安いトマトほどおいしい? 野永喜三夫さんの「赤の他人丼」【さよなら、夏バテ!「豚バラ万歳」#4】
老舗料理店の3代目が考案!日本一簡単な豚バラ料理
8月ももう終わりに近づいているというのに、まだまだ暑いが続いていますね。少しずつ疲労がたまって、食欲がわかない……という方もいるのでは?そういうときには、体や胃腸にやさしい食事、和食がぴったりです。
旬の野菜をはじめとする素材の味を最大限に引き出す和食は、味付けも控えめで、油をほとんど使いません。でも、本格的な和食となると、だしの取り方や素材の扱い方など、いろいろな“決まり”があるため、ついつい敬遠しがちですよね。
トマトの酸味が爽やか!赤の他人丼
調理時間:10分
「豚肉と卵の他人丼に、赤いトマトを加えるから“赤の他人丼”です。トマトは、酸味を生かしたいので、甘味の強いブランド品ではなく、普通に売られている安いもので十分ですよ。
このレシピでは常温の割り下に肉を入れてから、中火でじっくり火を通していきます。タンパク質は62℃ぐらいから凝固しはじめるので、低温でだましだまし火を入れることでやわらかく仕上がるし、味が染み込みやすいんです。僕は煮魚のときも常温の煮汁に魚を入れて煮ていきます。これには驚かれる方も多いですね。
そうそう、豚バラ肉をうなぎの蒲焼や鶏肉に変えても、最高においしいですよ!鶏肉の場合は火が通りにくいので2cm角にして、うなぎの蒲焼は食べやすい大きさにしてください」
材料(2人分)
・豚バラ肉(薄切り)……300g
・ミニトマト……8~10個
・卵……4個
・ごはん……適量
・めんつゆ(3倍濃縮)……80cc
・水……80cc
・ごま油……大さじ1杯
・三つ葉……適量
下ごしらえ
・三つ葉を3cm幅に切っておく
作り方
1. フライパンにめんつゆと水を入れる
めんつゆと水をフライパンに入れます。めんつゆと水の量は1:1です。
「めんつゆはご家庭にあるものを使ってください。2倍濃縮でも3倍濃縮でも、1:1で計量してOKです。肉を煮た時点で味をみて調整すればいいので、この辺はアバウトで大丈夫です!」
2.ミニトマトのヘタをとり、半分に切る
ミニトマトのヘタをとり、2等分します。
「ヘタとお尻部分を指で押さえて、横半分にカットすると断面がきれいです。最近は甘味の強いトマトが人気ですが、今回は酸味のあるミニトマトを使ってください」
3. 豚バラ肉を切る
まな板の上に豚バラ肉をそろえて並べ、3cm幅にカットします。
「火を入れるとちょうどミニトマトの大きさぐらいになるように豚バラ肉は3cm幅にカットします。食材の仕上がりのサイズをそろえるのは、食べる人のことを考えて。大きさがそろっていると食べやすいんです。さりげない心配りです」
4. 割り下に豚バラ肉を入れ、中火で煮る
常温の割り下に豚バラ肉を加え、箸で割り下と肉をなじませてから、中火にかけます。
「肉からしみ出てくる肉汁で割り下が濁ってきますが、ご心配なく。これは豚肉の“旨味”です。豚バラ肉のタンパク質が凝固して、旨味がじんわり染み出してきているんです。
この旨味とだしがくっついて“味変”し、おいしい丼つゆになります。ハンバーグのように肉汁を閉じ込める場合は強火ですが、肉をやわらかく仕上げるには中火でゆっくり煮ていきます」
5. 卵を混ぜる
豚バラ肉に火を通している間に、卵を割って、軽く混ぜます。
「卵は卵黄が割れていれば大丈夫です。適当でOKですよ!」
6. ミニトマトを鍋に加える
豚バラ肉に火が通ったら、ミニトマトを入れて軽く混ぜます。野永さんは割り下に肉を入れて3分30秒ほどで、ミニトマトを加えていました。
「水分が多く見えますが、卵液と混ざっていい塩梅になりますよ。今回は3倍濃縮のめんつゆを使ったので煮詰めませんが、2倍濃縮のめんつゆを使う場合は、トマトを加える前にしばらく煮詰めてくださいね」
7. 卵液を3回に分けて加える
トマトが温まったら、3回に分けて卵液を鍋に注ぎます。鍋の中心部分から「の」の字ではじめて、卵液で3重丸を描き、鍋端から中央に向かって卵を寄せるように箸を入れます。
鍋端から等間隔に5~6回箸を入れてフライパンを一周しましょう。これを2回繰り返し、3回目に卵液を入れたあとは、すぐに火を止め、余熱で火を通します。
「箸を繰り返し入れるうちに、割り下と卵液がなじんで、おいしい卵になっていきますよ。グチャグチャっと混ぜるのではなく、端から中央へを繰り返してくださいね。火加減は中火のままです」
8. 仕上げのごま油を加える
ごま油を円を描くように注ぎます。丼によそったごはんの上に、形よく盛り付け、三つ葉を飾ればできあがりです!
「ごま油を加えることで、さらに旨味が加わり、香りが食欲を刺激します。トマトの赤、三つ葉の緑を彩りよく飾ってください」
豚のコク、トマトの酸味、ふわとろ卵の三重奏
噛むほどに甘味を感じる豚バラ肉、旨味を閉じ込めたふわとろの卵、そして口の中にぷちっと広がるミニトマトのほどよい酸味。いろいろな味わいが一度に楽しめる他人丼です。
めんつゆを使うので味付けに失敗する心配がありませんし、薄切りの豚バラを使うから火も通りやすいので、あっという間にできあがります。こんなに簡単においしいひと皿ができるなんて……!
「この丼は、箸ではなくれんげですくって食べてほしいです!それぞれの味が口の中で混ざって、おいしさがよりアップしますよ。市販のめんつゆはメーカーによって特徴があるので、味を見ながら濃さを加減して、自分好みのレシピを完成させてください」と野永さん。
家庭の冷蔵庫に常備されていそうな材料だけでパパッと作れる、10分丼。残り少ない夏休み中のランチにも大活躍しくれそうですよね。
さて、野永喜三夫さんの「匠のおうちレシピ」も今回で最終回。野永さんがこの連載を通じて教えてくださった、食材は口に入りやすいサイズに切りそろえることや、肉に火を入れるときの火加減などのコツを、ほかの料理を作るときにもぜひ生かしてもらえたらうれしいです。
9月の「匠のおうちレシピ」は超有名パティシエが登場します!楽しみにお待ちください。
取材協力
店舗名:日本料理 日本橋ゆかり
電話番号:03-3271-3436
最寄駅:地下鉄メトロ銀座線 日本橋駅 徒歩3分JR 東京駅 徒歩9分
郵便番号:103-0027
住所:東京都中央区日本橋3丁目2-14
市区町村:中央区
町域:日本橋3丁目2-14
営業時間:11:30~14:0017:00~22:00
定休日:なし