マッサージ師の「お客さんこってますね〜」って信じていいの?
本当に「こっている」?
マッサージ師に「お客さんこってますね〜」なんていわれたこと、ないだろうか。
ぼくは指圧の治療院で働いているが「他のマッサージ店で『信じられないほどこっている』っていわれています」なんていうお客さんはとても多い。
でも「信じられないほどこっている」といわれている人の身体を指圧してみると、それほどでもないこともよくあるのだ。
ひょっとしたら「こってますね〜」って誰にでもいっている? マッサージ師って信頼できない? いや、これにはお客さんのことを考えたちゃんとした理由があるのです。
「こってますね〜」といわれる理由
大前提として、そもそもお客さんは自分自身が「こっている」と考えているからマッサージ店に来ている。
そこでマッサージ師が「それほどでもないですよ」なんていったとしよう。お客さんは「マッサージ店に来たという意思決定」を否定されたような気になるだろう。
疲労を感じているところに否定が加わると……苦痛はかなりのものだ。その後に続く施術も、なんとなく不信感をもったままになってしまう。マッサージでとれたかもしれない疲労感もとれず、なにしに来たのだかわからない。
逆に「こってますね」と言葉をかけることは癒しになる。
客観的な評価が必要か
ぼくたちマッサージ師は毎日いろんな人の体を触る。その中には本当に筋肉が木材みたいな固さになってしまっている人もいる。自分なりに「この人は固いな」とか「ふつうくらいかな」なんて思うこともある。
しかし自分の客観的な経験と、お客さんさんの主観的な苦痛をくらべて、そのまま伝える意味はあるかどうかは疑問だ。世の中のマッサージ師の多くがそう考えた結果「こってますね」が頻発されるのだろう。
もちろん「痛みが続いているのに筋肉の固さに異常が感じられない」ということが臨床上大きな意味を持っていて、それを本人に伝えなくちゃいけないこともある。そういう判断をうまくできるのが、本当に上手なマッサージ師なんだと思う。
「こってますね〜」の言葉、けっこう繊細な問題をはらんでいるんですよ。
(斎藤充博)