東大生はどのように英語を学んでいるのでしょうか(左写真:梅谷秀司、右写真:reoworks/PIXTA)

「英語が苦手」「英語力がなかなか上がらない」と悩む人は少なくないと思いますが、その原因は勉強方法にあるかもしれません。現役東大生で『東大大全 すべての受験生が東大を目指せる勉強テクニック』を監修した西岡壱誠さんが、「東大生の英語勉強法」について解説します。

「類義語」と「対義語」も覚える

東大生は、英語を勉強するときにどんな工夫をしているのだろう?」

と、みなさんも疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。東大の英語の問題は英語を母国語にしているネイティブスピーカーであっても解くのが難しいと言われています。そんな問題を攻略できるような英語力を、東大生はいったいどうやって手に入れているのだろうか、と。

東大生たちの勉強法を研究している僕たちは、英語の勉強法に関してさまざまな調査をしてみました。その中で見えてきたのは、ただ勉強するのではなく、「とあるもの」をセットにして覚えていくという勉強法でした。

今回はこの「東大生の英語勉強法」についてお話ししたいと思います。

まずは結論から言ってしまうと、東大生は「類義語」と「対義語」を覚えていく勉強法を実践しています。類義語とは同じ意味の単語のことで、対義語とは反対の意味の単語のことを指します。

例えばですが、「好き」という英単語は「like」です。ですが、それ以外にもいろいろな「好き」という意味の英単語がありますよね。

「be fond of」「prefer」で好む、「favorite」でお気に入り、「cherish」で大事にする……いろんな「好き」があるんですよね。これが、「類義語」というものです。

それに対して、反対の意味の「嫌い」という意味の英単語もたくさんあります。「dislike」とか「hate」とか「disgusting」とか。これが「対義語」というものです。

多くの場合、こういうことは英単語帳にきちんと書いてあります。likeの説明の下に「類義語はbe fond of」「対義語はdislike」と書いてくれています。ですが、それでも多くの人は面倒くさがってこれを覚えないで、「like=好き!」とだけ暗記することが多いです。

実は、ここをしっかりと暗記するのが東大生なのです。そしてこれを覚えないと、単語を勉強する意味が半減してしまうのです!

ただ丸暗記をしても意味がないワケ

多くの人が勘違いしていることですが、そもそも英単語の勉強をするのは「英単語を覚えるため」だけではありません。

テストで「likeの意味を答えなさい!」なんて問題は出ませんし、日常会話でも外国人に「likeの意味は?」なんて聞かれませんよね。likeが「好き」だとただ丸暗記することにはあまり意味がないのです。

英単語を覚える意味は、英語長文をスムーズに読んだり、英会話を円滑に行ったりできるようになるためです。

そしてその中で、今回この記事でみなさんにはこれだけでも覚えてほしいのですが、英語って「同じ表現を繰り返すことを嫌う」という特徴があるのです。

みなさんも中学生のときに「I」「my」「me」「mine」と、さまざまな代名詞を覚えたと思います。「全部だいたい『私』という意味なのに、なんでこんなにたくさん覚えなきゃならないんだ?」と僕はずっと疑問に思っていたのですが、実はこれは英語の「同じ表現を繰り返さない」という特徴が根本にあるのです。

例えば「子どもが好きなゲーム」の話をしているとき、「子どもはこのゲームがlikeである」と語った後、ネイティブは同じ「like」という英単語を使うことを避ける傾向があります。「Like」と同じ意味で違う表現の、「be fond of」「prefer」「favorite」などを使います。同じ話題であっても、手を替え品を替え、表現をどんどん換えて表現するのです。

そのほかにも「Tom」という人の話をするときに、次の行でトムのことを「He=彼」と表現し、その次の行では「The boy=あの男の子」と表現し、その次では「The tall man=あの背の高い人」と表現して……というふうに表現を替えていくことが多いです。同じ人の話をするときにも「トム」という表現を換えていくのです。

「パラフレーズ」が苦手な人が多い

こういうのを「パラフレーズ」と言うのですが、英語が苦手な人はこのパラフレーズが苦手なことが多いです。英文の最初で「like」が出てきたら、なんとなく続きの文章でも「like」を探してしまい、「like」がないから「話題が変わったんだな」と思ってしまうものです。

同じように「Tom」と「The boy」を同一人物だと考えられず、違う人の話だと解釈してしまう間違いはとても多いんですよね。

みなさんも英語の文章を読んでいるときや話を聞いているときに、「なんか話題が途中から追えなくなっちゃった!」という経験がありませんか。それはこれが原因なのです。

こういうことがないようにするために、英語を勉強するときには「パラフレーズ」に注意しないといけないのです。

話が読めてきたと思うのですが、要するにこの「パラフレーズ」に対応するために必要な勉強法というのが「類義語を覚えていく英語勉強法」なのです。「like」を何回パラフレーズされても「同じ話題だな」と追えるようになるための訓練が、類義語を覚えていく勉強法なのです。

ただ英単語を丸暗記する勉強をしていても英語はできるようにはなりません。その際に類義語を覚えて、「表現がかわっても理解できるように英単語を覚えていく」ことによって、その後の英語のスキルの身に付き方が全然違ってくるのです。

また、これは受験英語の対策のニュアンスが大きいのですが、対義語の勉強というのもとても重要です。なぜなら、受験の裏技として、「対義語を覚えておくと解ける問題」が多いからです。

出題者は対義語を使って問題を作る

例えば「この文章について、4つの選択肢から正しいものを選びなさい」系の問題というのは英語の問題では超頻出です。どこの大学でも出題されていると言っても過言ではないでしょう。

そんな中で、「子どもは自由な選択の幅があるゲームを好む傾向がある」と長文に書いてあったとして、ストレートにそのままの表現で選択肢に「このゲームが好き」と書いてしまうと、「なんだ、これが答えじゃん」とみんなわかってしまいますよね。

こうした場合、出題者はどういうふうに問題を作るかというと、対義語を使うのです。よくあるのは「子どもは自由な選択の幅が【ある】ゲームを【好む】傾向がある」という英語の長文の内容を理解しているか聞くために、「子どもは自由な選択の幅が【ない】ゲームを【嫌う】傾向がある」、と言い換える選択肢です。

日本語でよく読めば、同じことを言っていることがわかりますね。しかし、英語になって対義語が使われていると、なんとなく「これは間違っているのではないか」と感じてしまいます。「hate」とか「detest」とかの、「like」の反対の言葉を使っている選択肢を作ることで、「like」の意味だけ覚えていても解けないような問題を出すのです。

これはちゃんと勉強しないと解けない問題なので、問題を解く受験生側にとっては嫌な問題ですが、問題を出す出題者側としては「実力を測れるいい問題」として機能します。だから、文章中の単語の対義語を使った文は選択肢になりやすいのです。こうした問題に対応するためにも、対義語の勉強は必須ということです。

ということで、もし英語力を向上させたいとか、英語のスキルを身につけたいと思っている人は、「類義語と対義語のみをまとめていく勉強法」をしていくといいと思います。

●好き
like、love、favorite(=お気に入りの)、be interested in(=興味を持つ)、 prefer(=好む)

●嫌い
dislike、hate、suck(=最悪)、 disgusting(=嫌い)

のように、同じ意味でいろんな訳し方のある言葉をノートにまとめていくのがおすすめです。

そしてその勉強をしていると、ちょっとした言葉のニュアンスをつかむことができます。例えば「話す」という言葉の英語を検索すると、いろんな英単語が出てきます。まずは「speak」が出てくるのですが、実はこれは一方的に話すことを指します。演説とか講演なんですよね。

しかし同じ「話す」でも、「talk」という英単語もあります。これは「speak」とは違って、相手からの反応もある「話す」であり、話をする相手との「おしゃべり」を指します。だから「Aさんとtalkしたよ」と言っていたら、「ああ、この人はAさんと一方的ではなくて、相手ときちんとしっかりおしゃべりをしたんだな」とわかるのです。

このように、同じ言葉の使い分けを理解していくと、状況がよりよく理解できて勉強がうまくいく場合が多いんですよね。

自分より賢い人のやり方をまねる

いかがでしょうか。


ただの英単語の勉強でも、実はやり方1つで英語のスキルが大きく変わってきてしまいます。まずはこういう賢い人のやり方をまねてみるのが一番いいと思います。自己流とか「自分ならでは」の勉強とかは、その後からでも実践できます。

「まなぶ=学ぶ」という言葉は、「まねぶ」という言葉が語源であるという説があります。学びというのは、まねすることから始まる、ということも往々にしてよくあるのです。

東大生だってこのやり方をどうして知っているのかといえば、多くの場合は先輩や先生などの自分より賢い人から学んでいます。まねできたから、賢くなれたのです。

だからみなさんもまずはぜひ、頭のいい人のやり方をまねしてみてもらえればと思います!

(西岡 壱誠 : 現役東大生・ドラゴン桜2編集担当)