10分でわかる「まれ」はなぜつっこまれるのか「まれ」144話

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朝ドラ「まれ」((NHK 月〜土 朝8時〜)9月12日(土)放送。第24週「女たちのジレンマムース」第144話より。脚本:篠崎絵里子(崎の大は立) 演出:西村武五郎


144話は、こんな話


ケーキコンテストと子供の相撲大会が同じ日になってしまい、希(土屋太鳳)は悩んだ末、相撲大会を選ぶ。だが、沙耶(飯豊まりえ)が勝手にケーキを出品、希当人が出場していないため失格だったものの、点数は一番高かった。
幸せな気持ちでこのケーキを家族と分かち合っている最中、大悟(小日向文世)が現れる。

希の1〜144話までを振り返ります


主人公の場当たり的な生き方に疑問や不満が噴出しまくった「まれ」も残るところ2週間。
今日は、これまでの希の人生年表を振り返ってみたいと思います。
いつもの、【つっこ「まれ」】も、最後にちょっとだけ書きました。

1980年/藍子(常盤貴子)、徹(大泉洋)と横浜で出会う。

●チェック! 希の父母は横浜で出会っていて、それがのちに希が横浜で修業することに繋がっています。
出会いエピソードは17話。

1983年8月10日/希誕生。 

1988年/希5歳/徹が誕生日にケーキを買ってくる。その味に感動した希は、将来ケーキ職人になりたいと願う。
希が大事にしていた魔女姫人形(声・戸田恵子)は、徹がこのケーキにつけたもの。

1994年春/希10歳/「わたしは夢が嫌いです」と作文に書く。でっかい夢をもって職を転々とし貧乏になっていく父を見て、ケーキ職人の夢は諦め、地道にコツコツ生きようと、公務員を目指している。

1994年夏/徹の自己破産により能登に家族で移住。

第1週

1996年秋/徹、東京へ出稼ぎに行く。
(能登にきて「2年目の秋」とナレーション。クレジットには6年前と書いてあります。2001年から6年前だと1995年になってしまうのですが・・・)

2001年/希17歳/夢アレルギーをもちながらも、子供の頃の夢が捨て切れず、ロールケーキコンテストに出場。受賞を逃すが、カリスマパティシエ池畑大悟(小日向文世)に出会う。
徹、戻ってくる。

●チェック! 高校生の希は、毎朝村内放送をして、それから畑仕事、お弁当づくり、朝市で販売、高校、放課後は食堂まいもんでバイトと、日本一働く女の子と、体力のあるところを見せている。ケーキと女将と子育てをやりこなしてきたバイタリティーはすでにここで培われているのです。

希ががんばって働いているエピソードは第7話。

2002年/希、市役所に就職。
祖母・幸枝(草笛光子)がフランスから来る。
魔女姫人形が幸枝のものだったことが判明。
わずか半年で市役所をやめて、横浜へ。かつて徹がケーキを買った店に就職を決めたものの、その味が変わってしまっていたためあっさり辞める。
高志(渡辺大知)のバイト先・天中殺で食べたケーキに引かれ訪ねた店マ・シェリ・シュ・シュは大悟の店だった。そこで強引に働き始める。
藍子と徹の離婚騒動。

●チェック! このあたりから、希の行き当たりばったりの行動が顕著になっていく。それを「魂で生きている」(輪子〈りょう〉)と表されます。
横浜編は第7週から。

2003年/一徹(葉山奨之)、みのり(門脇麦)結婚。
徹、3年がんばったら戻ってくると期限つきで東京へ。
希、ようやく正式に大悟に弟子入り。
大輔(柳楽優弥)との恋愛騒動を経て、圭太(山崎賢人)への長い思いを成就させる。

●チェック! 大輔と圭太の間で揺れる希のエピソードは盛り上がりました
第12週あたりからドロドロ恋愛編突入。

2006年/希23歳/希、スーシェフになる。
圭太と遠距離結婚、のちにパティシエの道をいったん休み、能登で塗師屋の女将になる。
徹、会社をつくるが、あっけなく倒産。2度目の自己破産。能登へ。

2007年/徹、倒産した会社の社員の脅しを受け、行方不明に。
希、徹の願いを受けて、能登で洋菓子店をオープン。女将とケーキ、両立させる。

●チェック! 再び能登編になったあたりから、ジェットコースタードラマ化が顕著になり、いろんな出来事がどんどん起こるものの、過程はほとんど描かれないまま、すべて希が運良く解決していく展開に視聴者のストレスが溜まっていきます。
能登編第2部は第18週から。

2008年8月10日/希、双子出産。育児と店と女将の仕事をすべてこなす。
双子登場は第22週から。

2015年/双子小学生に。
希、8年のブランクを経て、世界的なパティシエになる挑戦を決意。
●チェック! 希があまりにもラッキー過ぎるという視聴者の不満を陶子(柊子)が「な〜め〜す〜ぎ〜」で代弁した第24週。

ここまでが144話。
はたして、希は、やりたいことをすべて諦めずにやりきることができるのか?
徹はいつどんな形で帰ってくるのか? 気になる残り12回です。
そこで思うのは、映画でも舞台でもよくある、どっかんどっかん笑わせて、見ている人を弛緩させた後に、大きな衝撃シーンで驚かせたり泣かせたりするギャップ演出。
「まれ」の場合もここまで希を迷走させて、見てるほうをさんざん苛々させることで、最終的に何か効果を狙っているとしか思えません。この半年、見てきて良かったなーと思わせてほしいです。

今日の、つっこ「まれ」


ママさんパティシエコンテストで、希の応援で歌を歌ったことで、マキ(中川翔子)が動画で注目され、折しも結婚して東京に行くことを決意していた彼女は、男と東京両方手に入れることになりました。
動画が東京で評判っていうのは・・・ネットによる動画配信の意義からずれちゃってますよねー。

それから、余計なお世話ですが、2015年のいま、寡黙な高志は電話じゃなくLINEでやりとりしたらいいんじゃないでしょうかね? 

今日の、小姑的ぼやき


マキのハッピーエンドなエピソードによって、二兎を追っても二兎得られることがあると希に背中を押したいのはわかります。とはいえ、誰でも彼でも両立できる(しかもとくに苦労しないで)ではなく、両立できたりできなかったり、多様な人生を描くという選択はなかったのかなあと少々残念に思いました。
(木俣冬)

エキレビ!にて月〜土まで好評連載中! 木俣冬の日刊「まれ」ビュー全話分はこちらから

いまひとつ視聴率が伸びないが、奮闘は讃えたい。NHK朝ドラ「まれ」おさらい(54話までを総括))