便秘の人は、便秘でない人よりも会社を欠勤する率が高く、その経済的損失は年間約122万円にも上る(写真はイメージです)

写真拡大

 便秘は女性に多いと言われ、肌荒れや吹き出物、食欲不振を引き起こして、生活の質(QOL)が低下する。これが続くと、悩みのタネになることは言うまでもないが……。

 ***

慢性便秘症とは、自然な排便が週に3回未満、あるいは、4回に1回を超す頻度で排便が困難な状態が何カ月も続いた状態をいう。

ところが、この便秘が経済的損失をもたらすという、驚くべきデータがある。便秘の人は、便秘でない人よりも会社を欠勤する率が高く、その経済的損失は年間約122万円にも上るというのだ。

 そんな数字を弾き出したのは、兵庫医科大学の研究チームだ。民間調査会社による日本人約3万人分の健康情報(2017年)をもとに、慢性便秘症と診断された患者(963人)と便秘ではない人(同)の働き方を比較。労働生産性と生活の質(QOL)を調査した。

便秘の人は、便秘でない人よりも会社を欠勤する率が高く、その経済的損失は年間約122万円にも上る(写真はイメージです)

 その結果、慢性便秘症の患者は、1週間の欠勤率が8・8%。便秘ではない人(3・8%)の2・3倍になったのである。さらに、注意深く仕事ができないなど、健康上の問題が生産性に影響を及ぼした割合は、便秘の人が33・2%、便秘でない人(19・1%)の1・7倍となった。

 この数値をもとに、日本人の平均賃金から経済的損失を推計したところ、便秘の人は年間約122万円、便秘でない人は約69万円。1・8倍の差が出たのだ。研究チームは、5月にあった米国消化器病学会でこの推計を発表した。

便秘は生存率が低い

「便秘のデメリットは、お腹の不快感や排便時のつらさなど、直接的なものだけではありません。慢性便秘になると、色々病気を誘発します。便秘の人はトイレでいきむ場合が多いので、それで高血圧になり、最悪、脳卒中に至るケースもあります。身体がハッピーではないので、沢山の仕事をこなすことができなくなり、QOLも落ちてくるわけです」

 と解説するのは、兵庫医科大学の三輪洋人主任教授。

三輪教授によると、便秘の人はそうでない人より生存率が落ちる、という調査データもある。2010年、米メイヨー医科大学が約4000人に対してアンケート調査を行った。

「便秘だけでなく、下痢、お腹が痛いなどの症状を質問する調査で、15年間の追跡調査を行ったところ、便秘と答えた人の生存率が低いことがわかりました。便秘ではない人の生存率は約77%ですが、便秘の人は約60%。実に15%以上も差が出たのです」

 13年に発表された厚生労働省の「国民生活基礎調査の概況」によると、便秘で悩む人は人口1000人あたりで、全体で37・8人。男性だけだと26人、女性は48・7人という結果がでている。13年当時の人口「1億2528万5000人」から計算すると、約470万人が便秘で悩んでいることになる。

「便秘は、検査の仕方によって数値が違ってきます。うちで、便秘がちと思う人、頭痛、腰痛、吐き気、高血圧などをインターネットで5000人を対象にアンケート調査をしたところ、便秘がちと答えた人が28%もいました。4人に1人が便秘ということになります」

 ところが、自分は便秘と思っている人で、これが病気だと認識しているのは半数もいないというのだ。

「便秘の人は、ほとんどが自分で適当に対処しているのが現状です。食事を考えたり、運動をしたり、水分を取ったり、自分で工夫しています。市販薬を使っている人は7・9%、病院に通っている人は4・7%だけです」

糖尿病患者の6割が便秘

 便秘になる主な原因は、大腸が収縮、弛緩するぜん動運動の低下があげられる。高齢者に便秘が多いのは、年とともに神経の数が減ってくるからだという。さらに、病気が便秘を引き起こすこともあるという。

「糖尿病患者の6割は便秘になると言われています。糖尿病は、末梢神経に障害が出て、視神経が侵されて目が見えなくなります。同様に、腸管神経に障害が出て、ぜん動運動が遅くなるのです。あと、まだ原因は解明されていませんが、腎臓病やパーキンソン病、認知症になると、便秘になりやすくなります」

 では、便秘を防ぐにはどうしたらよいのか。

「食事、運動、水分、これが便秘を防ぐ3大要素となります。食事では、繊維質のある食材が有効と言われていますが、同じ繊維質でも、ゴボウやトウモロコシなどの不溶性繊維質と、こんにゃくに多いグルコマンナン、りんごや柑橘類に多いペクチン、海藻に多いアルギン酸などの水溶性繊維質があります。不溶性繊維質は、便を硬くする作用があり、便秘が重くなる場合があります。水溶性繊維質は、便秘にはポジティブな面しかありませんので、こちらを摂ることをオススメします」

便秘は、腸内フローラも関連があるという。

「腸内環境が整っていないと便秘や下痢の原因になります。腸内環境を整えるビフィズス菌や乳酸菌を摂取するいわゆるプロバイオティクスによって、腸内細菌を変化させることは、便秘に有効であるとの研究もあります」

週刊新潮WEB取材班

2019年8月18日 掲載