CL準決勝でリバプールに大逆転負けを喫したバルサ。まだショックから立ち直れていないとベサ記者は指摘する。(C)Getty Images

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 リバプール戦の敗戦から数日が経過したが、依然としてバルセロニスモはチャンピオンズ・リーグ(CL)敗退のショックから立ち直れずにいる。コパ・デル・レイ(相手はバレンシア)の決勝を5月25日に控えているが、なかなか再び戦闘モードに入ることができないのが現状だ。

 CLでの決勝トーナメントにおけるアウェーゲームへの極端な苦手意識、専門家の間でもっとも戦いづらい対戦相手だと目されていたリバプールのサッカーとの相性もあり、昨シーズンのローマ戦と同様に、バルセロナは第2レグで大逆転負け(0-4)を喫して大会から姿を消した。

 2試合を通じて接戦を演じた末にディテールの差で敗れたのであればまだ救いはあったろうが、無残な負け方がダメージの増幅に拍車をかけている。

 今シーズンのCLはリオネル・メッシの大会になる雰囲気を漂わせていた。2ゴールを挙げたリバプール戦の第1レグでの活躍に象徴されるように、開幕前にファンの前でビッグイヤー奪還を宣言した新カピタンは、これまでにも増して高いモチベーションでチームを牽引し続けてきた。

 その姿はクラブ史上2度目の欧州制覇の原動力となった05-06シーズンのロナウジーニョと重なるところがあり、エルネスト・バルベルデ監督率いるチームも同様にエースの活躍に引っ張られてこのまま優勝へのロードを突き進むと期待されていた。

 しかしメッシの力を持ってしても、バルサはタイトルに手が届かなかった。

 重要なのは、この敗戦から何を学ぶかである。とりわけ、メッシに全てを任せていれば、何とかなると考えていた経営陣は猛省が必要だ。

 熱意や情熱を持って仕事に取り組むことは、どんな世界においても成功を収めるうえで不可欠だ。とりわけサッカーでは、そうしたエネルギッシュさ(ハードワーク)が高いレベルで要求される。フロントと現場が一枚岩になって理念を共有しながら、それぞれに課されたミッションに尽力することがそのクラブで働く全ての人間の務めである。

 サッカークラブは一般の企業ではない。数字だけを追いかけてマネジメントしていれば、組織として機能するということでは決してないのだ。
 
 しかし、練習場を「ヨハン・クライフ」と命名したり、「クラブを超えた存在」というスローガンをその真意を汲み取ることなくことさらアピールしたり、大規模な投資を回収し、高騰し続ける選手のサラリーや移籍金を支払うためにCL制覇をノルマに掲げたりと近年、経営陣が行なってきたことは、根っこの部分では一般の企業と何ら変わりはない。

 すなわち、ブランド価値を高めて収益アップにつなげたいという魂胆が丸出しだった。そこにはフットボールへの愛情や理解が不足していた。

 今回のリバプール戦の敗北を受けて、大物選手の移籍が取り沙汰されているが、たとえ大金を投じて彼らを獲得に成功しても、根本的な解決にはならないだろう。

 サッカークラブが一般の企業と一線を画すことは、資金力で上回るクラブを押しのけて決勝で顔を合わせるリバプールとトッテナムの快進撃が実証してもいる。ましてやバルサはボールプレーとともに成長を遂げてきた確固とした伝統と歴史がある。

 バルサがCL敗退ショックから立ち直るには、まずは“ボール”に愛情を注ぎ直すことから始めなければならない。

文●ラモン・ベサ(エル・パイス紙バルセロナ番)
翻訳:下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。