7日、資本・業務提携の基本合意発表の席上、握手を交わすトヨタの渡辺社長といすゞの井田社長(左)。(撮影:吉川忠行)

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トヨタ自動車<7203>の渡辺捷昭社長といすゞ自動車<7202>の井田義則社長は7日、東京都港区の東京プリンスホテルで記者会見し、両社が資本・業務提携することで基本合意したと正式に発表した。

 両社は11月中に検討チームを立ち上げ、 小型ディーゼルエンジンの開発・生産、ディーゼルエンジンの排ガス制御技術や装置の共同開発、環境技術の3分野について 、事業形態や対象範囲など具体的な内容を実務者レベルで詰める。井田社長によると、3年後にも共同開発第1号のエンジンが誕生する見通し。提携協議にはトヨタから木下光男、滝本正民の両副社長が参加する。

 渡辺社長は「お互いに競争力の強化に努め、グローバルな成長と発展をはかり、お客様のご要望にお応えできる商品をよりタイムリーに供給したい」と強調。一方の井田社長は「世界最大規模の販売を誇るトヨタ車にいすゞのディーゼルエンジンが載るということは、いすゞ自動車のブランド価値の向上につながるものと思う」と期待を示した。

  トヨタは10日付で、いすゞの普通株式を三菱商事から6000万株、伊藤忠商事から4000万株、計1億株(発行済み株式総数の5.9%)を取得する。取得額は440億円で、外資が持つ優先株がすべて転換された場合、トヨタは第3位株主になる見込み。

 いすゞは今年春まで米ゼネラルモーターズ(GM)の傘下にあり、 GMの商用車部門の中核企業として位置づけられていた。両社は1971年に提携を締結。同時にGMはいすゞに発行済み株式総数の34%分を出資し、一時は比率を49%まで高めた。

 その後、経営不振に陥ったGMは、05年10月に富士重工業<7270> 、今年3月にスズキ<7269>と、筆頭株主として出資していた国内2社の株式を売却。富士重株をトヨタ、スズキ株をスズキがそれぞれ引き受けた。4月にはGMが保有するいすゞ株7.9%のすべてを三菱商事、伊藤忠商事、みずほコーポレート銀行に売却し、35年間続いた資本提携を解消した。

 今回の提携が実質的なGM救済にあたるとの観測について、渡辺社長は否定し、近く来日するワゴナー会長と会談する可能性についても「ない」とした。

 提携は今年7月にトヨタ側から持ちかけ、3カ月間にわたる議論を経て、基本合意に至った。背景には、ガソリンエンジンに比べて二酸化炭素の排出量が少なく、燃費性能の高いディーゼルエンジンが燃料費高騰の影響下で見直され、各メーカーが環境性能を高めた新型ディーゼルの開発にしのぎを削っている状況がある。フランスではディーゼル車が全販売台数の6割を占めるなど、欧州では主流となっている。

 トヨタでは世界販売800万台のうち100万台がディーゼル車。いすゞは欧州で排気量1.7リットルのディーゼルエンジンを生産している。

 渡辺社長は、ディーゼルエンジンの動向について「世界的に増えていくだろう。環境対応技術の一つのパワートレインとしてたいへん有力であると考えている」との見方を示し、いすゞとの提携により同エンジン開発でコスト削減や性能向上などのメリットを挙げた。【了】