iPhone 7で300Mbps超はドコモだけ、3キャリアのネットワークを比較してみました:週刊モバイル通信 石野純也

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iPhone 7、7 Plusの発売に合わせ、各キャリアがネットワーク品質のアピールをしています。iPhone 7、7 Plusは、LTEの「カテゴリー9」に対応。下り最大で450Mbpsというカタログスペックを誇ります。3つの周波数を束ねる3CC CAにも対応しており、通信の速度や安定性が向上するのが特徴です。

とは言え、下り最大450Mbpsというのは、3つの周波数をそれぞれフルに使って、各150Mbpsを3波を足し合わせたときの数字。ここまでまとまった周波数をLTE用に確保するのは難しく、日本では、ドコモの下り最大375Mbpsが最大になります。

iPhone 7で300Mbps超はドコモだけ

また、iPhone 7、7 PlusはFDD方式のLTEとTDD方式のLTEをまたがってキャリアアグリゲーションすることはできないため、auの場合は下り最大225Mbps。ソフトバンクは下り最大262.5Mbpsがカタログスペックになります。

国内最速で300Mbpsを超えているのは1社だけということもあり、ドコモはこのネットワーク性能を猛アピール。夏モデルの導入に合わせてスタートした375Mbpsのエリアを、改めて解説しました。ドコモのネットワーク部長、三木睦丸氏によると、3CC CAを使った300Mbpsを超えるサービスは「798都市にまで広がっている」とのこと。特にネットワークの混雑する東名阪では、すでに360都市に337.5Mbps超(Bnad 19の周波数をフルに使えないところはこの速度になる)のエリアが構築されています。

▲5月に開始した3CC CAを改めてアピールするドコモ

▲ネットワーク部長の三木睦丸氏

たとえば、東京の山手線沿線では、1年前と比べ、平均して約3倍にスループットが向上しているといいます。これはほぼ毎日渋谷に通勤している筆者も体感していることで、ありえないほど混雑した駅のホームでも普通に通信できるどころか、100Mbps近い速度が出るときもあります。

理論値の最大速度だけが注目されがちですが、重要なのは速度ではなく、容量が拡大したこと。より多くの人の通信をさばけるようになるというのがポイントと言えるでしょう。

▲山手線ではスループットが約3倍に

こうした高速化の恩恵は端末が対応して初めて受けられるものです。また、iPhone 7、7 Plusはグローバルでは珍しいBand 21にも対応しているため、東名阪が中心の375Mbpsエリアだけでなく、全国区で高速通信を利用できます。先の三木氏も、こうした状況を指し、「1.5GHz帯(Band 21)に対応して、全国でより快適に使える」と自信をのぞかせていました。

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▲iPhoneとしては初のBand 21対応

ソフトバンクは5Gの技術要素をアピール

最高速度ではこれに続くソフトバンクですが、残念ながら、262.5Mbpsのエリアはそこまで広がっていません。この262.5Mbpsサービスは3CC CAによって実現しているもので、こちらはBand 1、Band 3、Band 8を組み合わせで成り立っていますが、エリアは都内や千葉の一部です。

現在も少しずつエリアを拡大している最中で、ソフトバンクとしても、あまり大声で最大速度を訴求するつもりはないようです。結局のところ、広く使えるのは、Band 1とBand 8を組み合わせた187.5Mbpsのエリアになります。

▲ソフトバンクは一部エリアで262.5Mbpsのサービスを展開

とは言え、これでは数値的に見劣りするのも事実。そこでソフトバンクは、スループットを向上させる方法をアピールする手に打って出ました。それが、「Massive MIMO」です。

Massive MIMOは、5Gの要素技術の1つで、その名のとおり、基地局側のアンテナを大量に増やし、ビームフォーミングで1台1台に電波を届ける技術。対応するのはソフトバンク傘下のWireless City Planningが提供するAXGPで、9月16日のスタート時には100局程度と非常に限られたエリアになりますが、最新技術を使ってiPhone 7、7 Plusの通信を快適にするというアピールにはつながります。

▲アンテナを128に増やすMassive MIMO

▲ビームフォーミングと空間多重で混雑を解消


ネットワーク面で存在感が薄れるau

こうしたアピール合戦を繰り広げるドコモとソフトバンクに対し、auが存在感を発揮できていない印象もあります。iPhone 7、7 Plusでは、上りの通信をキャリアアグリゲーションで高速化する技術が搭載されており、auはこれに対応する予定です。

しかし、倍増したと言っても10Mbpsが20Mbpsになるだけです。ドコモでは最大50Mbps、ソフトバンクでは最大37.5Mbpsを実現しており、他社対抗という観点だと、効果は限定的と言えるかもしれません。

auは、FDD方式とTDD方式をキャリアアグリゲーションで足し合わせる技術を導入しており、Galaxy S7 edgeやXperia X Performanceで利用できますが、先に述べたようにiPhone 7、7 Plusは非対応。ネットワーク側のカタログスペックではドコモに近い下り最大370Mbpsという数値を出していますが、iPhoneの場合は端末側の事情で制約が生じてしまったというわけです。

auが売りにしていた370MbpsのLTE AdvancedにiPhone 7、7 Plusが非対応

もちろん、総務省の基準に従って算出した実効速度を見る限り、下りの速度はドコモやソフトバンク以上で、決して遅くて使いものにならないわけではありません。しかし、大きな進化がなく、最新方式に対応できていないのが痛いところ。総務省方式の調査はiOSのカテゴリーにiPhone 6sを使用しているため、iPhone 7、7 Plusでも同じ結果になるとなれば、他社に抜かれてしまう可能性すらあります。

Band 18(800MHz帯)のLTEや、キャリアアグリゲーション対応など、ネットワークでの強みを毎年アピールしてきたauがやけに静かなのには、このような事情がありそうです。

キャリアが仕様を決めて、ある程度一斉に特定の通信方式に対応させるAndroidとは異なり、iPhoneはアップル側の思惑があるため一律にはいきません。auはBand 11、21(1.5GHz帯)への対応もiPhone 7、7 Plusでようやく実現しましたし、かつてはauのiPhone 5が、エリアの広いBand 18に非対応だったこともありました。今回はメインの4つの周波数できっちりネットワークを整備してきたドコモに、端末側がしっかりマッチしたことで、こうした競争環境になったと言えるでしょう。


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