朝と夜の通勤ラッシュで混雑する都会の駅。押し込まれるように電車に乗り、ギュウギュウ詰めの電車から降りた後も、人の流れにのって改札までいかなければならない。

そんな中をちょっとでもスムーズに移動できるよう、JR大阪駅ではある取り組みを試行している。ポイントはホームに貼られた「ライン」だ。


かわいい(画像はJR西日本近畿統括本部提供)

シカ、飛行機、ミカン...。カラフルなラインにはそれぞれシルエットが入っているが、これは単にかわいさを重視したわけではない。

緑ラインのシカは大和路快速(奈良方面)、青ラインの飛行機は関空快速(関空方面)、オレンジラインのミカンは紀州路快速(和歌山方面)に「並ぶ列」を示している。それぞれを象徴するシルエットがラインにあることで、ホーム先端の表示が見えなくても並ぶことができる。

ツイッターでは「気がついたら地面がこうなってた」「おもしろい!!」との声があがっている。Jタウンネット編集部は2019年7月5日、JR西日本近畿統括本部に、この取り組みの背景を聞いた。

違う行き先の人と同じ列に...


思わず足元を見てしまう(熊沢楓@kmzwkedさん提供)

JR西日本近畿統括本部の広報担当者によれば、このラインは現在、JR大阪駅のみで試行している。19年3月から2両分ほどで実施、6月からは環状線の内回り・外回りで実施している。

実施のきっかけになったのは車両の入れ替えだ。6月7日までは4扉車両の201系と3扉車両の323系が走っていたが、8日からはすべて3扉車両の323系に入れ替えた。担当者はホームのラインについて、

「これまでは4扉と3扉があったため、ごちゃごちゃするからできませんでした」

と話している。要するに、車両の扉の位置が統一されたことで、こうした案内ラインを設置できるようになったというワケだ。

JR大阪駅は単に人が多いだけでなく、大和路快速と関空快速・紀州路快速(日根野駅で切り離し)が同じホームに到着するため、乗り間違えが起きやすい。さらに関空快速・紀州路快速は車両によって行き先が途中で変わってしまう。

これまでは、4扉車両の乗降口は□、3扉車両は△のマークがあったものの、不便を感じている乗客もいたようだ。広報担当者は、

「大和路快速と関空快速・紀州路快速に乗る人が同じ列で並んでいたため、お客さん同士で『どっちに乗るの?』となることがありました」

と話している。ラインが試行された後、ツイッターでは、

「やっと分けてくれたーーーー!!」
「待機列最近わかりやすく?なった」
「いやこれ何が神ってあれやねん△並んでて大和路快速待ってるのに先に関空快速来て後ろの人に申し訳ない感じがなくなるから神やねん」

と喜びの声があがっている。

環状線全駅に実施なるか

快速以外にも、普通列車に乗る人は赤ラインに並び、降り口には黄色い降車エリアに沿って降りるよう、ホームに表示がされている。


乗降がスムーズに(画像はJR西日本近畿統括本部提供)

広報担当者はこの効果について、

「降車エリアが明確になり、スーッと降りている気がします。並び列もこれまでの譲り合いがなくなったのではないでしょうか」

と話しており、スムーズな乗降は安全面でも非常に大事だとしている。

取り組みは環状線全駅を対象に順次実施していく予定だが、駅によっては一部実施、あるいは実施しない可能性もあるといい、詳細は未定だ。