原辰徳監督

写真拡大

 シリーズ大敗のダメージを払拭するカギは、ニューヨークにありそうだ。巨人はNPB史上初となる2年連続4連敗の屈辱を喫した。原辰徳監督は帰京の途に就いた11月26日、過密日程を戦い抜いた選手たちの体調管理も心配していた。他に言いたいことがあったはず。あえて、そこに触れなかったのではないだろうか。

 原監督が記者団とも議論したかったのは、指名打者制(以下=DH)のこと。「セ・リーグにもDH制を」と同制度の導入を訴えてきたのに、攻撃力アップとはならなかったからだ。しかし、そのDH制を知る手掛かりは、“元同僚”が持っていた。ゴジラこと、松井秀喜氏だ。

 >>大補強浮上の巨人に「短絡的すぎる」と反発「ソフトバンクみたいに…」育成への注力を切望する声も<<

 「松井氏が“世界”の頂点を極めた時は、DHでした。DHを経験したのはヤンキース移籍後です」(球界関係者)

 奇しくも、原監督がシリーズ決戦の地を離れた同日、松井氏はビジネスマン向けの講習会に出演し、経営者とのオンライン対談を繰り広げていた。

 「やはり、巨人のことは気になっていたみたいです。古巣のナインたちの悔しさを代弁し、失敗も後の経験値となると伝えていました」(スポーツ紙記者)

 松井氏のDH出場。2009年ワールドシリーズでMVPに選ばれた第6戦、彼は「5番・DH」で出場した。シリーズ記録となる1試合6打点の大活躍を収めたのは有名だが、シーズン中は主に左翼の守備に就くことの方が多かった。同シリーズで松井氏がDHで出場したのは第6戦だけだ。

 不慣れなDHをこなすコツを、松井氏は知っている。

 「セ・リーグのレギュラー選手たちは守備に就くことで試合の流れというか、リズムを掴むようです。DHは守備に就く時間をベンチで過ごすので、集中力が持続できないそうです」(前出・同)

 メジャーリーグでは「専任」としてDHを使うほか、いつもは守備に就くレギュラー選手を休ませる目的で使うこともある。いわば「半休」という形式で松井氏もDHを経験したわけだが、メジャーリーグのDHはベンチで休んでいるだけではない。

 「ベンチ裏の映像ルームに行き、自身が打席に立った時の映像を確かめています。変化球を放られた場合、打席での印象を映像で確かめ、次打席に活かそうとしています」(米国人ライター)

 今年の日本シリーズでDHを務めた亀井、ウィーラーは、主にベンチ裏の素振りエリアでバットを振っていた。「次打席に活かすための工夫」は同じだが、こんな声も聞かれた。「目の準備」だ。

 「球場の照明設備は明るいLEDに変わっており、ベンチ内やその裏の素振りエリアに長くいると、グラウンドに出た瞬間、『眩しい』という印象を受けます」(前出・球界関係者)

 ワールドシリーズ第6戦での松井氏はベンチ最前列に陣取っていた。味方投手に声を掛けるためもあったが、明るいグラウンドに目を合わせていたようだ。

 松井氏に近い関係者の話では、古巣を思う気持ちは強いという。しかし同時に、自身が表に出ることで余計な注目を浴び、現役選手に迷惑を掛けたくないとも思っているそうだ。巨人との距離ができてしまったのはそのせいだ。DHで頂点を極めた松井氏に連絡を取れば、惜しみなくその極意を教えてくれるはず。屈辱的大敗からのスタートとなる来年2月、松井氏の「臨時コーチ」をもう一度検討しても良いのでは…。(スポーツライター・飯山満)