消え入りそうな「自己肯定感」を自分で高める方法
自己肯定感が低い人は「自分はなにをしてもうまくいかない」「どうせ私なんて……」というように自信を持てず、ものごとをネガティブに考えてしまいがちです(写真:wavebreakmedia/PIXTA)
今、メンタルケアについて語るうえで、注目されている「自己肯定感」というトピックワードを見聞きしたことはありますか。「自己肯定」というと、やみくもにポジティブで、独善的なイメージを抱くかもしれませんが、いつもポジティブでいる心理状態が、かならずしも「自己肯定感が高い」というわけではありません。
「私は私のままで生きることができる」「自分の悪いところもすべて受け入れられる」、そう思える感覚を、「自己肯定感」と言います。本稿では自己肯定感の基礎をご紹介しましょう。自己肯定感が高まるとなぜいいのかを中心に解説していきます。
心理カウンセラーである中島輝氏の最新刊『人生が変わる! 自己肯定感を高める心のセルフケア大全』を一部抜粋、再構成してお届けします。
日々の習慣づけで安定したメンタルを手に入れる
突然ですが、あなたは今、自分をどれくらい大切にしていますか?
「なんだかモヤモヤした不安を感じている」
「毎日朝起きるのがつらくて、気分が上がらない」
「人と話したあと、なぜか心がとても疲れる」
深刻な状態ではないものの、なんだか気が落ち着かず、「いつもの自分と違うな」と変化を感じている場合、それはあなた自身が心のなかで助けを求めているサインかもしれません。
こうした心の変化の原因として考えられるのは、「自己肯定感」の変化です。自己肯定感とは、ありのままの自分を受け入れられる感覚のこと。
つまり、生きるための心のエネルギーそのものです。
自己肯定感が低いと、思考も行動も消極的になり、あらゆることをネガティブにとらえがちです。自分のストレスや、心と体の状態にも向き合うことができず、自己肯定感の低下を放置することで、辛い日々からなかなか抜け出すことができなくなります。現代のストレス社会をうまく生き抜くには、自己肯定感を高めストレスや負の感情を自分でコントロールしていく力が必要なのです。
本稿では、自己肯定感を高めていくセルフケアのメソッドを紹介します。大切なのは、日々しっかりとケアをして、習慣化していくこと。そうすれば、どんな困難も乗り越えられる安定したメンタルを手に入れることができ、毎日が幸せにあふれた日々に変わっていくでしょう。
自己肯定感はなぜ大切なのか?
自己肯定感とは、ありのままの自分を肯定的に受け入れている感覚です。
自己肯定感が高ければ「自分は自分のままでいい」と肯定することができるため、欠点があったとしても、自分を否定せずに受け入れることができます。たとえ自分が優れた能力を持っていなくても、他人よりも劣っていても、「自分には価値がある」と思うことができるのです。
一方、自己肯定感が低い人は「自分はなにをしてもうまくいかない」「どうせ私なんて……」というように自信を持てず、ものごとをネガティブに考えてしまいがちです。自己評価が低く自信もないため、自分の存在価値が見いだせないのです。
自己肯定感の高低は、「生きやすい」か「生きづらいか」に直結していきます。感情や考え方、判断力などにも大きく左右するため、自己肯定感を高める必要があるのです。
自己肯定感が低い人の多くは、過去に辛い体験をしていたり、愛情を得られない家庭環境で育ったりしています。例えば、幼少期に親から褒められることが少なかった子どもは、自分を認めてくれる存在がいなかったため、大人になってからも「自分には価値がない」という認識になりがちです。
また、兄妹や他人と比較され続け、つねに劣等感を抱いて育った子どもは「自分はダメな人間だ」と考えるようになり、自己肯定感が低いまま育ちます。過去の挫折や失敗がトラウマとなり、自信をなくしてしまうケースもよくあります。
こうした人たちは、他人の目をいつも気にしてしまい、心が疲れています。誰かからダメ出しをされると、自分を否定して嫌悪感でいっぱいになります。精神的にも不安定になり、日々の悪い出来事は自分のせいであると考えてしまうのです。
一方で、自己肯定感が高い人は、他人の目を気にせず、他人からの評価にも振り回されることがありません。ダメ出しされても 自分の改善点ととらえ、成長へのチャンスへと変えていきます。
また、悪い出来事が起きても、それを乗り越えられる強い精神力を持っているため人生を楽しむこともできます。自己肯定感が高いほど、人生が豊かになり楽しくなるのです。
自己肯定感はセルフケアで高められる
たとえ自己肯定感が低い大人になったとしても、自己肯定感は今からでも高めることができます。
そのためには、自分自信を大切にする思考や習慣、経験を積み重ねていくことが欠かせません。
今までに得られなかった「自分は大丈夫」「自分はみんなから大事にされている」という実感を得続けることで、自己肯定感を少しずつ高めることができるのです。
そのことは脳の仕組みからも説明することができ、「網様態賦活系(RAS)」という、脳内で情報処理をする際に重要な役割をする機能があるのですが、日々自己肯定感のケアを続けることで、自己肯定感を高める要素に鋭敏になっていきます。
すると脳は「自分にとっていいこと」を探すようになり、考え方や感情が変わって、判断力がよくなり、自分を大切にする選択が増えていくのです。
ただ、自己肯定感はいきなり高くはなりませんから、少しずつの取り組みがポイントになります。小さなことから始めていくことで、ものごとの考え方や意識の持ち方が変化していきます。
そして、徐々に自己肯定感が高まり、楽しい人生を手に入れることができるでしょう。
誰にでも調子が悪いときや、心が疲れてしまうときがあります。なぜなら、人間は感情にとらわれながら生きているからです。そして、自己肯定感が低い人は、消極的なマインドから抜け出すことができません。
そのようなときは、今の自分の自己肯定感がどうなっているのか意識してみましょう。「なぜ、自分がこう感じているのか」と考えて、「上司に怒られたから、自己肯定感が下がってモチベーションが上がらない」「寝不足で自己肯定感が下がっているからイライラする」というように、今の状態を自己肯定感を通じて見ていくのです。
このように客観視することを、心理学では「自己認知」と呼びます。自己認知をすることで、「今は自己肯定感が低いからうまくいかないのだな」と心の切り替えができるようになります。
「スルータイム」を意識し辛さを乗り越える
うまくいかないことが続くと、「このままずっとこの状態から抜け出せないかも」などと、思考がどんどんネガティブな方向に進んでいってしまいます。
しかし、人類の歴史も人生も、ずっと同じ状況が続くということはありえません。たとえ今がよくなくても、未来もそうであるとは限らず、まだ訪れていない未来をネガティブな思い込みで閉ざしてしまう必要はありません。
今、苦しい状況にあるとしたら、「今はトンネルのなかにいるけれど、このトンネルにも出口がある」と思いましょう。このような、時の流れと今の自分を切り離して考えることを「スルータイム」と言います。
現在と未来を別々にとらえることで、理想の未来に向かって前向きになることができます。「今がどん底。後は浮上するだけ」と思うことが大切です。
人生に失敗はつきものです。それを後々まで引きずってしまうと、自己肯定感はなかなか上がっていきません。「また失敗するんじゃないか」などと思うと、行動にブレーキがかかり、新たな一歩を踏み出すことができなくなってしまいます。
そんな状態ではあなたの自己肯定感はダダ下がり。 過去の失敗が頭から離れず、消え入りたくなってしまうこともあるでしょう。
そんなときの解決方法は、そのまま放置することです。いくら考えても悩んでも、 過去を変えることはできません。「やってしまったことは仕方がない」と自分自身を納得させ、ほったらかしにして昇華されるのを待てばいいのです。なぜなら、私たちの脳は自分で納得したことであれば、いずれ忘れていくようにできているからです。
安心して放置してください。
(中島 輝 : 心理カウンセラー)