『劇場版 ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』石黒英雄に聞くオーブが持っていた絆の力
ウルトラマンオーブが帰ってきた! 3月11日、『劇場版 ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』が公開された。迫力満点の特撮映像に加え、コメディーとシリアスを自在に行き来するストーリーで新たなウルトラマン像を築いて人気を得た『ウルトラマンオーブ』。主人公の“風来坊”ヒーロー、クレナイ ガイを演じた石黒英雄さんに、TVシリーズ、劇場版、Amazonプライムビデオで配信中の『ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA』を完走した現在の心境をじっくり語ってもらった。
───いよいよ劇場版が公開されますが、『ウルトラマンオーブ』という作品とずっと走ってきた時間を振り返って、今はどんな心境でしょうか?
石黒 全員が無事に大きなケガなく終われたことが、本当に自分の中ではホッとしています。
───それだけ撮影がハードだったということでしょうか?
石黒 やっぱり時間がタイトでしたからね。求められていたことがみんな高かったんですよ。そういうときは、ケガが起こりやすい状況なんです。体調を崩す人も増えていたので。自分の中で、とにかく大きなケガ、事故だけは絶対に起こしたくないという気持ちで最後までやっていました。撮影が終わった後、僕からプロデューサーに言ったのも、「ウルトラマンになれて良かった」じゃなく、「ケガなく終われて良かった」でしたから(笑)。
───じゃ、本当にホッと一息という感じですね。
石黒 イベント「ウルトラヒーローズEXPO 2017」の舞台も剣を使ったハードなアクションがあって、1日5公演、54ステージあったんですけど、これもケガなく終わって良かったです。
───54ステージ! ケガに注意するということは、やっぱり主人公としての責任感ですよね。
石黒 そうですね。今までの主役の方たちから勉強になったことがいっぱいありましたが、いざ自分が半年間主役をやるときに「どこまでできるんだろう?」という思いと「どこまでみんなを引っ張れるんだろう?」「どこまでみんなを支えられるんだろう?」という思いがありました。正直、ぜんぜん上手くいかなかった部分もあると思うんですけど、大きなケガのないまま、作品をすべてみなさんに見せられたことは大きかったですね。
───石黒さんが演じてこられたクレナイ ガイというキャラクターは、最近あまり見ないような“風来坊のヒーロー”だったと思いますが、どのように形作っていったのでしょう?
石黒 よく「あまり見ないヒーロー像」と言われるんだけど、僕としては「よく見るヒーロー像」だと思っていたんです。その中で自分にしか出せない味を出そうと考えながら演じていましたね。撮影場所も限られている中で、自分なりの良さを出していくしかない。オーストラリアでロケができるなら、また写り方も変わるんでしょうけど、そうではないですからね(笑)。風来坊になりつつも、SSPの部屋によくいるという条件があったので、その中でいろいろな“遊び”を取り入れて演じました。
───石黒さんから発案された“遊び”の部分とは?
石黒 いろいろありますよ。ガイが雑誌の袋とじを見ていたり(笑)。SSPへの立ち位置も回によって変えています。すべての回で楽しませたいと思っていたので、ガイの一挙手一投足は考えていましたね。クールな感じだけではなく、愛嬌があったり、子どもが真似したくなるような行動をしたり、喋り方を少し変にしてみたり。ジャグラーも喋り方を変にしていましたよね。子どもって見た目よりも音に反応することが多いらしいんですよ。だから、音でも遊べるように工夫していました。大切な言葉は流すように話したり、どうでもいい言葉はゆっくり話したり。
───面白いですね。逆にするんですね。そういえばラムネを飲んだり、吹き出したりして、キャラ作りに上手く使っていました。
石黒 ラムネのフタを開けるシーンがすべての撮影の中で一番辛かったな。
───(笑)どういうことですか?
石黒 3話でラムネのフタを開けるシーンがあったんですけど、プシューッという泡が欲しかったんですよ。でも、今のラムネってそうならない構造になっているんです。台本では泡が噴き出て「あっ、ごめんねー!」と渡す予定だったのに、何度やっても泡が出なくて、あんなに重たくて辛い現場は初めてでしたよ(笑)。太陽も沈んじゃったので、照明さんが夕陽を作ってくれて。あのシーンだけは「この場所にいたくない……」と思いましたね。
───田口清隆監督とは、作品全体、あるいはクレナイガイというキャラクターについて、どんなことをお話されましたか?
石黒 「やれることは何でもやっていこう」ということですね。とにかく攻める気持ちは忘れないようにしていました。これまでの特撮のヒーロー像はありますけど、ちょっと外れたところにも平気で行けるようにしたい、と。最初からどんどん攻めていって、撮影を重ねていくうちに『ウルトラマンオーブ』という作品になっていったと思います。
───毎回視聴者を楽しませたい、そのためにいろいろなことを試すというスタンスが『ウルトラマンオーブ』という作品の根幹にあると思います。コメディー風に始まったのに、最後にオーブが負けてしまうエピソード「大変!ママが来た」はすごいインパクトでした。あまりの結末に、全国で子どもたちが泣いてしまったそうです。
石黒 そうらしいですね。それぐらい強烈なものを出していきたいと思っていました。「朝9時だからやめよう」というのは、僕は嫌なんです。「じゃ、とにかく僕の芝居を見てから判断してほしい」ということが多かったですね。
───攻める姿勢、攻める芝居が『ウルトラマンオーブ』を貫いていたわけですね。だからこそ、面白い作品やクレナイ ガイというユニークなキャラクターが生まれたんだと思います。
石黒 そう言ってもらえるのは嬉しいですね。
───そして、いよいよ『劇場版 ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』が公開されました。見どころはたっぷり伺いますが、このタイトルについて思うところがありましたらお聞かせください。
石黒 『ウルトラマンオーブ』という作品は“絆の力”で撮っていたんですよ。本当にタイトなスケジュールの中、求められる要求もどんどん増えていき、視聴者の方たちの期待もどんどん上がっていきました。どんどんクオリティーを上げなければいけない中で、僕がみんなを鼓舞して、撮影監督のt高橋創さんが協調してくれて。技術部チームに関しては、創さんが「全部責任をとるから」とおっしゃってくれて。僕の心の拠りどころは創さんでしたし、あらゆることを創さんに相談しました。みんなで一つになって、求めていった結果が『ウルトラマンオーブ』なんです。
───ベタな言葉ですが、チームワークがあり、信頼があったおかげでハードな環境の中でもケガなく最後まで良い作品を追求できたと。
石黒 現場内で意見が食い違っても、現場の空気が悪くならないんですよ。意見が違う、その腹を立てている理由がわかるんです。太陽が沈むとか、芝居に対する要求とか。ストレートに言い合えるけど、誰も嫌な気持ちにならない現場でした。それは絆の力だったと思いますね。
───なるほど。その言葉が劇場版に使われているのも象徴的ですね。
石黒 僕とスタッフの間でも意見が違った事もいっぱいあったと思いますが、映像を見て協調して熱い気持ちで作業してくださいました。「無理だよ、これ」ということも寝ずに実現してくれたんです。僕も打ち上げでいっぱいスタッフの方たちに「ごめんなさい」って言いましたから。合成スタッフの方に「好きなだけ動いちゃってごめんなさい」とか(笑)。でも、そこまで作り上げたからこそ、『ウルトラマンオーブ』は人気が出たんだと思います。
(大山くまお)
後編に続く
お正月の舞台は1日5公演、54ステージ!
───いよいよ劇場版が公開されますが、『ウルトラマンオーブ』という作品とずっと走ってきた時間を振り返って、今はどんな心境でしょうか?
石黒 全員が無事に大きなケガなく終われたことが、本当に自分の中ではホッとしています。
───それだけ撮影がハードだったということでしょうか?
石黒 やっぱり時間がタイトでしたからね。求められていたことがみんな高かったんですよ。そういうときは、ケガが起こりやすい状況なんです。体調を崩す人も増えていたので。自分の中で、とにかく大きなケガ、事故だけは絶対に起こしたくないという気持ちで最後までやっていました。撮影が終わった後、僕からプロデューサーに言ったのも、「ウルトラマンになれて良かった」じゃなく、「ケガなく終われて良かった」でしたから(笑)。
───じゃ、本当にホッと一息という感じですね。
石黒 イベント「ウルトラヒーローズEXPO 2017」の舞台も剣を使ったハードなアクションがあって、1日5公演、54ステージあったんですけど、これもケガなく終わって良かったです。
───54ステージ! ケガに注意するということは、やっぱり主人公としての責任感ですよね。
石黒 そうですね。今までの主役の方たちから勉強になったことがいっぱいありましたが、いざ自分が半年間主役をやるときに「どこまでできるんだろう?」という思いと「どこまでみんなを引っ張れるんだろう?」「どこまでみんなを支えられるんだろう?」という思いがありました。正直、ぜんぜん上手くいかなかった部分もあると思うんですけど、大きなケガのないまま、作品をすべてみなさんに見せられたことは大きかったですね。
一番苦労したのは意外なシーン
───石黒さんが演じてこられたクレナイ ガイというキャラクターは、最近あまり見ないような“風来坊のヒーロー”だったと思いますが、どのように形作っていったのでしょう?
石黒 よく「あまり見ないヒーロー像」と言われるんだけど、僕としては「よく見るヒーロー像」だと思っていたんです。その中で自分にしか出せない味を出そうと考えながら演じていましたね。撮影場所も限られている中で、自分なりの良さを出していくしかない。オーストラリアでロケができるなら、また写り方も変わるんでしょうけど、そうではないですからね(笑)。風来坊になりつつも、SSPの部屋によくいるという条件があったので、その中でいろいろな“遊び”を取り入れて演じました。
───石黒さんから発案された“遊び”の部分とは?
石黒 いろいろありますよ。ガイが雑誌の袋とじを見ていたり(笑)。SSPへの立ち位置も回によって変えています。すべての回で楽しませたいと思っていたので、ガイの一挙手一投足は考えていましたね。クールな感じだけではなく、愛嬌があったり、子どもが真似したくなるような行動をしたり、喋り方を少し変にしてみたり。ジャグラーも喋り方を変にしていましたよね。子どもって見た目よりも音に反応することが多いらしいんですよ。だから、音でも遊べるように工夫していました。大切な言葉は流すように話したり、どうでもいい言葉はゆっくり話したり。
───面白いですね。逆にするんですね。そういえばラムネを飲んだり、吹き出したりして、キャラ作りに上手く使っていました。
石黒 ラムネのフタを開けるシーンがすべての撮影の中で一番辛かったな。
───(笑)どういうことですか?
石黒 3話でラムネのフタを開けるシーンがあったんですけど、プシューッという泡が欲しかったんですよ。でも、今のラムネってそうならない構造になっているんです。台本では泡が噴き出て「あっ、ごめんねー!」と渡す予定だったのに、何度やっても泡が出なくて、あんなに重たくて辛い現場は初めてでしたよ(笑)。太陽も沈んじゃったので、照明さんが夕陽を作ってくれて。あのシーンだけは「この場所にいたくない……」と思いましたね。
───田口清隆監督とは、作品全体、あるいはクレナイガイというキャラクターについて、どんなことをお話されましたか?
石黒 「やれることは何でもやっていこう」ということですね。とにかく攻める気持ちは忘れないようにしていました。これまでの特撮のヒーロー像はありますけど、ちょっと外れたところにも平気で行けるようにしたい、と。最初からどんどん攻めていって、撮影を重ねていくうちに『ウルトラマンオーブ』という作品になっていったと思います。
───毎回視聴者を楽しませたい、そのためにいろいろなことを試すというスタンスが『ウルトラマンオーブ』という作品の根幹にあると思います。コメディー風に始まったのに、最後にオーブが負けてしまうエピソード「大変!ママが来た」はすごいインパクトでした。あまりの結末に、全国で子どもたちが泣いてしまったそうです。
石黒 そうらしいですね。それぐらい強烈なものを出していきたいと思っていました。「朝9時だからやめよう」というのは、僕は嫌なんです。「じゃ、とにかく僕の芝居を見てから判断してほしい」ということが多かったですね。
───攻める姿勢、攻める芝居が『ウルトラマンオーブ』を貫いていたわけですね。だからこそ、面白い作品やクレナイ ガイというユニークなキャラクターが生まれたんだと思います。
石黒 そう言ってもらえるのは嬉しいですね。
『ウルトラマンオーブ』を支えた“絆の力”
───そして、いよいよ『劇場版 ウルトラマンオーブ 絆の力、おかりします!』が公開されました。見どころはたっぷり伺いますが、このタイトルについて思うところがありましたらお聞かせください。
石黒 『ウルトラマンオーブ』という作品は“絆の力”で撮っていたんですよ。本当にタイトなスケジュールの中、求められる要求もどんどん増えていき、視聴者の方たちの期待もどんどん上がっていきました。どんどんクオリティーを上げなければいけない中で、僕がみんなを鼓舞して、撮影監督のt高橋創さんが協調してくれて。技術部チームに関しては、創さんが「全部責任をとるから」とおっしゃってくれて。僕の心の拠りどころは創さんでしたし、あらゆることを創さんに相談しました。みんなで一つになって、求めていった結果が『ウルトラマンオーブ』なんです。
───ベタな言葉ですが、チームワークがあり、信頼があったおかげでハードな環境の中でもケガなく最後まで良い作品を追求できたと。
石黒 現場内で意見が食い違っても、現場の空気が悪くならないんですよ。意見が違う、その腹を立てている理由がわかるんです。太陽が沈むとか、芝居に対する要求とか。ストレートに言い合えるけど、誰も嫌な気持ちにならない現場でした。それは絆の力だったと思いますね。
───なるほど。その言葉が劇場版に使われているのも象徴的ですね。
石黒 僕とスタッフの間でも意見が違った事もいっぱいあったと思いますが、映像を見て協調して熱い気持ちで作業してくださいました。「無理だよ、これ」ということも寝ずに実現してくれたんです。僕も打ち上げでいっぱいスタッフの方たちに「ごめんなさい」って言いましたから。合成スタッフの方に「好きなだけ動いちゃってごめんなさい」とか(笑)。でも、そこまで作り上げたからこそ、『ウルトラマンオーブ』は人気が出たんだと思います。
(大山くまお)
後編に続く