近年、世界中で普及するデジタル決済。この市場は2027年までに毎年12.31%のペースで成長すると言われています。アフリカでは、Interswitch(インタースイッチ)がデジタル決済サービスを牽引する存在の一つですが、このフィンテック企業は同大陸の自由貿易を推進するうえで重要な役割を担っています。

デジタル決済が自由貿易の障壁を低くする

 

2002年にナイジェリアで創業したインタースイッチは、デジタル決済のプラットフォームを構築し、アフリカを中心にさまざまなサービスを提供しています。例えば、同社はアフリカだけでなく欧米諸国の一部でも使用できるクレジットカードの「Verve」を発行しており、このカードに対応したATM数は1万1000台に上るそう。現在では、オンライン決済プラットフォームの「Quickteller」、モバイルビジネス管理プラットフォームの「Retailpay」、フィンテックカードの発行のほか、ナイジェリア初となる国内銀行間の取引サービスや州政府向けの電子決済インフラも展開しています。

 

2019年には、大手決済企業のVISAがインタースイッチの株式の一部を買収したことからも、アフリカで最も勢いのある企業の一つであることが伺えるでしょう。もともとナイジェリアでは現金主義の人が大半だったそうですが、同社はそんな国でキャッシュレス化を推進してきたと言える存在です。

 

アフリカ版EUの命運を左右

インタースイッチが重要視しているのが、アフリカ55か国間での自由貿易。先日、シエラレオネ共和国で開催され、インタースイッチも参加したセッションでは、この自由貿易がテーマとなり、同国を含めたアフリカ諸国におけるデジタル決済の問題やトレンドが議論されました。

 

アフリカには「アフリカ大陸自由貿易圏(AfCFTA)」協定があります。「アフリカ版EU」と呼ばれているように、貿易のルールをアフリカ国内で共通化して、関税を撤廃し、貿易を活発化させていくもので、2021年1月から運用が開始されています。

 

AfCFTAの成功の鍵となるのが、諸外国との取引をよりシームレスにするデジタル決済でしょう。その反面、デジタル決済サービスにはサイバー関連の脅威が伴いますが、その点、インタースイッチは州政府にも利用されるなど、セキュリティ面でも定評があることから、アフリカ各国の地方銀行などにも導入される可能性があると見られています。創業以来、インタースイッチはアフリカで「決済がシームレスで目に見えない物として日常生活の一部になること」を目指しており、そのビジョンの実現に向けて現在も邁進しているのです。

 

世界銀行のデイビッド・マルパス総裁が「デジタル革命は、金融サービスへのアクセスと利用を拡大し、決済、ローン、貯蓄の方法を一変させた」と述べているように、デジタル決済は人々の暮らしに大きな変化をもたらしました。同行のGlobal Findex Databaseによると、デジタル決済における途上国のシェアは2014年は35%でしたが、2021年には57%に拡大。アフリカ諸国の自由貿易を支える立役者としてインタースイッチには今後も注目が集まりそうですが、途上国におけるデジタル決済の普及が進めば、日本企業にとってもビジネスがしやすくなるでしょう。

 

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