【▲ 銀河団Abell 370(上)による重力レンズ効果を受けて超新星の像が3つに分裂した様子(下)を示した図(Credit: NASA, ESA, A. Pagan (STScI))】


ミネソタ大学のWenlei Chenさんを筆頭とする研究チームは、今から110億年以上前に初期宇宙で発生した超新星爆発の異なる3つの瞬間が「ハッブル」宇宙望遠鏡によって同時に捉えられていたとする研究成果を発表しました。


この超新星は「くじら座」の方向約40億光年先にある銀河団「Abell(エイベル)370」の画像に写り込んでいたもので、ハッブル宇宙望遠鏡のデータから超新星などのトランジェント天体(突発天体)を探していたChenさんたちによって発見されました。Abell 370よりも遠くにある銀河で発生した超新星の像は、Abell 370による重力レンズ効果(※)を受けて3つに分裂しています。


※…手前にある天体(レンズ天体)の質量によって時空間が歪むことで、その向こう側にある天体(光源)から発せられた光の進行方向が変化し、地球からは像が歪んだり拡大して見えたりする現象のこと。


ある天体のさまざまな瞬間を同時に観測することは通常では不可能ですが、3つの像を結んだ超新星の光は距離が異なる経路をそれぞれ通過してきたため、ハッブル宇宙望遠鏡は変化する超新星の異なる段階(0日目・2日目・8日目)を同時に捉えることになりました。重力レンズ効果がもたらした偶然の賜物と言えます。超新星の色は青から赤へと急速に変化しており、発生から時間が経つにつれて温度が下がっていく様子を示しているといいます。


【▲ Abell 370(左)とハッブル宇宙望遠鏡の観測結果を示した図。A:2011年から2016年までの画像を合成したもの。B:2010年12月に取得された超新星の3つの像を含む画像。C:画像Aと画像Bの差分で示された超新星の3つの瞬間。D:複数のフィルターで同様の処理を行い超新星の色を取得したもの(Credit: NASA, ESA, STScI, Wenlei Chen (UMN), Patrick Kelly (UMN), Hubble Frontier Fields)】


また、研究チームは超新星の明るさと温度低下をもとに、超新星を起こしたのは直径が太陽の約500倍の赤色超巨星だったと推定しています。死につつある恒星のサイズを測定できたのは、初期宇宙では今回が初めてのこととされています。


研究チームは「ジェイムズ・ウェッブ」宇宙望遠鏡を使って、さらに古い時代の超新星の観測を計画しているとのことです。


【▲「Abell 370」の全体画像(Credit: NASA, ESA, Jennifer Lotz and the HFF Team (STScI))】


 


 


関連:星の最期を伝える16万光年先の超新星残骸、ハッブルとチャンドラが観測


Source


NASA - Hubble Captures 3 Faces of Evolving Supernova in Early UniverseESA/Hubble - Hubble Captures Three Faces of Evolving Supernova in Early UniverseSTScI - Hubble Captures 3 Faces of Evolving Supernova in Early Universe

文/sorae編集部