「おい!ふざけんなよ!」

 まわりの乗客はみんな失笑、「起きてちゃんと謝りなよ」という声が聞こえてきた。

 お兄さんはぶんぶんとサラリーマンの手を振り回し、ついに名刺入れを抜き取った。だが、それでも目を閉じたまま名刺入れの端っこを掴んで離さなかったので、筆者も他の人たちも爆笑してしまった。起きてるじゃん!

 お兄さんは名刺入れから、名刺を1枚取り出して「明日会社に連絡しますね」と声をかけると、次の駅でさっそうと降りていった。

 サラリーマンは体勢を変えることなく、ずっと寝たふりを続けていた。「この人は寝たふりをいつまで続けるんだろう?」と興味はあったが、国分寺に着いてしまったので、その後のことはどうなったかはわからない。飲み過ぎは良くないですね……。

<文/吉沢さりぃ>

―[乗り物で腹が立った話]―

【吉沢さりぃ】
ライター兼底辺グラドルの二足のわらじ。著書に『最底辺グラドルの胸のうち』(イースト・プレス)、『現役底辺グラドルが暴露する グラビアアイドルのぶっちゃけ話』、『現役グラドルがカラダを張って体験してきました』(ともに彩図社)などがある。趣味は飲酒、箱根駅伝、少女漫画。X(旧Twitter):@sally_y0720