若者と中高年ではネットの使い方が違う。成蹊大学客員教授の高橋暁子さんは「若者はグーグル、中高年はヤフーを使う傾向がある。中高年はヤフーでネットデビューしており、そのままになっているようだ」という――。
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■オトナ世代が使うのはヤフーとLINE

大学の授業でZ世代である20歳前後の学生たちと、保護者である40、50代のオトナ世代のネット・SNS・端末の利用状況を比較するレポートを出した。すると、「n=1」(個人に集中した分析方法)にもかかわらず、Z世代とオトナ世代の違いがはっきりと現れる結果となった。

学生の多くはグーグル派で、SNSはLINEはもちろん、InstagramやTwitter、TikTokやDiscord、Zenlyなども使いこなしている。一方のオトナ世代は、「検索サービスはヤフー、SNSはLINEのみ」という方が多かったのだ。

ずっとガラケーだったが、3G停波で仕方なく最近スマホデビューしたというある保護者は、「安いから」という理由でAndroidにしたという。それに対してある学生は、「自分なら絶対にiPhoneがいいのに、スマホにこだわりがないんだとびっくりした」と驚きを隠さない。

「InstagramとかTikTokとか、おすすめのSNSアプリをいろいろ入れて使い方を教えてあげたのに、ほとんど使っていなかった。スマホ自体をあまり使わないから、使いやすさとかは気にならないのかも」

■「スマホのカスタマイズ」を知らない

別の学生の保護者もやはり同様だ。Yahoo!ショッピングを利用するのもあるが、ヤフー中心に利用しており、使っているアプリの数も利用時間もとても少なかった。学生が一番驚いたのは、保護者がアプリをインストールしっぱなしでただホーム画面に並べていた点だ。

「スマホはいつも使うものだから、ホーム画面から使わないアプリを削除したり、使いやすい位置に移動させたり、自分らしくカスタマイズするのは当たり前と思っていた。なのに、インストールしたままただアプリを並べていて、動かし方もカスタマイズの仕方も知らなかった」

■年代が高くなるほどヤフーユーザーが増加

検索方法のジェネレーションギャップについて、同様の結果が出ている調査がある。

GO TO MARKETの「Web検索サービスに関するアンケート調査」(2022年12月)によると、全年代における検索でもっとも使うサービスはグーグル、ヤフー、YouTube、Instagram、TikTokの順番になった。

10代、20代ではグーグルが最多、次いでYouTubeという結果に。グーグルは全年代で利用割合が高く、ほぼ4割前後となっている。

一方ヤフーは、10代は13%だが50代は40%と、年齢が高くなるほど利用割合が高くなっている。40代、50代では、他の年代と違い、ヤフーとグーグルの「2強」が拮抗(きっこう)している状態だ。

ヤフーが年齢の高いオトナ世代によく利用されているのは、「Yahoo! JAPAN媒体資料」(2022年3月)でも明らかだ。月間アクティブユーザーは約8400万人で、ユーザーで最も多いのが50〜64歳の26%、次いで40代と65歳以上が20%と、40代以上が全体の66%を占めている。

出典=ヤフー株式会社「Yahoo!JAPAN媒体資料(2022年3月改訂版)」P16

■「ヤフーでネットデビュー」のまま

では、なぜこのようなことが起きるのだろうか。

一般的にサービスの利用状況の違いは、スマホに触れられる時間の長さ(有職者・学生・主婦等)、連絡する相手(固定・不特定)、利用する目的(エンタメ・SNS・コミュニケーション・健康管理・就活・勉強・仕事・情報収集など)、利用端末(スマホ・パソコン・タブレット)などに影響を受ける。

それだけでなく、初めに使ったサービスにも大きな影響を受ける。50代のある女性は、検索サービスといえばヤフーしか使わない。

「ヤフーに慣れている。ニュースも見られるし、ショッピングもできる。グーグルはシンプル過ぎて何をしたらいいのかわからない」

女性のネットデビューは、若い頃にパソコンでヤフーからだった。Yahoo! JAPANは1996年に「ディレクトリ検索」と「キーワード検索」の提供を開始した。グーグルが日本語による検索サービスを開始したのは、それから4年後の2000年だ。

ヤフーから利用し始めても、ある程度ネットに親しむ人たちはグーグルに移行していった。一方、慣れたものから変えようとしない人たちがヤフーに残ったのではないかと推測できる。

SNSはLINEのみというのも、必要最低限の連絡でのみ利用しているためだろう。新しいSNSや新しいサービスを積極的に試すオトナ世代はそれほど多くないが、若者たちは次々に新しいサービスを試していくという違いがある。

■ネットで検索する若者は増えているが…

このように解説していると、ヤフーを使うオトナ世代よりグーグルを使う若者のほうが「上級者」のように思われるかもしれないが、実はそうとは限らない。

博報堂生活総合研究所の分析結果によると、20代のブラウザ検索回数は2016年よりも2020年のほうが増えており、SNSなどを利用しているときに疑問に思ったことや気になった情報を検索サービスで調べることが多いという。

写真=iStock.com/TARIK KIZILKAYA
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しかし残念ながら、検索能力はあまり高くない。若者は検索する機会は多くても、求める情報や信頼できる回答など、自分の欲しい情報にたどり着けないのだ。

■SNS世代だからこそ検索スキルが培われない

適切な検索をするためには、検索手法、たどり着くためのキーワードの選定(語彙(ごい)力、組み合わせ、検索結果が得られやすいキーワードなど)、情報抽出力、論理的思考力、検索結果の評価、出典元の信頼性の確認などが求められる。

そもそもネット媒体と紙媒体のどちらがいいのかを選んだり、各検索サービスの特徴を理解したりすることも必要だ。

日本でSNSが誕生したのは2004年(mixiのサービス開始)であり、既に18年経つ。10〜20代の若者世代はSNSネイティブであり、SNSで育った世代だからこそ、検索するスキルが培われていないように思える。

■大学のレポートの情報源にまとめブログ

最近のSNSのアルゴリズムは、利用者が必要としていそうな情報を、自ら調べるまでもなく「おすすめ」表示してくれる。ハッシュタグ検索では複雑な検索はできず、そもそも検索性が悪いものが多い。また、若者は主にスマホで検索するため、複数の情報を比較検討することも難しい。

子どもが調べ学習をしていて、ネット上で適切な情報にたどり着けないで困っていたことがある。代わりに調べたところ、あっさりと子ども向けに用意された詳しいサイトが見つかって、逆に拍子抜けしてしまった。このようなことは、大学生でも珍しくない。

学生のレポートでは、調べた情報源としてまとめブログなどのリンクを堂々と貼っていることがある。そこから深めたり広げたりしていけば、新聞社などのもっと詳しく信頼性が高い記事が見つかるテーマであるにもかかわらず、適切な情報にたどり着けていないというわけだ。

■若者もオトナ世代も「一長一短」

ネットに親しんでいるオトナ世代はどうだろうか。仕事などで検索サービスでの検索を使う機会・経験が若者世代よりも圧倒的に多い。語彙力も豊富で、パソコンで複数の情報を比較検討し、出典元の信頼性の確認などもできる。

しかし、これをもって若者よりオトナ世代のほうが「上級者」という結論に至るのもまた乱暴だろう。つまりは一長一短なのだ。

若者は最新トレンドをSNSで検索することに慣れており、長けている。情報によって調べるSNSを使い分けるなどして、最適な情報を見つけ出す。一方、オトナ世代は検索サービスで古い情報を検索することに慣れており、長けているといえる。

どのサービスから使い始めたか、どのサービスに慣れ親しんでいるかなどによって、ネットの利用状況やスキルは変わってくる。重要なのは、自分たちや他の世代の得意分野と苦手分野を理解したうえで、信頼できる情報にたどり着くためのスキルを磨き、ネットを最大限活用することではないだろうか。

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高橋 暁子(たかはし・あきこ)
成蹊大学客員教授
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、講演などを手掛ける。SNSや情報リテラシー、ICT教育などに詳しい。著書に『ソーシャルメディア中毒』『できるゼロからはじめるLINE超入門』ほか多数。「あさイチ」「クローズアップ現代+」などテレビ出演多数。元小学校教員。
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(成蹊大学客員教授 高橋 暁子)