弔砲は国際的な慣例に倣い19発が撃たれた(写真・JMPA)

 9月27日、日本武道館(東京都千代田区)で、安倍晋三元首相の国葬が執りおこなわれた。

 会場の最寄り駅である東京メトロ九段下駅前の交差点では、国葬に反対するデモ隊が行進。それに対抗する形で現れた、国葬に賛成する団体との接触を警官隊が注意するなど、張り詰めた空気が漂っていた。

 国葬の是非について、メガホンを使用しての街宣や怒号のようなものが飛び交う中、開式の午後2時が近づいていく。すると、動画の生配信をおこないながら歩き回るYouTuberや、やじ馬で来たかのような見物人も混じり、現場はカオス状態に。さらに、一般献花の列は約2km先のJR四ツ谷駅まで伸び、人ごみをさらに加速させる状態となっていた。

 そして、国葬が開始した午後2時。突如「パァーン!」という、大きな破裂音が数回にわたって響き、集まっていた人々は思わずビクッと静止。そして、心配そうに上空を見回した。

「爆発?」

「銃声じゃないよね……」

 口々に心配そうな声を漏らす人たち。その音の正体は、安倍元首相に弔意を伝えるための自衛隊による空砲、つまり「弔砲」だったのだ。

「冷静になれば弔砲だ、とわかるのですが、すぐ近くにいたうえに、音の大きさがとてつもなくて、驚いてしまいました。音だけでなく、空気の振動も激しく、ビリビリと感じました。

 それにしても、人の集まった場所でこういう音を耳にすると、テレビで何度も見た、安倍元首相の銃撃の映像をどうしても思い出してしまいます。怖がっている子供の参列者も多かったです。トラウマにならなければいいのですが……」(居合わせた参列者)

「弔砲」を聞くこと自体、ほとんどの人が初体験だったはずだ。安倍元首相の事件以降、破裂音から市民が受ける気持ちは、大きく変わってしまったようだ。