これまで中国でのアウェー戦で勝利を掴めなかった浦和。今回の広州恒大戦で初めて中国でのACL初勝利を飾った。(C) Getty Images

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 浦和レッズは、10月23日のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)準決勝第2戦で、広州恒大(中国)に1-0で勝利。2戦合計3-0で、決勝への切符を手に入れた。浦和は、これがACLの歴史の中でも中国での初勝利になった。

 浦和は初戦のホームゲームを2-0で勝利し、優位な状況で中国へ遠征した。しかし、2013年と16年にグループステージで広州と対戦した際にはそれぞれ0-3、2-2と勝利できなかった。16年の引き分けも先に2点を奪われて、試合終了間際に興梠慎三のゴールでようやく勝点1を得たもの。北京国安や上海上港といった何度も対戦した中国クラブを相手にした試合でも、アウェーでは内容的にも厳しいなかでの引き分けや敗戦だった。通算して中国遠征は8戦未勝利。だから、決して楽観視できる状況にはなかった。

 その16年の試合を経験している選手たちや、柏レイソル時代に同じ準決勝で広州に敗れた鈴木大輔が話していたのは、とにかく「スタジアムの雰囲気が独特だ」ということだった。この日も約5万人の観衆がスタジアムを埋めたが、入場ゲートではチームのレプリカユニホームが無料配布された。応援の中心はゴール裏だったが、メインスタンドからバックスタンドまで手拍子に合わせ、さらには「大したチャンスでもないのに大きく沸いて、変な空気になる」と選手たちが警戒していた環境そのままだった。

 しかしながら、その空気に飲み込まれなかった要員のひとつを興梠は「経験だ」と話す。13年から今季までの7シーズンのうち、浦和は5回ACLに出ている。その中では必ず中国勢との対戦が組み込まれるため、こうした状況には慣れていた。西川周作が「ホテルや移動でも何があるか」と話したが、例えばホテルから試合会場への移動でも、不測の事態に備えるプランBが必ず用意されていた。今回はそれを必要とする場面はなかったが、選手の経験とクラブに蓄積されたノウハウは、この一戦に対して平常心で臨むことを可能にしたと言えるだろう。
 
 それに加えて、浦和の選手たちがちょっとした反骨心を得たことも、気後れせずに戦えた要因なのかもしれない。例えば興梠は試合後、「広州のカンナバーロ監督が(準々決勝で)鹿島に勝った後に、これで優勝できるというようなことを話していたという記事を見て、全員に火がついた」と話した。また、岩波拓也も「これだけ厳しいアウェーで、ACLで20試合以上(21試合)ホームで負けていない相手を絶対倒してやろうと思っていた」と話す。西川は中国で未勝利というクラブの成績を「歴史を作るチャンス」と前向きにとらえた。

 槙野智章はチームについて「追い込まれると強いところがあるのが浦和だから」と話したことがある。そうしたリバウンド・メンタリティーとでも呼ぶべきものが、このアウェーでの厳しさを跳ね返す力になった面はあるのだろう。

 カンナバーロ監督は試合後に「浦和レッズのいいところは、集中力の強いところ」と話した。サッカーは試合が始まれば予測のつかないことも多い。もし、広州に先制を許せばもっと厳しい展開になっただろう。実際に、そうなってしまいそうなピンチもあった。しかし、間違いなく言えるのはこの日の浦和が中国遠征の不利を跳ね返すに十分な準備を積み重ねてきたこと。最終的に5万人を静寂に陥れた浦和は、確かに勝利を掴むに値した。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部