中日・京田陽太(C)KYODO NEWS IMAGES

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◆ 投手が圧倒的に多い新人王

 プロ野球の2017年シーズンもいよいよ大詰め。広島、DeNA、巨人、ヤクルトの4チームはすでに全143試合を終了しており、その他の8チームも残すところ数試合となっている。

 全チームの順位も決定し、ここまで来ると注目はタイトル争いへと移っていく。中でも注目が集まっているのが、キャリアで1度しか獲得するチャンスがない『新人王』をめぐる争いだ。

 4日のDeNA-中日の一戦で、DeNAのルーキー・浜口遥大が今季10勝目をゲット。しかも新人王最有力と目される中日・京田陽太を直接対決で封じ込めて見せたこともあり、一気に注目度が高まっている。

 新人王とは1950年から始まった表彰で、「その年の最も優秀な新人選手を表彰する」もの。と言っても純粋な“新人”に限ったものではなく、『初めての支配下登録から5年以内』、『投手は前年までの一軍投球回数が30回以内』、『野手は前年までの一軍打席数が60打席以内』の条件を満たしていれば新人王の有資格者となる。

 選出されるのはセ・パ各リーグ1名ずつで、ふさわしい選手がいない場合は「該当者なし」もあり。受賞者を決めるのは記者による投票で、『全国の新聞、通信、放送各社に所属している』、『5年以上プロ野球を担当している』の2点を満たす記者が投票権を持つ。

 記者投票ということは、個人の成績はもちろんのこと、チームの順位やそこに対する貢献度といった“印象”面も大事な要素。基本的にプロ入り後すぐに活躍できるのは投手の方が多いため、過去の内訳を見ると投手が圧倒している。

【新人王・内訳】

▼ セ・リーグ

・投手=38人

・野手=25人

・該当者なし=4回

▼ パ・リーグ

・投手=46人

・野手=15人

・該当者なし=6回

◆ 新人遊撃手が奮闘!

 このように投手圧倒的有利なタイトルレースのなか、今季は両リーグで遊撃手のルーキーがこの争いを引っ張っている。上述した中日の京田と、パ・リーグは西武の源田壮亮である。

【新人王レースを引っ張る遊撃手】

▼ 京田陽太(中日)

[成績] 139試 率.268(556-149) 本4 点36 盗23

▼ 源田壮亮(西武)

[成績] 142試 率.270(571-154) 本3 点56 盗37

☆新人・安打ランキング

1位 180本 佐々木信也(高橋/1956年)

2位 154本 源田壮亮(西武/2017年)

3位 153本 長嶋茂雄(巨人/1958年)

4位 149本 京田陽太(中日/2017年)

5位 147本 河内卓司(毎日/1950年)

 両者とも負担の大きい遊撃手というポジションを担い、1年目からシーズンを通して活躍。1950年代の選手がひしめく新人安打数ランキングに2人揃って割って入る奮闘を見せているのだ。

◆ 史上初の快挙となるか…

【過去の遊撃手新人王】

・1952年セ:佐藤孝夫(国鉄/社会人卒)

[成績] 104試 率.265(321-85) 本14 点33 盗45

・1953年パ:豊田泰光(西鉄/高卒)

[成績] 115試 率.281(402-113) 本27 点59 盗25

・1954年セ:広岡達朗(巨人/大卒)

[成績] 112試 率.314(341-107) 本15 点67 盗9

・1981年パ:石毛宏典(西武/社会人卒)

[成績] 121試 率.311(409-127) 本21 点55 盗25

・1988年セ:立浪和義(中日/高卒)

[成績] 110試 率.223(336-75) 本4 点18 盗22

・1992年セ:久慈照嘉(阪神/社会人卒)

[成績] 121試 率.245(371-91) 本0 点21 盗4

・1997年パ:小坂 誠(ロッテ/社会人卒)

[成績] 135試 率.261(499-130) 本1 点30 盗56

・2006年セ:梵 英心(広島/社会人卒)

[成績] 123試 率.289(450-130) 本8 点36 盗13

 過去67年を振り返ってみても、遊撃手の新人王は上記の8名だけ。新人投手の2ケタ勝利はほぼ毎年見ることができるが、年間通して活躍を見せる新人遊撃手はおよそ10年に1度レベルでしか現れないということだ。

 そもそも投手と野手を同じ丼で評価をしなければいけないという点に無理があるのだが、そこは今とやかく言っても仕方がないこと。DeNA・浜口の球団新人20年ぶりの2ケタ勝利という記録もインパクトはあるが、今季に関しては京田が優勢と言わざるを得ないだろう。

 もしこのまま京田が新人王のタイトルを獲得すれば、セ・リーグでは昨年の高山俊(阪神)に続いて2年連続の野手新人王となるが、遊撃手では2006年の梵英心(広島)以来で11年ぶりのことになる。

 また、当確と見られている源田もこのまま走り抜けば、パ・リーグの野手新人王は1998年の小関竜也(西武)以来で実に19年ぶり。遊撃手では1997年の小坂誠(ロッテ)以来で20年ぶりのことだ。

 ちなみに、両リーグ揃っての野手新人王誕生となれば、1996年の仁志敏久(巨人)と金子誠(日本ハム)以来で21年ぶり。両リーグとも遊撃手となると史上初の快挙となる。

 果たして、プロ野球史上初の快挙なるか。最後まで目が離せない。