【田村修一の視点】2023年12月9日 第103回天皇杯決勝 川崎フロンターレvs柏レイソル
天皇杯決勝 川崎F 0 (8PK7) 0 柏
14:03キックオフ 国立競技場 入場者数62,837人
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川崎Fが柏をPK戦の末下し、2020年以来2度目の天皇杯優勝を成し遂げた。
試合は柏が自らのプレースタイルを貫き通したのに対し、川崎はその対応に終始迫られる展開となった。とりわけ前半は柏が圧倒的にボールを支配し、シュート数は11対1。この間に柏が先制していたら、その後の展開も大きく変わっていただろう。
後半以降は試合が拮抗した。柏の縦の攻撃に川崎が対処できるようになり、終盤には川崎が柏ゴールを脅かした。とはいえ柏の運動量も劇的には落ちず、拮抗を保ったまま120分間が終了し、試合はPK戦に。GKチョンソンリョンの活躍で川崎が栄誉を獲得したが、川崎にとっては手放しでは喜べない勝利であった。
鬼木就任7年目の川崎は、前任者風間八宏が構築したパスを繋ぐスタイルから完全に脱却し、怪我人が続出し苦しい戦いが続いた今季は、マルシーニョの左サイドからの攻撃に特化したスタイルで何とか帳尻を合わせてきた。だが、鬼木体制が来季も続くかどうかも含め、Jリーグのトップクラブであり続けるための中・長期的な展望・戦略が求められているのは間違いない。
他方、柏は、今季途中で就任した井原監督のもと、J1残留を果たし天皇杯でも決勝に進出した。ベースとなるチーム構築に従事しながらの、降格回避という目の前の目的の達成。それが成し遂げられた今季を踏まえ、来季は監督自身の哲学と責任に基づく結果が求められる。
両監督の来季に注目したい。
田村修一(たむら・しゅういち)
1958年千葉県千葉市生まれ。早稲田大学院経済学研究科博士課程中退。1995年からフランス・フットボール誌通信員、2007年から同誌バロンドール選考(投票)委員。現在は中国・体育週報アジア最優秀選手賞投票委員も務める。