2024年5月に、異星人の巨大構造物「ダイソン球」の候補となる天体を7つ発見したとの論文が発表されました。これを検証した新しい研究により、ダイソン球候補の正体は「ちりに覆われた高温の銀河(Hot, dust-obscured galaxy:Hot DOG)」、いわゆるホットドッグの可能性が示されました。

[2405.14921] Background Contamination of the Project Hephaistos Dyson Spheres Candidates

https://arxiv.org/abs/2405.14921

Are dusty quasars masquerading as Dyson sphere candidates? - Physics World

https://physicsworld.com/a/are-dusty-quasars-masquerading-as-dyson-sphere-candidates/

7 potential 'alien megastructures' spotted in our galaxy are not what they seem | Live Science

https://www.livescience.com/space/extraterrestrial-life/7-potential-alien-megastructures-spotted-in-our-galaxy-are-not-what-they-seem

ダイソン球とは、物理学者のフリーマン・ダイソンが1960年に提唱した仮説上の人工構造物で、恒星を構造物で覆ってそのエネルギーを直接利用するというもの。しかし、いかに高度な技術力を持つ異星人でも、恒星が放つ膨大なエネルギーを100%使い切ることは難しいため、ダイソン球は外部に大量の廃熱を放出すると考えられています。

地球外文明が建造したダイソン球を探す地球外知的生命体探査(SETI)計画「プロジェクト・ヘパイストス」は、ダイソン球から発生する過剰赤外線を手がかりにさまざまな宇宙観測プロジェクトのデータを分析した結果、天の川銀河にダイソン球の候補が7つあることがわかったと発表しました。

銀河系にはエイリアンの巨大構造物が星を包み込む「ダイソン球」の候補が7つあるとの研究結果 - GIGAZINE



その後、別の研究チームがプロジェクト・ヘパイストスの研究結果を検証した論文をプレプリントサーバー・arXivで発表しました。

研究チームが発表した新しい研究では、7つの候補のうち3つが「ちりに覆われた高温の銀河(Hot DOG/ホットドッグ)」の可能性があることがわかりました。

ホットドッグは巨大で分厚いちりの雲に覆われており、中心にあるクエーサーに加熱された周囲の物質は非常に多くの赤外線を放射します。

研究チームは、プロジェクト・ヘパイストスが発表したダイソン球候補の位置を全天サーベイの複数の観測データと比較したところ、その位置に微妙なずれがあったことから、少なくとも3つのダイソン球候補は背後のホットドッグと見間違った可能性があると指摘しました。

また、残りのダイソン球候補に関しては、データがホットドッグで汚染されているか判然としませんでしたが、研究チームは他の4つも同様であると主張しています。



しかし、研究チームはダイソン球候補が本物である可能性も否定しておらず、共著者のひとりであるマンチェスター大学ジョドレルバンク天体物理学センターのマイケル・ギャレット氏は「どちらの解釈が正しいか、電磁波スペクトル全体にわたる新たな観測で追求する価値があると思います」と話しました。

ダイソン球の候補を発表した最初の研究チームも、追加の調査を行う価値があるという点に同意しており、プロジェクト・ヘパイストスのメンバーであるウプサラ大学のマティアス・スアゾ氏は「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のデータは、星を覆う高温のデブリや背景の銀河でデータが汚染されているかを確認するのにうってつけです」と述べて、記事作成時点で最新鋭の宇宙望遠鏡による今後の観測に期待を寄せました。