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結婚式場を営むブライダル会社が、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に式を挙げなかった新郎新婦を相手取り、解約料として約209万円の損害賠償をもとめて東京地裁に提訴した。

訴えられた新郎新婦側は、コロナ禍が、天災などのときに契約が消滅する「不可抗力」にあたるとして支払いを拒む。さらには、支払い済みの申込金20万円の返還をもとめて反訴する意向だ。

感染拡大によって、全国の式場も、新郎新婦も、開催か変更かで悩み続けた。コロナ理由の結婚式キャンセルは「不可抗力」なのだろうか。

●緊急事態宣言で挙式予定見直し

原告のブライダル会社(本社=東京都)は23区内などで、複数の式場を運営している。6月24日に東京地裁で第1回口頭弁論があった。

訴状によれば、会社は新郎新婦(関東在住)との間で、2020年6月6日予定の結婚式について、同年2月6日に合意をかわした。しかし、東京を含む地域を対象とする緊急事態宣言が出された4月7日になると、コロナの影響による延期・中止の相談を受けたという。

会社は3つの選択肢を示した。(1)予定通りの開催、(2)延期費用支払いのうえで延期、(3)解約料支払いのうえで解約。

延期の場合、2020年9月末までなら、見積金額の全額を延期費用として支払う。この費用は、延期日程の挙式・披露宴にあてられるため、追加負担はない。

中止の場合は、規約に基づく「解約料」(のちに示されたのは約57万円)がかかる。

しかし、新郎新婦は、コロナの影響で式が挙げられないことは規約記載の「不可抗力」にあたるため、解約料の支払いは必要ないと主張した。

会社は、判断をもとめて何度かやりとりしたが、6月6日に新郎新婦が会場に現れなかったことから(補足:実際に結婚式の準備がなされていたかは不明)、「当日キャンセル」とみなし、見積金の全額にあたる解約料209万310円(支払い済みの「申込金」をのぞく)を請求することにした。

●式場側「一律の無償対応では経営破綻に追い込まれる」

当時、コロナ理由の無期限の延期や中止のもとめに、一律に無償で対応してしまえば、経営破綻に追い込まれてしまうため、このような対応は「やむを得ないもの」だったとする。

また、法務省の見解などをもとに、コロナの影響による結婚式キャンセルの場合は、不可抗力にはあたらないと主張している。

●新郎新婦側「コロナ前に思い描いていた式は挙げられない」

新郎新婦の代理人をつとめる金田万作弁護士は「式場からもとめられた(予定期日での)開催・延期・(解約料を支払っての)中止の条件にはいずれも納得できず、不可抗力によって契約は消滅した。また、新郎新婦は事前に式場側に確定的なキャンセルの連絡をしている」とコメントして、解約料支払いの必要はないとする。

コロナの感染拡大とともに緊急事態宣言が発出され、当初の合意時に想定していたような結婚式の開催は社会通念上不可能のため、自己都合の解約にはならないとの主張だ。

●ブライダル業界、コロナ経済損失の試算は1兆円

日本ブライダル文化振興協会が加盟の式場などに実施したアンケートでは、2020年度のブライダル業界の経済損失は約9500億円(前年度比約32%)にのぼり、現在では回復基調にあるものの、それでもコロナ流行後の損失は合計で約1兆円と考えられるという(6月16日発表)。

一方、トラブルも目立った。令和3年版消費者白書によれば、2020年度のコロナに関する消費生活相談のうち、「結婚式」は3992件で、4月に件数がピーク(1368件)に達した。キャンセル料請求や延期に関するものが多かったという。

編集部は原告代理人弁護士を通じて会社にコメントをもとめたが、期日までの返答はなかった。

編注:7月14日17時53分 「(実際に結婚式の準備がなされていたかは不明)」の文言を補足しました。 編注:7月14日19時35分 キャンセルの連絡に関して被告側のコメントを追記しました。