都内では6,000万以上が平均価格となっている新築マンション。その需要を引っ張っているのが「パワーカップル」と言われる世帯です。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、パワーカップルの実態と、それ以外の一般的な家庭の住宅事情を紹介しています。

タワーマンションとパワーカップルばかりが注目されるが…

こんにちは! 廣田信子です。

先日、新築マンションの価格が、まだ高止まりしているとのニュースが。不動産経済研究所が8月15日に発表した7月の市況によると、一戸当たりの平均価格は、首都圏で6,191万円、近畿圏で4,568万円、26年ぶりの高水準だったといいます。バブル景気の最後ごろの水準でしょうか。新築購入層の世帯年収の分布を考えると、この平均金額は高いですよね。

高額にならざるを得ない理由は、1つには、都心部の便利な立地の土地が訪日外国人需要を見込んだホテル建設との用地取得合戦で、高値になっていること、2つ目には、建設工事現場の人手不足による人件費の高騰で、建築費用が高騰していること、があると言われています。

それでも、交通の便がいいタワーマンション等は、周辺の相場より2〜3割高くても、購入希望者が殺到しているといいます。「パワーカップル」といわれる30歳代、40歳代の共働き夫婦が需要を引っ張っているのです。

しかし、さすがに都心部では1戸1億円を超えるのもの多く、パワーカップルといえども手を出しにくくなっていて、少し都心を離れても、交通の便がいい駅近のタワーマンション等に需要が広がっているといいます。彼らにとっては、通勤にかかる時間が短いことが何より重要な条件なのです。

需要を引っ張る「パワーカップル」とは、どのような夫婦でしょうか。パワーカップルはいずれもフルタイムで働く夫婦で、2人とも年収が700万円を超える夫婦といわれています。これは、全世帯の0.5%、共働き世帯の1.8%程度に過ぎないのですが、その人たちが、都心のタワーマンション需要を牽引しているのです。

世帯収入が700万円以上の世帯でも全体の27%ほどです。それが、700万円×2で世帯収入1,400万円というのは、ごく少数です。それでも、30歳代、40歳代で、1人で1,400万円を稼ぐ人はさすがに限られているでしょうが、1人で700万円は十分あることです。×2の威力は大きいです。

一昔前は、高収入の男性は、専業主婦の女性と結婚する傾向があったのですが、最近は、高収入の人は配偶者にも高収入の人を選ぶ傾向があるので、1人の収入の格差は、×2の世帯収入格差となって現れているのです。

不動産市場に関するニュースでは、全体から見ればごく少数だが購買力が高いパワーカップルの動向ばかりが注目されますが、それ以外の30歳代、40歳代の世帯の住宅事情は、どうなっているのでしょうか。

あまり注目されませんが、別の価値観で住宅選びを考えている子育て世帯は、もっと、もっと多いのです。価格が安くなった高経年団地等では空き家が問題とされますが、最近、若い家族の入居も知らないうちに結構増えている…という話を聞くこともあります。

環境が良く、比較的交通の便もいいところは、郊外型団地でも、まだまだ可能性がいろいろあるような気がします。「価格が安い」ということは、所有している人にとってはあまり歓迎できないことでしょうが、市場から見たら、一つの大きな魅力であることに違いないのです。

なかなか実態を把握しにくいのですが、ごく平均的な収入の世帯の住宅選びの多様性にも、注目していきたいと思います。

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