コンパスのN極が指し示す「北」の位置が190年で2250kmも移動している
by Valentin Antonucci
一般的に「北」といえば、地球の自転軸の最北端に当たる北極点をイメージしますが、方位磁針(コンパス)のN極が指し示す「北」は北極点ではなく、地球の磁場(地磁気)によって決まる磁北です。このコンパスが指し示す「北」の位置は約190年で2250kmも動いており、アメリカ海洋大気庁(NOAA)は2019年12月10日、世界磁気モデル(WMM)を更新して磁北のズレを修正しました。
https://www.ncei.noaa.gov/news/world-magnetic-model-2020-released
Earth's Magnetic North Pole Keeps Moving Towards Siberia at a Mysteriously Fast Pace
https://www.sciencealert.com/earth-s-magnetic-north-pole-is-drifting-towards-siberia-at-a-mysteriously-rapid-pace
地球の磁場はおよそ40億年前から存在していたといわれており、主に地球の地殻やマントルの動きなどに影響されて変動するため、磁北の位置も落ち着くことなく常に動いています。1831年に正確な磁北の位置が発見されて以来、およそ190年間で2250kmも磁北が移動しているとNOAAは指摘しています。
NOAAは「一般的に磁北の動きは非常にゆっくりとしているため、科学者はその位置をかなり簡単に追跡することが可能です」と述べています。しかし、1990年以降の20年間で磁北の動きは急速に変化しているとのこと。過去20年間における磁北移動の平均速度は1年あたり55kmであり、北極点から見てシベリアの方向にふらふらと移動しているそうです。
最新のデータでは、磁北がシベリア方向へ進む速度は年間で40kmと、やや減速しているとのことですが、それでも過去数百年と比較すると速いといえます。英国地質調査所の研究者であるCiaran Beggan氏は、「1990年以降の磁北の動きは、過去4世紀の動きよりも非常に速いです」と指摘。しかし、磁北が移動する正確なメカニズムについては、依然として不明な部分もあるとのこと。
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磁北は常に移動していますが、研究者は地球の磁場を常に観測して世界磁気モデル(WMM)を構築しています。WMMはアメリカ航空宇宙局(NASA)や連邦航空局(FAA)、軍隊などで使用されるほか、GPSなどのナビゲーションシステムや地図サービス、コンパスアプリなどで使用されており、磁北のズレは特に北緯55度以上の地域で問題を引き起こしかねません。そこで研究者らは地球の磁場や磁北の位置を追跡し、WMMのアップデートを定期的に行っています。
2019年12月10日、WMMを管理するNOAAのNational Centers for Environmental Information(国立環境情報センター)および英国地質調査所が、WMMの最新バージョンをリリースしました。これによって記事作成時点ではWMMを使ったシステムがかなり正確な磁北の位置を検出することが可能となり、消費者はさまざまなアプリやサービスで正確な位置を知ることができるとのこと。
WMMは5年ごとにリリースされるスケジュールとなっており、今回のリリースは2025年まで使用される予定ですが、急激な磁場の変動があった場合には予定外の修正が入る場合もあります。たとえば2019年2月には、予想以上に磁北の移動が速かったために予定外のWMM修正が行われました。
北極圏の磁場が急激に移動して予定外の磁気モデル修正が行われる - GIGAZINE
by AlexAntropov86