立ち聞きばかりの謎解明「あさが来た」104話

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朝ドラ「あさが来た」(NHK 月〜土 朝8時〜)2月2日(火)放送。第18週「ようこそ! 銀行へ」第104話より。原案:古川智映子 脚本:大森美香 演出:佐々木善春

104話はこんな話


はつ(宮崎あおい/崎の大は立)の長男・藍之助(森下大地)が、銀行で働きたいとやって来た。


嘘のない関係


とにかく参った。「あさが来た」の隙のなさに。
ながらく、視聴者たちの間で語られてきた、加野屋の人たちは立ち聞きばかりしている問題について、唐突に回答がされたのだ。
彼らの立ち聞きには、ちゃんと理由があった。
それは「風通しの良さ」だ。
この理由の説明の仕方が匠の域だった。
まず、和歌山から単独やってきた藍之助が、親の許可を得て来たと言うのは、どうやら嘘らしいと、あさ(波瑠)と新次郎(玉木宏)が気づく。
とはいえ、藍之助の嘘は悪い嘘ではなく、彼なりに自分の道を選びたいという真面目なもの。だから一生懸命、加野屋で働く。
ある日の昼休み、藍之助は優等生然と、銀行に大事な心がまえは何かと、支配人のへぇさん(辻本茂雄)に問う。
そこでへぇさんは「まずは嘘をつかんことです」と答える。
「嘘で固めて人と人との仲が淀んでいくような店は必ずお金の価値も淀んでいきます」と(けだし名言!)。
へぇさんはこの店の「風通し」の良さを絶賛。
そう、ここが、立ち聞き問題の回答だ。かつて、へぇさんがこの店を観察していた時、みんながわりと堂々と立ち聞きしているところを目撃して、その「風通しの良さ」に感動したに違いない。

風通しの良さや、あさの裏表のなさが良いのだと聞かされた藍之助は、複雑な顔をする。
いい話に感銘しているのと、嘘をついて大阪に来たこととで揺れているのかなと思わせる。
藍之助にも言い分がある。
子供にも自分の道を選ぶ権利があるのではないか、とあさに主張していて、それがまた、千代(小芝風花)の「進路」について悩むあさと呼応していく。
子供の頃から商売に興味があったらしい藍之助のことは、58話にて、パチパチはんで遊ぶ場面をつくっていた。
へぇさんと藍之助の問答も、ドラマのテーマのひとつである「教育」を思わせるものだ。
ああ、もう、理系男子作家のような手はずの良さ!
すべてのエピソードに、風が軽やかに絡まりながら、すぅ〜っと通り過ぎていく心地よさだ。