希少なネロデイトナのフェラーリエンツォ、気になる落札予想価格は?
2002年の発表直後、フェラーリのフィオラノサーキットでエンツォをテストした『Car』誌のマーク・ウォルトンはこう熱弁した。
「移動中の時間も格別だ。マラネッロから3マイル離れた農家が畑から顔を上げているのが想像できるほど、大音量で鮮明だ。F1カーのような悲鳴ではなく、グループCカーのように吠え、咆哮するんだ……」
「エンツォは激しく前方に突進し、脳を損傷しそうになるかと思った。大きく筋肉質なパンチが、胃をもたれさせ、血の巡りで頭がくらくらしてくる。驚いたのはその圧倒的なパワーだけではない。ステアリングは信じられないほど軽く、それでいて鋭く、フィーリングに満ちている。ターンインすると、意思を感じ、完全にコントロールできる…」
フランスの有名なフェラーリ・インポーター、シャルル・ポッツィを経由して、トゥールーズ市で2004年9月に最初のオーナーに納車された。このネロ・デイトナで仕上げられたエンツォは、わずか12台しかなく、そのうち赤いインテリアだったのは3台のみだと考えられている。この珍しいカラーリングによって、エンツォの美しいラインがよりいっそう際立っている。
オーナーは情熱的な "跳ね馬 "愛好家であり、エンツォを完璧な状態に維持するために多大な労力を費やした。そのため、エンツォのノーズの一部には保護フィルムが貼られ、車にはプロテクト処理が施されていたようだ。その後、オーナーはトゥールーズからブリュッセルに移り住み、エンツォはベルギーの首都でほぼ全生涯を過ごし、エンスージアストであるオーナーのプライベート・コレクションの「クラウン・ジュエル(王冠の宝石)」として誇り高く飾られていた。
大事にしていたこともあり、エンツォの使用頻度は低かったようだ。サービスブックには、ブリュッセルのフェラーリ・フランコルシャンが、2009年3月24日に7,097km、直近では2021年3月26日に9,489kmのスタンプを2回押しており、また、2017年3月17日にブリュッセルのフェラーリ・フランコルシャンが8,821kmで実施したサービスおよび作業の請求書(総額10,081ユーロ)も保管されている。同時に、フェラーリ・フランコルシャンによって右リアウィングが再塗装され、駐車場から後退する際についた傷が補修されている。
ボナムズが車を検査したところ、バッテリーが上がっていた。新しいバッテリーをつなぐと、オドメーターの数値はわずか9,491キロで、事実上、最後の整備以来、この車は運転されていなかったことがわかった。(定期的にフェラーリ・ディーラーに運ばれ、同じようにブリュッセル中心部まで持ち帰られていたのだ)。
サービスブックレットの他には、この車には以下が付属している:
・オリジナルの取扱説明書とポーチ
・工具セット
・旧フランス仮登録書類(2004年9月〜10月)
・旧フランス登録書類
・ベルギー現行登録書類
・2018年9月21日まで有効なベルギーの旧技術登録証適合証明書(CoC)
・ルカ・ディ・モンテゼーモロ氏からの直筆の手紙
・亡きオーナーがどこにでも持ち歩いていたバッグとは別に、亡き夫とこのフェラーリ・エンツォへの愛を偲んで彼の妻が保管している荷物
エンツォは登場以来、価値は上昇を続け、その勢いはとどまるところを知らない。エンツォは、現代フェラーリのコレクターズアイテムの頂点に君臨しており、この個体は、ほとんど使用されておらず、しかもワンオーナー。なにより超希少なネロ・デイトナで仕上げられていることで、このエンツォの存在感はさらに増し、400台のエンツォの中でも極めてエクセプショナルな個体であると言える。落札想定額は5億5000万円〜7億1000万円とかなり高額だが、それだけの価値があることは言うまでもない。