中古車の走行距離は短ければ短いほど望ましく、逆に多走行な中古車はちょっと不安――と多くの人は思っているはず。実際、中古車の走行距離は短めであるに越したことはないのですが、「しかし、一概には言えない!」というのが中古車ジャーナリスト・伊達軍曹さんの考えです。詳しく教えてもらいました。

中古車を見極めるうえで、走行距離はどの程度重視すべきなのか


○お手入れ次第で状態は大きく変わる

中古車を買う際、誰もが注目するポイントのひとつが「年式と走行距離の関係」だろう。仮に同車種・同年式である2台の中古車があったとして、物件Aの走行距離が5万キロで、もう一方の物件Bが8万キロであった場合、買うべきはどちらなのか?

「そりゃもう、言うまでもなく5万キロのほうでしょ!」

多くの人はそう言うであろうし、筆者も、個人的に買うならたぶん5万キロのほうを選ぶと思う。

だがそのとき、「でも、中古車のコンディションって走行距離だけで判断できるものではないんですよ!」ということも、誰にとはなく叫んでいるはずだ。

そう。中古車のコンディションは、基本的には走行距離の多寡と相関関係および因果関係があるものの、それはあくまで「基本的には」であって「絶対」ではない。中には「5万キロ車より断然グッドコンディションな8万キロ車」というのもしばしばあるものだ。

5万キロ車より状態の良好な8万キロ車も結構ある? 中古車と走行距離の関係とは


ならば、中古車にとって「走行距離」とは、どんな意味を持つ指標なのだろうか?

そこについて、筆者はこのように考えている。「走行距離って、人間のお肌のようなものですよ」と。

お肌のコンディション。そこには「若いほうがピチピチつやつやである」という基本構造はあるものの、実際は人ぞれぞれだ。多くの若人のお肌はさすがにピチピチつやつやだが、中にはそうでもない若人もいる。

また逆に、筆者を含む中年のお肌には加齢による小じわやくすみなどが発生しているが、その深度みたいなものは人それぞれである。そして中年の一部には「……29歳か30歳ぐらいですか?」みたいなお肌の人も希にもいる。

これすべて、「日頃の行い」が生んだ差である。

「加齢とともにシワシワになっていく」という宇宙の法則から逃れることは誰にもできない。だがそれでも、「睡眠と栄養をしっかり取る」「洗顔と保湿をきっちり行う」「なるべく紫外線を浴びないようにする」などを徹底してきた中年のお肌は、その真逆の生活習慣を持つ若人の肌よりツヤツヤだったりもする――ということだ。

○走行距離はあくまで「判断材料のひとつ」

そしてこれは中古車にも、ほぼそのまま当てはめることができる。

「稼働時間に応じて機械は劣化していく」という宇宙の法則から逃れることは、どんなクルマにもできない。だがそれでも、「日頃から丁寧に扱う」「点検と整備をきっちり行う」「(内装類が)なるべく紫外線を浴びないようにする」等々が徹底されてきた走行8万キロ車のコンディションは、その真逆のノリで維持されてきた走行5万キロ車より素晴らしい――みたいなことにもなるのだ。

まぁそれでも「お肌もクルマも、より若いほうがコンディションは良い(場合が多い)」というのは事実であるため、「まずは走行距離が短めの中古車に注目する」という姿勢は間違いではない。だが、距離の多寡という指標だけで中古車を選んでしまうと、前述の理由により大ハズししてしまうケースもある。

そのため、結論として「正しい中古車選び」は下記ニュアンスでもって行われるべきだろう。

1. 走行距離の多寡はある程度重視する。

2. 具体的には「年間0.8万〜1万キロ×新車時からの年数」をいちおう平均的な走行距離と考え、それを基準に多寡を判断する。

3. とはいえ上記「1」「2」はあくまで参考情報のひとつと考え、「これまでのケア内容の良し悪し」こそを重視する。

であるならば上記「3」、つまり「これまでのケア内容の良し悪し」は、どこをどう見れば判別できるのだろうか?

この点について、一部は前回の当欄で詳しく述べた。それすなわち「内装コンディションの良し悪し」である。「内装の状態こそが中古車の“履歴書”である」との考えに基づき、内装コンディションが極力よろしい中古車を買うよう心がければ、走行距離が多少延び気味の中古車であっても大ハズしすることはないはずだ。

そのうえで次回の当欄では、内装コンディションと同様に重要な「整備記録簿」と「伝票」の“正しい読み方”について考えてみたい。