アンジェリカさん

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 “名古屋のカリスマ”とうたわれるドラァグクイーン・アンジェリカさん。「私のことは“ファッショナブルなオカマ”とでも思ってくれたら、こんなうれしいことはないわ」という彼女(?)は、男社会と女社会、どちらの酸いも甘いも噛み分ける中で、類いまれなる感受性が磨かれてきたはず。そこで、『週刊女性PRIME』でも、おネエならではの視点で、現代ニッポンにはびこる問題・課題をぶった斬ってもらいました。
 今回のテーマは「ペットとの向き合い方」。愛してやまない2匹の猫ちゃんと暮らすアンジェリカさんが、“小さな家族”らとの日々のやりとりから別れについてまで、持論を展開!

「あらぁ〜ちゃんといい子にしてたの〜? ただいまぁ〜」

 今日もどこかで“小さな家族”に癒され、そして愛を注いでいるみなさま、いかがお過ごしでしょうか。どうも、アンジェリカです。

 ワタシはいま、3歳の茶白のオス猫と、もうすぐ1歳になる茶トラのオス猫と暮らしているんだけど、この子たちがもう本当に可愛い!

 まあ飼い主からしてみたら、可愛くないペットなんていないはずだけど、一度飼い始めたら避けては通れない現実も待ち構えている。それは、ペットとの別れ。

 人間だっていつかは死ぬのだから、動物が死んでしまうのもこれまた世の常。単純に寿命で考えたら、アタシたち人間が見送る側になることが多いと思うの。だから、「ペットは死んだときがかわいそうだから飼えない」という人も少なくない。

 そこで今回は、ペットと暮らすことの尊さと、いざお別れを迎えた際、どうすればいかに“ペットロス症候群”に陥ることなく、愛する家族を天国へ送り出せるかを考えていきたいの。

何気ない“やりとり”が仲を深める

 まず、最初にうちの猫についてだけれど、2匹ともショップでお買い上げした子ではないのよ。

 3歳の茶白は、SNSでたまたま見つけた里親さんから迎え入れた子で、本当に臆病。保護されたときは、木材店に置いてある木の隙間でずぶ濡れになっていたそう。もう1匹の茶トラは、ボランティアで猫を保護しているシェルターさんから引き取った子。この子はとにかく元気で、ほかの子をかきわけてごはんを食べているところを見て、恋に落ちたの。

 ちなみにシェルターっていうのは、道端などで生活している“野良猫”を保護したり、保健所や愛護センターにたどり着いて行き場がなくなった猫たちを引き取ったりして、飼育希望者に譲渡する活動をしている団体のこと。もちろん、犬のシェルターも存在しているわよ。っていうか、犬を対象とした団体のほうが知名度がある気がするわね。

 うちの猫は2匹とも医療保険に入れているんだけど、そのきっかけは、先に迎えた茶白が腎臓の病気にかかってしまったこと。入院費が、2週間で15万円ほどかかったの。急に高級ネコよ! 15万円もあったら、いったい何が買えると思ってんのよ! なんてウッカリ思ったけれど、たった15万円で可愛い子の命が守れたわね。それで、今後はあの子たちの身に何かあっても慌てないようにと思って、保険に入れたの。

 当然、ウチの猫たちが何を言っているのかなんて、アタシにはさっぱりわからない。だけど、寝るときには布団にもぐり込んできて“一緒に寝たいアピール”をしてくるし、ごはんのお皿が空になっていると、自分の頭をアタシのひざにツンツンして訴えてきたりもするの。トイレ掃除をしてほしいときなんかは、ひたすらに「ニャアーニャアー」って、うるさいったらありゃしない(笑)

 でもきっと、何かしらのアクションをとっていくなかで、気持ちを認識し合って互いに学習していくのよ。だから猫たちから合図があったときには、「あ〜そうだったわね」とか「ゴメンゴメン」って言いながら、なんとなく2匹の主張を理解したつもりで生活してる。

 こんな日常のやりとりも、共通言語では意思疎通ができないからこその楽しみであったり、愛情を深める手助けになったりするのよね。

最期を恐れるより、日々を大切に

 こうして私はウチの子たちと強い絆で結ばれつつあるワケだけれど、動物と暮らすことを躊躇(ちゅうちょ)する人たちの間でたびたび交わされる言葉が、冒頭で言った「ペットは死んだときがかわいそうだから飼えない」。

 動物と暮らしてみようと考えたことがある人なら一度は抱く感情だと思うんだけど、最期の別れがつらいなんて当たり前よ。すごく愛情を注いで、ともに生きてきた子であればなおさらね。

 でも、悲しみたくないからとハナから共生をあきらめてしまうよりも、「うちの子になったからには、どの子よりも幸せにしてあげたい!」とか、「最期の一瞬までめいっぱい楽しく過ごそう!」とか、そんなふうに考えて踏み出せるほうが、自分の生活も彩り豊かなものになると思うの。私も2匹と暮らし始めてから、毎日がより刺激的になったし、周りに対しても優しくなれたわよ。

 それに、私たちが迎え入れることで、一匹でも多くの尊い命を救えるかもしれない。近年、暴力や殺傷など、非人道的な理由で死んでしまう動物もいる。アタシ、もし虐待の現場なんて目撃しちゃったら、加害者に何するかわからない……。

 動物たちは、目の前の人間が善人か悪人かを見極めてついていくことなんてできないの。なんなら、お腹をすかせているときに優しくしてくれた相手が、その子にとっての“いい人”なの。だから、真の愛情を注げる、そして動物に寄り添える人が一緒に暮らすことで、きっと彼らを救えるのよ。

 ペットと生活をともにするのは決して楽なことではないし、責任も課せられる。でも、繰り返しになるけれど、それを上回る喜びや楽しみもついてくるの。

 今あれこれ考えて不安になったって、しょうがないじゃない? 出会いも自然、そして別れがやってくるのもまた自然なのよ。

 だから、少しでも動物を「可愛いな」とか、「飼ってみたいな〜」って思っている人はチャレンジしてみてほしい。もちろん、家のコンディションやその他の条件とも相談だろうけど。きっと実際に素敵な子を目にして、そして抱いてみたら、もう一気に母性スイッチが入るから、心配なんてどこへやらってもんよ。

とにかく後悔のない毎日を

 そして、さまざまな出会い方から始まって、密度の濃い日々を繰り返すなかで、ペットとの愛のエピソードを増やしていくのよね。でも、寂しい話だけれど、やっぱりずっと一緒にはいられないのよ。

 いざお別れのときがきたら、悲しみに暮れて心を閉ざすんじゃなくて、ちゃんと思い出してほしいの。最初に出会ったときの感動と、これまでともに歩んできた生活のシーンすべてを。

 つらいことや嫌なことがあった日には、たっぷり癒してもらえたことを。言葉は通じなくとも、なんとなく感情を読み取り寄り添ってくれた、小さな家族のことを。

「かたちはなくとも、あの子たちは自分の中に生き続けている」と思えたら、“ペットロス”にも負けず、輝かしい思い出を胸に前向きに過ごしていけるんじゃないかしら。

 何よりもまず、「最後には必ずとして別れが待っている」ってことを忘れずに過ごせば、自ずと一緒の時間を大事にできると思うわ。とにかく、後悔のないように、日々のコミュニケーションをとってもらいたい。彼らはお世話をしてもらっているそのかわりに、アタシたちを無垢(むく)な心で溺愛してくれるのだから。

《PROFILE》
アンジェリカ ◎愛知県名古屋市在住のドラァグクイーン。テレビ番組『月曜から夜ふかし』や『行列のできる法律相談所』(ともに日本テレビ系)でその美貌と毒舌ぶりを披露して人気に。地上波のほかラジオ番組、各種イベントへの出演や雑誌でのコラム執筆などマイペースにお仕事中。
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