米LPGAツアーで見た光景に憧れたと語った横峯さくら【写真:荒川祐史】

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日本で頂点を極めるも「正直、あまりゴルフが好きじゃなくて…」

 日本ではメジャー2勝含む通算23勝を挙げ、2004年のプロテスト合格以来、女子ゴルフ界を牽引してきた横峯さくら。プロ16年目を迎える今年は、2014年以来の国内ツアー優勝、そして米LPGAツアー初優勝に向け、「チャレンジの年にしたい」と話す。「THE ANSWER」の独占インタビューで見せた横峯の競技者としての横顔、そして女性の幸せとゴルフとの向き合い方など、全2回シリーズでお届けする。

 2009年、日本女子ゴルフツアーで賞金女王に輝いた横峯さくらは、その後、ちょっとした燃え尽き症候群に襲われていたという。「正直、あまりゴルフが好きじゃなくて、いつ辞めてもいいってスタンスでした」。当時を振り返る顔には苦笑いが浮かぶが、「今はすごくゴルフが楽しいです」と言い切る。そのきっかけとなったのが、2015年から本格参戦した米LPGAツアーで見た光景だった。

「アメリカって、女子プロゴルファーがお母さんで、子供がいて、旦那さんがキャディーをしている例が多いんです。朝、試合に行く前にLPGAが開設する託児所に子供を預けて、18ホール回った後で子供を迎えに行って、夜は普通に家族でご飯を食べる。その絵が、すごく私には衝撃的で。普通にプライベートの幸せと仕事が1つにつながっていることに、すごく憧れましたね」

 日本にも、もちろん出産後もプロとして活躍する女子ゴルファーはいるが、託児所などの体制は整っていない。「結婚したり子供ができたら引退するのが、今の日本の風潮かもしれません」。女性としての幸せを求める時はプロを引退する時――。そう思っていた横峯は、米ツアーで活躍するママさんゴルファーの姿に「こんな生き方があるんだ。こんな人生があるんだ」と目から鱗が落ちた思いがしたという。

「それまでゴルフと幸せが全然つながっていなかったので、すごい発見でしたね。ママさんゴルファーで本当に第一線で活躍している選手がたくさんいて憧れますし、私も子供がほしいので、そういう位置でできればいいなと思います」

公私ともにパートナー、夫・森川氏に寄せる大きな信頼

 いったんコースを離れれば、ごく普通の33歳女性でもある。2014年に森川陽太郎氏と結婚。森川氏がオフのトレーニングメニューを作成したり、2017年からはキャディーを務めたり、公私ともに二人三脚で歩んでいる。

 横峯が森川氏に置く信頼は大きい。ここまでの人生におけるターニングポイントについて聞くと、迷うことなく「やっぱり主人と結婚したことが、私自身すごく大きいですね」と笑顔を見せた。そもそも、米ツアーを主戦場とする決意を後押ししたのが森川氏だった。「主人と結婚していなかったら、アメリカには行っていないだろうし、ゴルフを辞めて専業主婦になっていたかもしれません(笑)」とまで言う。

 だが、今では日本とアメリカを行き来しながら、両国でツアーに参戦する日々。「今は本当にすごく優勝したいです」と断言するまで、気持ちは充実している。「スポット参戦していた頃は、アメリカのホテルに着くと同時に、帰る準備をしていました(笑)」というくらい好きではなかったアメリカも、テキサス州ダラス近郊に居を構え、愛着を持って生活している。

「どこに行くのも車です。日本食レストランも多いし、日本の食材が買えるスーパーもあるんですよ。実は、去年までは朝から晩までゴルフ場にいる生活で、料理だけは引退するまで無理かもって諦めていたんです(笑)。でも、今年からは料理にも目を向けようと思って。クックパッドさんにご協力いただき、週に2回、作り方を見ながら挑戦していく予定です」

動物保護施設で一目惚れした愛犬トロ

 ダラスの自宅には、大切な癒やしとなる存在もいる。チワワとジャック・ラッセル・テリアがミックスされた愛犬トロ。「トロフィーを持ってきてくれたらいいな」と名付けたトロは「癒やしという点では、主人の100倍です!」と目尻を下げる。出会いは2017年、ダラスの動物保護施設(シェルター)だった。

「たまにシェルターに出掛けていたんです。そこは5軒目くらいだで、その日は特別に散歩を許してもらい、一緒に外に出た時に『おいで』って言ったら、私のところに来るんですよ。主人も『おいで』って言ったら、そこにも行って。何、この子、超カワイイ?!って一目惚れ。出会って10分くらい。その日のうちに連れて帰りました(笑)」

 アメリカでは国内線であればペットが同乗できる航空会社が多く、シーズン中はトロも横峯と一緒にツアーを転戦しているという。トロに続く、ツアー転戦中の気分転換が、アニメと漫画だ。「休みの日は1日5〜6時間は見続けていられますね」と大ハマリ。最近のお気に入りは……。

「『宇宙よりも遠い場所』。これは高校生が南極に行く話で、すごくワクワクするんです。それと『青春ブタ野郎』シリーズ。これはタイトルにインパクトがあるんですけど、本当に面白くて(笑)。思春期症候群の話なんですけど、上手く説明できませんね……。う〜ん、とにかく見れば分かります。面白いので見て下さい(笑)。アニメや漫画も主人の影響で、家では一緒に見ているんですけど、ここまでハマるとは思わなかったですね」

 4月で結婚生活6年目を迎えた。年月を経ながら絆を深め合い、米ツアー優勝という目標に向かって共に歩み続ける。(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)