考えられます。

――今後も余暇を重視する傾向が増えて、日本人の働き方に対する考え方が変わっていくと思いますか。

広報担当者 現在、アフターコロナによって揺り戻しが起こるかどうか注視しているところです。しかし、個人的には余暇を大切に考える傾向が進んでいくと考えています。

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)