「BRUTUS」珍奇植物の衝撃、植物はデザインだ

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仕事や私用で、時々インテリアショップを覗くことがある。ここ数年の傾向として気付くのは、品揃えが家具や雑貨だけではなく、いわばトータルで「ライフスタイル」を提案するタイプの店が増えた、ということだ。缶詰やグラノラなどの簡単な食品を置く店も少なくない。

そうした流れの一環だろうか、植物を扱う店もかなり増えた。中には、店先で「ちょっとだけ扱っています」というレベルを超え、かなりの面積を植物コーナーに充てていたり、植物専門のスタッフを常駐させている店などもある。そこでに扱われるのは、いわゆる観葉植物や、サボテン、多肉植物などだが、時々珍妙なルックスのものたちが混じっていて意表を突かれることがある。

そんな妙ちきりんな姿をした植物を特集したのが『BRUTUS』(マガジンハウス)の最新号(No.808)、「BIZARRE PLANTS HANDBOOKーー珍奇植物。いま一番、モードな園芸。」だ。「植物+モード」という発想がなかったため、「はー、今はそんなことになっているのか、やれやれ……」と思うも、過去に植物にのめり込んだ経験も手伝い、手に取るに至った。そして、これが想像以上に魅力的な内容で驚いた。


植物を「デザイン」として見る


ページを繰れば、次々と目に飛び込んでくるのはヘンテコだが、どこか愛らしい姿をした植物たちだ。ノコギリのようにギザギザしたものもあれば、もこもこと丸っこいものもある。肉厚の葉をミルフィーユのように重ねているものもあれば、葉をシガレットクッキーのような筒状に巻いているものもある。「なんでお前はそんな姿なんだよ?」と思わずツッコミを入れたくなるその姿は、とにかく見ていて飽きない。なるほど、これは植物を「デザイン」という観点から見たくなる気持ちもわかる。

サキュレント(多肉植物)、オーキッド(蘭)、サンセベリア、ディッキア、カクタス(サボテン)、タンク・ブロメリア、エア・ブロメリアなどなど、種類別に紹介されているページもあるので、おおよその傾向はわかる……ことはわかるのだが、ことはそう簡単ではない。

例えば多肉植物1つとってみても、ある本によれば、世界各地に1万5000種以上が分布し、一般に流通しているものだけで数千種あるという。また、素人目には同じように見える多肉植物とサボテンも、園芸界では区別して扱われる。たいへん煩雑で、一筋縄にはいかない世界であることがわかる。

これだけで買い! 充実のショップガイド


それにしても、こうやって見せられると、「実物を愛でたい」という気持ちが芽生えてくるもの。水苔や石を敷き詰めたガラスケース内に複数の植物を収めて栽培する方法を紹介する「ガラスケース栽培の悦楽。」なんてページを見ていたら、もうダメだ。我が家ならどこに置くスペースを確保できるか、気づけばシミュレーションしている始末である。

そして、そういった欲求にもきちんと応えてくれるのが本特集の素晴らしいところだ。

珍奇な植物ーー通称BIZARRE PLANTSを取り扱う全国のショップ30店を紹介した「BIZARRE PLANTS SHOP GUIDE 30」は、かなりありがたい。西武池袋本店の屋上にある「鶴仙園(カクセンエン)」など行ったことのある店もあったが、恥ずかしながらほとんど知らないところばかりだった(個人的には、このショップガイドだけで“買い”だった)。

また、このショップガイドには植物の店だけではなく、鉢の専門店も含まれていることにも唸った。なぜなら、なかなかこれというものが見つからなかったりするのが植物を入れる鉢だからだ。私自身、少し前に家の植物の植え替えをするにあたり、かなり歩き回って苦労したばかり。もっと早く知りたかった……。

置き場所や育て方についてもページが割かれているが、これはまあ煩雑すぎるため、おおまかなものとなっている。「購入の際に、お店の人に、自分の栽培環境をできるだけ詳しく伝え、その場所に合った管理方法を教えてもらうのがベスト」と、その道のプロに相談することを推奨している。あるいは、書店に行けば、育て方に特化した本も売られている。

『BRUTUS』最新号、特集「BIZARRE PLANTS HANDBOOKーー珍奇植物。いま一番、モードな園芸。」は、植物熱を喚起させるに十分な内容であった。そして、9月下旬にはサボテン・多肉植物のビッグバザールが東京で、12月初旬には熱帯雨林植物の展示即売会が大阪で開催予定だという。

散財の予感に震える。
(辻本力)