東京・新宿の有名スポットといえば、新宿二丁目。LGBTの人々が多く集まり酒を酌み交わすこの繁華街は、昔から宿場の花街、いわゆる遊郭が立ち並ぶ場所でした。そんな街の一角にひとつのお寺があります。そしてそこには、ちょっとコワい像が建てられているのです……。今回は、この新宿二丁目にある、お寺の伝説をご紹介します。


本物の「太宗寺の閻魔様」の大きさは都内最大級の5.5m!



東京の中でもとても有名な街「新宿二丁目」。
同性愛者向けのお店やバーがひしめく独特の雰囲気を持つこの場所に、ひときわ広大な敷地のお寺があります。
「太宗寺(たいそうじ)」です。
江戸時代からあるこのお寺には、ある伝説をもつ閻魔(えんま)様がいるのをご存知でしょうか?

大宗寺の閻魔様は「江戸三大閻魔」にも数えられていて、その大きさは都内最大級の5.5m。かなりの大きさです。
「内藤新宿のお閻魔さん」と呼ばれ、昔から新宿に住む人々にとって大事な存在でした。

この閻魔様、別名が「つけひも閻魔」。
名前は、あるひとつの伝説に基づいています。
江戸の昔、大宗寺のまわりは遊郭が立ち並ぶ、いわゆる花街として賑わっていました。
あるとき、子どもをあやす場所としてちょうど良かった太宗寺の境内で、ひとりの乳母が子守をしていたのですが、いくらあやしても泣き止みません。

乳母が「そんなに悪い子だと閻魔様に食べられてしまうよ」と言うと、ぴたりと泣き止む赤ん坊。ほっとして背中に負ぶって帰ろうとします。
そのとき、妙な違和感が乳母を襲いました。
振り返ると、背中から赤ん坊の姿が消えているではありませんか。
真っ青になり境内を探すと、閻魔様の口から負ぶい紐がぶら下がっていたのです。

子どもを食べた閻魔様……かなり恐ろしいエピソードを持つ新宿の「つけひも閻魔」。
閻魔様が子どもを食べてしまうという話は非常にめずらしく、この話が生まれた背景には、女性労働者が多いという土地柄があったと言われています。
宿場町として栄えた内藤新宿、さらに風俗街として知られた太宗寺近辺。
働く女性たちは子どもを産むと乳母の手が必要でした。
なんとかして子どもを泣き止ませたかった乳母たちは、こうした怖いエピソードで子どもを泣き止ませていたのかもしれません。

太宗寺の閻魔様のご開帳は、年2回。
でも、格子越しであれば、その姿を覗き見ることができます。
新宿という大人の街で育つ子どもたちを見守ってきた閻魔様。
その恐ろしい表情は、新宿二丁目という不思議な町に迷い込んだ私たちを、別世界へと誘います。

文/岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は「新宿二丁目の、閻魔様」として、3月28日に放送しました。

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<番組概要>
番組名:「シンクロのシティ」
放送日時 :毎週月〜木曜15:00〜16:50
パーソナリティ:堀内貴之、MIO
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/city/