中距離弾道ミサイル(IRBM)「火星12」は迎撃できるのか(写真は労働新聞から)

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北朝鮮が2017年8月29日早朝に弾道ミサイルを発射したことを受け、直後に全国瞬時警報システム(Jアラート)が作動し、12道県を対象に大々的に避難を呼びかけた。

だが、政府は「破壊措置の実施はなし」とも発表。国民に避難は呼びかけたものの、今回はミサイルが日本の領土や領海に着弾することはないと判断したようだ。

過去4回の上空通過は「人工衛星」主張

ミサイルは5時58分頃に発射され、6時2分にJアラートが

「ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射された模様です。頑丈な建物や地下に避難して下さい」

と注意喚起。ミサイルは6時12分頃に襟裳岬東方の東、約1180キロの太平洋に落下したとみられ、14分にはJアラートが

「不審な物を発見した場合には、決して近寄らず、直ちに警察や消防などに連絡して下さい」

とミサイル通過の続報を出した。

北朝鮮のミサイルが日本上空を通過するのは1998年10月、2009年4月、12年12月、16年2月に続いて5回目。それぞれ東北地区上空を2回、沖縄県上空を2回通過しており、北海道上空の通過は今回が初めて。過去4回はいずれも「人工衛星」の打ち上げだと主張していたが、今回については現時点(29日17時30分)ではそのような主張もない。事前通告がなかったのは1998年以来、約19年ぶりで極めて異例だ。

Jアラート作動は「飛来する可能性があると判断した場合」

内閣官房の「国民保護ポータルサイト」の説明によると、まず、(1)「弾道ミサイルが日本に飛来する可能性があると判断した場合」に、ミサイルが発射された旨を伝えて避難を呼びかける。続いて、(2)「弾道ミサイルが日本の領土・領海に落下する可能性があると判断した場合」に、「直ちに避難すること」を呼びかける。さらに、(3)「弾道ミサイルが日本の領土・領海に落下したと推定された場合」に落下場所について知らせることになっている。それ以外に、(4)「日本の上空を通過した場合」や(5)「日本まで飛来せず、領海外の海域に落下した場合」にも、続報が出ることになっている。

つまり、今回は(1)と(4)にあたる。

破壊命令は「領土、領海に着弾するということが把握できた時」に

小野寺五典防衛相は8月29日午前の会見で、今回のミサイルが中距離弾道ミサイル(IRBM)「火星12」型にあたるとの見方を示した。破壊措置命令の有無については明らかにせず、

「発射された弾道ミサイルが、わが国の領土、領海に着弾するということが把握できた時に破壊措置命令でこれを除去するということになる」

と一般論を述べるにとどめたが、「破壊措置の実施はなし」という結果からすれば、レーダーの分析結果などから、ミサイルが日本の領土・領海内に着弾する可能性がないと判断したとみられる。

日本のミサイル防衛は、大きく(1)イージス艦搭載の迎撃ミサイル「SM3」、(2)地上配備型迎撃ミサイル「PAC3」の2段構えだ。それぞれ大気圏外の上空数百キロ、地上に近い上空数十キロで迎撃することを想定している。防衛省は、今回の弾道ミサイルの最高高度は約550キロだったと推定している。これを念頭に

「これは能力的に迎撃できるとお考えか」

という質問も出たが、小野寺氏は

「我が国の手の内のことになるので、しっかりとした対応ができるということに留めさせていただければ」

と述べるにとどめた。