現地時間の2024年2月末、イーロン・マスク氏がAI開発企業のOpenAIを訴えました。しかし、この訴訟をマスク氏は取り下げています。

Elon Musk drops lawsuit against OpenAI - The Verge

https://www.theverge.com/2024/6/11/24176462/elon-musk-openai-lawsuit-sam-altman-dropped



Elon Musk drops suit against OpenAI and Sam Altman

https://www.cnbc.com/2024/06/11/elon-musk-drops-suit-against-openai-and-sam-altman.html

マスク氏は自身も立ち上げに携わったOpenAIについて、「当初は非営利組織であったにもかかわらず、いつの間にか営利組織に移行している」と常々批判してきました。

そして、非営利組織として立ち上げられたOpenAIが、事実上Microsoftの子会社へと成り下がってしまっているとして、2024年2月に同社を訴えています。マスク氏はOpenAIを立ち上げる際に、他の創設メンバーと共に「OpenAIを非営利組織として、その技術をオープンソースのまま維持する」という契約に合意したと主張しています。OpenAIはMicrosoftと提携することで、この契約に違反しているとマスク氏は主張しているわけです。なお、マスク氏は裁判所に対してOpenAIをオープンソースのソフトウェアを開発する非営利団体に強制的に戻し、サム・アルトマン氏とグレッグ・ブロックマン氏が財務上の利益のためにOpenAIやその資産を利用すること、あるいはMicrosoftやその他の団体の利益のためにOpenAIを利用することを禁止する命令を出すよう求めました。

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これに対して、OpenAIは「OpenAIとテスラの合併」あるいは「OpenAIの過半数の株式の取得、取締役会の支配権の獲得、CEOへの就任」のいずれかをマスク氏が望んでいたと反論しています。

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しかし、マスク氏が主張するような契約は存在しないことも明らかになっています。実際、マスク氏は訴状の中で「設立契約」(OpenAI設立時にマスク氏ら創設メンバーが同社と結んだ契約)について言及しました。一方で、訴状には設立契約が証拠として提出されておらず、マスク氏は設立契約が基本的に創設メンバーがメールの中で感じ取った「雰囲気」のようなものであることを認めています。そのため、メディアからは「マスク氏の主張を裏付けるような法的根拠はない」と指摘されていました。

なお、OpenAI側もマスク氏が主張するような設立契約について「同意はない」と言及していました。

この訴訟において、カリフォルニア州裁判所の担当裁判官は被告側であるOpenAIの訴訟棄却要求を審査する予定だったのですが、この1日前になってマスク氏は訴訟を取り下げました。

この判断は、AppleがApple Intelligenceを発表した直後にマスク氏が「AppleがOSレベルでOpenAIを統合した場合、私の会社ではAppleデバイスの使用が禁止されます。これは許容できないセキュリティ違反です」と投稿した翌日に下されたものです。