ラグビー山田章仁選手の妻・山田ローラが語る「夫へのサポート」と「双子の育児」
2020年の東京オリンピックや今年9月のラグビー・ワールドカップ日本大会など、ビッグイベントの開催を控え、日本中で“スポーツ熱”が高まっている昨今。主役であるアスリートのみならず、傍らで支える妻たちにも注目が集まっている。
「お互い歩み寄っている感じはあるのかな。距離は離れていますけど」
こう語るのは、ラグビーの山田章仁選手と結婚し、“美人アスリート妻”として注目されているモデルの山田ローラさん。親しみやすいキャラクターに加え、2016年に男の子と女の子の双子を出産。ママとなってからは、思いとおりにいかないことも多い育児を常にポジティブに乗り越える日々を綴った、コラムやSNSも話題に。
離れていてもコミュニケーションは欠かさない
ご主人の山田選手は海外遠征などで家をあけることが多いものの、離れているからこそのメリットもあるという。
「私がハッピーじゃないと子どもたちもハッピーでいられないからと、家にいるときは家事も育児も率先してやってくれるので、すごく助かっています。
それに、どれだけ長く一緒にいてもコミュニケーションをとらないとわかり合えないことはたくさんありますよね。離れているぶん余計に、言葉で伝えることが大事だとお互い思っているので、一緒にいられるときはもちろん、離れていても電話で1〜2時間、話すこともあったり……とにかくたくさん話します」
ハッピーオーラ全開の笑顔からほのぼのとした家庭の雰囲気が伝わってくるが、母国でのワールドカップ開催、34歳という年齢的にも、山田選手にとって今年は勝負の年。
「前回ワールドカップに一度出場していますが、実は彼は代表選手になるまですごく時間がかかった選手で、紆余曲折(うよきょくせつ)の末にメンバーに選ばれたんです。今回は年齢的なこともありますし、とにかく今は落ち着いて自分のできることをやろう、といった意志を感じています」
ご主人とのエピソードを照れながら語る可愛らしい妻の顔から一転、専属コーチさながらの冷静なコメントに驚いた方もいるかもしれないが、実は山田選手の活躍の陰には、常にローラさんのサポートがあった。
知識を生かしたカウンセリングで夫をサポート
「私は大学時代、健康カウンセリングや心理学の勉強をしていたんです。当時の勉強が今、生かせているのはラッキーですね」
その最大の成果といえるのが、前回のワールドカップでの日本代表選出。実力は十分にあり、努力も人一倍、重ねていたにもかかわらず、なかなか日本代表に選ばれずにいた山田選手の突破口となったのは、ローラさんのアドバイスだった。
「日本人のいいところであり悪いところでもあると思うんですが、一生懸命、働いても大変だと口にしないのが美、みたいな意識がありません? 彼もそうで。でも当時はオーストラリア人の監督だったので、そうした日本人特有の感覚は通用しません。陰の努力があるからできていることも、すぐできるように見えてしまうから、評価につながらないのかなと思ったんです」
そこでローラさんが提案したのは、より積極的な監督へのアピール。
練習中の振る舞いだけでなく、毎試合、必ず自身の成果報告や改善点の相談などを綴ったメールを作成。その文章をローラさんが英語に直し、毎週、監督に送り続けた。その熱意が当時のエディ監督に伝わり、見事、日本代表の座をゲット !
そんな経緯からも山田選手にとってローラさんは公私ともに欠かせない存在なのは間違いなさそうだが、山田家にはさらに、双子の育児という大仕事がある。常に夫婦で力を合わせて……とはいかない環境については、どうとらえているのか?
「ラグビーをできる期間は人生の中でほんの少し。だから、今しかできないことは今やってほしいんです。ただ、彼は彼で、私が家でひとりで育児をするのはとても心配らしくて。話し合った結果、私と両親とで、ハワイに引っ越すことにしました。
遠くて会えないのは寂しいけれど、彼もそのほうが安心してラグビーができると言っていて。ときどき、周囲の方から“一緒に住んでいなくて結婚した意味あるの?”と、心配されることもありますが、私たちにはこれがベストな形。家族のあり方はいろいろあるなと思います」
周りの明るさに学んだこと
「イライラするときもありますよ。一日中ずっとグズグズしていたり口答えされると、叩かないけど一発“バシッ!”ってはたきたくなるときや、双子相手にバトルモードになる瞬間も多々あります(笑)。
でも、とにかく乗り越えるしかない。だから、毎朝起きたら、双子が寝る夜8:30までのカウントダウンが始まります。あと何時間したら双子が寝る、そこからは私の時間だって考えるようにしたら、一気に気が楽になりました。24時間エンドレスだと思うと疲れも取れないけど、限られた時間ならいけますね」
笑顔を絶やさず大らかな印象のローラさんだが、元来の性格はむしろ真逆。
「もともとはめちゃ細かいですし、思いどおりにいかないとガミガミ言ってしまうタイプ。でもそれじゃダメだなと思って、徐々に細かいことは気にしなくなりました。以前は育児書もたくさん読みましたし、何か症状があるとすぐにネット検索していましたが、どんどん暗くなっている自分に気づいてからは、控えるようにしました。最近はわからないことはまずお医者さんに聞くようにしています」
さらにピンチに陥ったとき、引き上げてくれる人々が周りにいたことも、今のポジティブさにつながっている。
「私はアメリカで出産したんですが、アメリカで通っていた両親学級で“子どもが生まれてからのスタートは、パパもママも一緒。おっぱいをあげる以外は全部、男の人もできることだから絶対にやりなさい”と念押ししてくれて。
そのおかげもあって、山田はオムツ交換から食器洗いまで、なんでもこなしますし、もともと温厚な性格なので、私が限界を超えて爆発したときにも、ハイハイと優しく受け流してくれています(笑)。
うちの両親も、本当に明るい人たちで。私が妊娠中、突然、顔半分が全く動かなくなり“ベル麻痺”と診断されたときにも、“ピカソの絵みたい!” と笑い飛ばしてくれたことで救われました。産婦人科のドクターも豪快で面白い人でしたし、本当に私、周りに恵まれているんです」
タブーにしたくない産後うつ
ブームにしたいバギーラン
日々の育児を中心に発信しているインスタグラムでは、育児に関する相談のDMが届くこともしばしば。そんなやりとりや、これまでディープな部分までは公表してこなかった自身のつらい経験も踏まえ、今後やりたいことがあるという。
「マタニティー・ブルース、いわゆる産後うつについて、もっと発信していきたいと思っています。実は私自身も、子どもが4か月のときに日本に帰ってきて、いきなりひとりで育児をすることになり、毎日、泣いて過ごした時期がありました。助けを求めれば助けにきてくれるのに、母親である私がやらなきゃいけないと思ってしまう自分がいて、周囲に隠していたんです」
当時は、実際には泣いていないのに泣き声が聞こえたり、どこかうつろで“アウェイな自分”がいたとか。その後、群馬から東京に引っ越したことでつらい状態から抜け出せたものの、育児に追い詰められた母親による痛ましい事件を耳にすると、共感できる部分が多く、やりきれない気持ちになる。
「友達が産後うつ状態になったときは、“ひとりで治るものじゃないよ”とアドバイスしました。今思えば、なんでそれを自分に言ってあげられなかったのかなって。そうなってしまうのは、産後うつに対して母親になったら乗り越えなきゃいけないこと、という風潮がいまだにあるから。ひとりで抱え込まずみんなで話し合えるよう、私から発信できることを考えています」
もうひとつ、日本のママたちに広めたいと思っていることも。
「出産して子どもが小さいうちは、運動は無理とあきらめてしまいがちなママたちにおすすめしたいのが、今、私もハマっているバギーラン。日本のメーカーからはまだ発売されていませんが、海外ではランニング用のベビーカーがあるんです。タイヤが大きく子どものハーネスもしっかりしていて、私が使っているものにはブレーキもついています。
双子を乗せてガンガン走っていますよ。日本では、広く安全なコースが少ないなどの課題もありますが、これからは赤ちゃん連れのママも外でアクティブに過ごすことが普通になるよう、変えていきたいですね」
取材・文/當間優子
山田ローラ(やまだ・ろーら)1988年9月23日生まれ。モデル。2015年にラグビー山田章仁選手と結婚し、2016年9月には双子を出産。現在は両親とともにハワイで暮らす。「アスリートフードマイスター3級」と「ヘルスコーチング(健康カウンセリング)」の資格を持つ。