井桁良樹シェフの「花椒香る牛肉のしゃぶしゃぶ」【暑さ吹き飛ぶ!シビ辛レシピ #1】

中華の巨匠が教える、シビ辛な家庭料理

夏本番ももうすぐそこ! 食欲が落ちがちなこれからの時期は、スパイスの利いたひと皿でなんとか乗り越えたいものです。

世界にはじつにさまざまなスパイスがありますが、中国特有の香辛料も忘れてはいけません。そこで、テレビでもすっかりおなじみの「中國菜 老四川 飄香 (ピャオシャン)」の井桁良樹シェフに、香辛料が主役の家庭料理を教わります。中国香辛料を知り尽くす巨匠は、どんなレシピを教えてくれるのでしょうか。

井桁シェフの夏のおすすめスパイスは、唐辛子、花椒、陳皮、クミンの4種。そのなかから今回は、“痺れ”と表現される刺激の強い、花椒を使った料理を紹介します。

花椒は四川料理には欠かせない中国産の山椒で、鼻にスッと抜ける強い香りと痺れるような辛味が特徴です。パウダータイプが手軽に使えますが、井桁シェフが用いたのはホールタイプの花椒。じっくり油で熱し、痺れと香りをさらに引き出し、濃厚スープ、牛肉、野菜と合わせていきます。

強烈な痺れが爽快!花椒香る牛肉のしゃぶしゃぶ

調理時間:30分

「これは、四川省で数年前からはやっている“痺れ”と旨味を楽しむ新しい料理です。本場では薄切りの牛タンを使って、スープがうめつくされるぐらい大量の花椒を入れます。

『飄香』でもお客様にお出ししていて、とても好評をいただいているんですよ。今回は家庭でも気軽に味わっていただけるように、扱う香辛料の数と調理過程を減らしました。

痺れを感じたときの“お口直し”代わりになる野菜は、夏を意識してツルムラサキやミニトマトを選びました。花椒はクセのある素材ととても相性がいいので、独特な香りのツルムラサキが合うんじゃないかと思います。

でもじつは、野菜は何を使ってもOK。お好みの野菜や冷蔵庫にあるものを使っていただいて構いません。お店ではれんこんやじゃがいもを使っています」

材料(2人分)

・牛肉(しゃぶしゃぶ用)……200g
・ツルムラサキ……80g
・トマト……8個
・紫玉ねぎ……60g
a. チキンスープ……800cc(粉末のもので可)
a. 玉ねぎ……20g
a. 長ねぎ……40g
a. セロリ(葉の部分)……40g
a. ミント……5g
a. にんにく……2片
a. しょうが……1片
a. 花椒……20粒
a. 赤唐辛子……2本
b. ナンプラー……大さじ1杯
b. 塩……小さじ1杯
・サラダ油……大さじ3杯
・花椒……適量
・ミント……適量

下準備

・スープの出汁となる、長ねぎ(青い部分)、にんにく、しょうがは香りが出やすいように、包丁の腹でバンと叩く
・玉ねぎは1cm幅に切り、セロリの葉はそのまま使う

作り方

1. 鍋に(a)を入れ、20分ほど煮込む

チキンスープ、香味野菜、調味料を鍋に入れ、火をつけます。スープが沸騰するまで強火で、そのあとは弱火で20分ほど煮込んでいきます。

「家庭ではチキンスープは市販の粉末のもので十分です。20分煮込んでいくと、野菜はクタクタになって、800ccのスープが500ccぐらいに濃縮されます」

2. 野菜を切る

紫玉ねぎは2mm幅に薄切りします。ツルムラサキは、葉と茎の部分に分けます。太い茎の部分は、葉の部分とゆで上がりの時間が同じになるように、5mm幅の斜め切りにします。ミニトマトのヘタも取り除きます。

3. スープをこし、(b)を加える

20分ほど煮込んだスープをざるでこします。クタクタになった野菜はお玉でしっかり押して、最後の一滴までうまみや香りをしぼり出します。500ccより少なくなった場合は、チキンスープを足して500ccにします。(b)を加え、温めておきます。

4. ツルムラサキとミニトマトを熱湯でゆでる

熱湯に塩大さじ1杯、サラダ油大さじ1杯(共に分量外)を入れ、まずはツルムラサキをしっかりゆでます。ツルムラサキをゆでたあとに、ミニトマトを軽くさっとゆでます。油を少量加えてゆでるとゆで汁の温度が上がり、野菜のつやがよくなります。

「ツルムラサキはえぐみがある野菜なので、黒っぽく変色しないようにしっかり目にゆでましょう。ちょっとゆで過ぎかな?と思うくらいまで火を通して大丈夫です。

トマトを使う場合は、大きいトマトではなくミニトマトのほうがいいですね。果肉がスープに溶け込むと味が変わってしまうので、切らずに使えるミニトマトがおすすめです」

5. 4を深めの器に盛る

ゆであがったツルムラサキを皿の底に敷き、ミニトマトを均等に置きます。

「スープを注ぐので、深めのお皿に盛り付けてください。どんぶり状だと底に敷いた野菜が見えなくなるので、すり鉢状の器がいいと思います」

6. 牛肉を熱湯でゆでる

野菜をゆでた鍋で、牛肉をゆでます。牛肉の表面が白く変わったらすぐに引き上げます。湯をしっかりきり、ツルムラサキの上に盛り付けます。

「今回は牛肉を使いましたが、もちろん豚肉でもいいですよ」

7. スープをかけ、紫玉ねぎをのせる

沸騰させた3のスープを5に注ぎ入れます。続いて薄切りにした紫玉ねぎを牛肉の上に盛り付けます。

8. 鍋にサラダ油と花椒を入れて熱し、回しかける

鍋にサラダ油と花椒を入れて弱火で熱します。花椒の色が赤黒く変わったら火を止めて、紫玉ねぎの上から回しかけます。仕上げにミントを飾ったら完成です。

「油で熱することで花椒の香りがさらに高まりますよ。花椒の食感が気になる場合は、取り除いて油だけをかけてください」

痺れる辛さ、そのあとやってくる清涼感

グリーン、赤、紫、白と彩りが美しい逸品が完成しました。花椒の香りや痺れるほどの刺激、セロリやミントの風味を感じるスープ、それをたっぷりとまとった牛肉や野菜、いろいろな要素がひとつのお皿につまっています。 花椒はたしかに痺れるほど辛いですが、それに負けないだけの旨味がありますよ。

「このレシピでは花椒の痺れるような辛味をお肉や野菜、スープと一緒に楽しんでいただきたいです。花椒を“しょっぱい”と感じられる方もいますが、じつはそうではなくて、塩味を感じやすくする効果があるんです。つまり花椒を使うことで塩分を控えられるといった健康効果もあるんですよ」と井桁シェフ。

とてもヘルシーで爽やかに食べられるので、夏にぴったりなレシピだと思います。調理法もじつにシンプル!暑くて長時間はキッチンに立ちたくないこの時期には、特にうれしいですね。一度食べたら忘れられない、クセになる味をぜひお試しあれ!

次回は、爽やかな香りが特徴の陳皮を使ったレシピをご紹介します。

取材協力

店舗名:中國菜 老四川 飄香(ピャオシャン)麻布十番本店
電話番号:050-3134-5664
最寄駅:都営大江戸線 麻布十番駅 7出口 徒歩4分地下鉄メトロ南北線 麻布十番駅 5a出口徒歩 6分
郵便番号:106-0045
住所:東京都港区麻布十番1-3-8 Fプラザ B1F
市区町村:港区
町域:麻布十番1-3-8 Fプラザ B1F
営業時間:ランチ 11:30 ~ 15:00 (L.O. 14:00)ディナー 18:00 ~ 23:00 (L.O. 21:30)
定休日:月曜日、第1・3火曜日