短編『AWA TURN(仮)』の内藤佐和子氏のワンシーン

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 徳島市長選が5日に開票され、無所属新人の内藤佐和子氏が初当選した。「徳島活性化委員会」代表でもある内藤氏は、県外へ出た若者に徳島への帰郷をPRする短編『AWA TURN(仮)』(2019)に主演しており、同作の蔦哲一朗監督(徳島県三好市出身)は祝福の言葉を述べつつ「(選挙戦も)やはりカメラを回しておけば良かった」と語り、全国で史上最年少の女性市長誕生という歴史的瞬間を撮り逃したことを悔やんだ。

 徳島県では地方創生を目的とした映像制作を積極的に行っており、蔦監督にとっても『AWA TURN(仮)』は、徳島県林業推進短編『林こずえの業』(2016)に続く2本目のプロジェクト。同作は、帰郷をするか否か悩んでいる女性・サワコが久々に息子を連れて実家のある阿南市に戻り、地元に残った友人たちとの再会や伝統行事に触れることで触発され、地域活性のために消えかけている防波堤の壁画を復活させようと立ち上がる物語だ。

 内藤氏自身、徳島文理高校から東京大学への進学で上京し、ベンチャー企業の経営参画などを経て2010年に帰郷したUターン組。帰郷後は徳島活性化委員会を立ち上げるなど地域振興に力を注いできた。まさに『AWA TURN(仮)』の主演にピッタリの配役だが、実は当初予定の出演者がNGとなり、ピンチヒッターでの主演女優だったという。

 出演者は内藤氏の息子役・タイセイを実息の大世君が演じている他、父親役に文楽人形の人形遣いである勘緑、藍染プロデューサーの永原レキ、俳優・堀正幸と徳島出身者が集結。ドキュメンタリータッチで撮影され、劇中では内藤氏が同級生役の永原らと地元のために何ができるのか? を熱く語るシーンもあり、市長になるべくしてなった片鱗がうかがえる。

 蔦監督は「意外と恥ずかしがり屋な内藤さんですが、あの時の映画のセリフは内藤さん自身から出てきた本心ばかりですので、いつまでもその思いを胸に頑張ってください。初心を忘れそうになったら『スミス都へ行く』(1939)という映画がオススメです。むしろ、今の政治家全員に見せてやりたいです」と映画監督らしく、政界に進出した純粋な青年が、腐敗政治を糾弾するフランク・キャプラ監督の名作を例に出して新市長にエールを送った。(取材・文:中山治美)