地元にSKE48が、玲奈さんがいてくれて本当によかった…松井玲奈卒業までの1ヶ月間を追いかけてみた
きのうで8月も終わってしまった。夏の終わりに私が無性に聴きたくなる曲のひとつにSKE48の「花火は終わらない」がある。そこには「花火は終わらない 僕らの恋のように」という歌詞が出てくるのだけれど、あれを聴くたびに「終わらない」というのは反語的表現なのだと思う。だって花火も恋も必ず終わるものだから。そもそも世の中に終わらないものなどないだろう。
というわけで、きのう8月31日にSKE48の7年間の活動を終え、卒業した松井玲奈について書いてみたい。
SKE48は名古屋を拠点とする地元アイドルのはずなのだが、そのわりには地元との関係が希薄な時期が長かった。東京キー局制作のSKEの冠番組も、ほとんどが名古屋地区ではネットされず、地元局での冠番組もミニ番組をのぞけばあまり長続きすることなく、現在は残念ながら皆無である。
同じ48グループのNMB48やHKT48はすでにそれぞれの地元である近畿と九州でライブツアーを行なっているが、SKEはようやく結成6周年を迎えた昨年秋より全国ツアーを開始した。メンバーに出身者の多い三重県での公演もそこで初めて行なわれている。ただし東海三県のうち岐阜県ではまだ開催にいたっていない。
ようするに、地元でファンをやっていることにほとんどメリットが感じられないという状況がここ数年続いてきたのだ。それがこの8月、松井玲奈の卒業を前にして、15日にはポートメッセなごや(名古屋港・金城埠頭)で「松井玲奈と思い出争奪 名古屋横断ウルトラクイズ」、翌週22日にはポートメッセのお隣のリニア・鉄道館で「“鉄道ファン”松井玲奈 スペシャルトークショー」と地元でのイベントがあいつぐ。この夏「卒業する玲奈さんをできる範囲で追っかける」と自分のなかで誓った私はそれらに足しげく出かけた(以下、「松井」あるいは単に「玲奈」と呼ぶのもどうもしっくり来ないので「玲奈さん」と表記させていただくことにする)。
「名古屋横断ウルトラクイズ」では、玲奈さんと名古屋の思い出の地をバスでまわるというツアーへの参加権を賭けて参加者たちが○×クイズに挑戦した。ちなみに私はこの日のうちに送らないといけない原稿があったため、バスツアーへの参加は最初から断念したうえでの参加だった。意味ねーだろという声が聞こえてきそうだが、いえ、好きな人と少しでも時間を共有したいというのがファン心理というものでして……。まあ、前半の「松井玲奈の好きな料理はグリーンカレーである」という問題で×を選んであっさり脱落したから、原稿のことを心配するまでもなかったのだが。
リニア・鉄道館でのトークショーは開催当日の11時と13時の2回行なわれ、私はその日朝までに送らないといけない原稿を書き終えてからどうにか13時の回に滑りこむ。この日の玲奈さんの衣裳はグリーンのノースリーブと、アイドルではない24歳の等身大の女性という雰囲気だった。ただし語っていることは、「700系新幹線の車内の匂いが好きです」とか、普通の24歳の女性が言いそうもないことだったけど。それにしても、鉄道車両の匂いに注目する「匂い鉄」って新しいかも。
このほか、13日の愛知県美浜町での美浜海遊祭にてここ数年恒例となっているSKE48のライブが行なわれるなど(残念ながら私は抽選に漏れて観に行けなかったが)、8月半ば以降はほぼ毎週何かしら玲奈さんの参加するイベントがあったことになる。そして29日には、豊田スタジアムでの卒業コンサートの初日を迎える。
この日のセットリストは玲奈さんが決めたもの。なかには彼女の依頼を受けてメンバーの高木由麻奈が作曲したテクノ調のダンスナンバーもあった。また、やはりメンバーの斉藤真木子が「Escape」という曲の振り付けをまかされるなど、後輩の才能を引き出すための玲奈さんの心遣いが随所にうかがえた。
ところで、私はこの日の午前中、豊田スタジアムに行く前にNHK名古屋放送局に立ち寄り、中部7県でのみ放送されたSKE出演の歌番組「Uta-Tube」のライブビューイングを観覧した(じつはこの回が公開収録された際にも見に行ってたりして)。
同番組のMCの鉄平が観覧者に質問したところ、ほとんどがきょうとあすのコンサートに行くファンであることが判明。まあそりゃそうだろう。ちなみに鉄平は名古屋で活躍するタレントで、SKEとはテレビやイベントでの共演も多い。玲奈さんのこともよく知るだけに、この日も彼女の雨女ぶりに冗談めかして触れ、ファンを笑わせていた。
そう、玲奈さんの雨女ぶりはファンのあいだではよく知られるところだ。そこへ来て卒業コンサートの29日・30日、そしてSKE48劇場での最終公演の行なわれる31日と連日雨の予報が出ていたのだからただごとではない。
29日は開演前からどんよりと曇っていたが、アンコール前まではどうにか雨に降られずに済んだ。それがアンコール明け、玲奈・松井珠理奈・大矢真那の1期メンバーが登場したとたん、雨が降り出した。そのときの曲が「神々の領域」だったこともあり、ここまで来ると神々しさすら覚えた。そう、松井玲奈は雨女などという俗なレベルではなく、“雨神”ともいうべき域にまで達していたのだ。
……などと、ひとりごちて帰途に就いた私は、そこで本降りにあい、会場で買ったコンサートのパンフレットを濡らしてしまうのだった。神様、むごうございます……。
2日目、正真正銘の卒業コンサートは、公演前には晴れ間がのぞくまずまずの天気。公演前のアナウンス(影アナ)には玲奈さん本人が行ない、「降水確率は90パーセントなので、レインコートの用意をしておいてください」ともはや自らネタにするほどに。
この日は、SKEからAKB48に移籍した木崎ゆりあ(崎の大は立)、振付師の牧野アンナがサプライズ出演したほか、玲奈さんが春まで1年間兼任していた乃木坂46のメンバーがコンサート中の神宮球場から生中継で大型ビジョンに登場した。乃木坂はVTR出演と当初伝えられていたが、生出演、しかも神宮にも玲奈さんのイメージカラーであるグリーンのペンライトがあちこちに光っていて、会場はおおいに沸いた。
しかしそれ以上に驚かされたのが、やはり雨の降るタイミングだ。卒業セレモニーを終えた玲奈さんは、メンバーに見送られながらゴンドラに乗りセットの頂点まで登りつめると、噴水が上がるとともにその姿を消す。雨が降ってきたのはその直後だった。ここまで来るともはや奇跡である。やはりただの雨女ではなかったな、松井玲奈。
明けて31日。ついにSKE48の松井玲奈としては最後の活動となるSKE48劇場での最終公演が行なわれた。この日、劇場の入るサンシャインサカエの地下1階にはモニター観覧用のスペースが設けられた。ただしここで公演を見られるのはSKEのモバイルサイト会員からの当選者のみ。けっきょく私は、劇場での観覧どころかモニター観覧にも外れてしまう。まあ、あそこの地下1階は1階まで吹き抜けになっているから、モニターを覗くことはできるだろう……と思ったのだが、甘かった。
1階の吹き抜け周辺のスペースは文字どおり黒山の人だかり。開演時間ぎりぎりに来た私の場所からはモニターを見るのは不可能だった。結局、現地では音だけ聴きながら、DMMでのネット生配信(1分ほどのタイムラグがある)を観るというよくわからないことに。まあそれでも多くのファンと玲奈さんのSKEでの最後のメッセージを聞き届けられたのはよかった。
ほかのメンバーたちがはけたあと、ひとりステージに残った玲奈さんは、新曲「前のめり」ではとくに「希望は体力」という歌詞に心を込めて歌っていたと語った。これというのも、うまくいかなかったり夢をあきらめかけたりしたときに力になるものこそ希望だと、後輩に伝えたかったからだという。公演前の影アナを担当したときも、「ほかのメンバーの名前も呼んでください」と来場者に告げるなど、最後の最後まで後輩を気遣い、そしてグループの未来を彼女たちに託して玲奈さんは劇場を去った。
最終公演には劇場に入りきれないほどの人が集まり、サンシャインサカエは大盛況だった。ただ、AKB48を前田敦子が卒業するときには、秋葉原の街のあちこちに前田の名前や写真の入った垂れ幕が掲げられたのに対し、今回、栄ではそういう光景を見られなかったのがやや心残りではある。地域密着は今後も引き続きSKE48に課せられたテーマだろう。W松井のもう一角、松井珠理奈が卒業するときにはもっと街ぐるみで送り出せるようになっていることを祈りたい。
(近藤正高)
というわけで、きのう8月31日にSKE48の7年間の活動を終え、卒業した松井玲奈について書いてみたい。
異例? 毎週のように地元でイベントが
SKE48は名古屋を拠点とする地元アイドルのはずなのだが、そのわりには地元との関係が希薄な時期が長かった。東京キー局制作のSKEの冠番組も、ほとんどが名古屋地区ではネットされず、地元局での冠番組もミニ番組をのぞけばあまり長続きすることなく、現在は残念ながら皆無である。
同じ48グループのNMB48やHKT48はすでにそれぞれの地元である近畿と九州でライブツアーを行なっているが、SKEはようやく結成6周年を迎えた昨年秋より全国ツアーを開始した。メンバーに出身者の多い三重県での公演もそこで初めて行なわれている。ただし東海三県のうち岐阜県ではまだ開催にいたっていない。
ようするに、地元でファンをやっていることにほとんどメリットが感じられないという状況がここ数年続いてきたのだ。それがこの8月、松井玲奈の卒業を前にして、15日にはポートメッセなごや(名古屋港・金城埠頭)で「松井玲奈と思い出争奪 名古屋横断ウルトラクイズ」、翌週22日にはポートメッセのお隣のリニア・鉄道館で「“鉄道ファン”松井玲奈 スペシャルトークショー」と地元でのイベントがあいつぐ。この夏「卒業する玲奈さんをできる範囲で追っかける」と自分のなかで誓った私はそれらに足しげく出かけた(以下、「松井」あるいは単に「玲奈」と呼ぶのもどうもしっくり来ないので「玲奈さん」と表記させていただくことにする)。
「名古屋横断ウルトラクイズ」では、玲奈さんと名古屋の思い出の地をバスでまわるというツアーへの参加権を賭けて参加者たちが○×クイズに挑戦した。ちなみに私はこの日のうちに送らないといけない原稿があったため、バスツアーへの参加は最初から断念したうえでの参加だった。意味ねーだろという声が聞こえてきそうだが、いえ、好きな人と少しでも時間を共有したいというのがファン心理というものでして……。まあ、前半の「松井玲奈の好きな料理はグリーンカレーである」という問題で×を選んであっさり脱落したから、原稿のことを心配するまでもなかったのだが。
リニア・鉄道館でのトークショーは開催当日の11時と13時の2回行なわれ、私はその日朝までに送らないといけない原稿を書き終えてからどうにか13時の回に滑りこむ。この日の玲奈さんの衣裳はグリーンのノースリーブと、アイドルではない24歳の等身大の女性という雰囲気だった。ただし語っていることは、「700系新幹線の車内の匂いが好きです」とか、普通の24歳の女性が言いそうもないことだったけど。それにしても、鉄道車両の匂いに注目する「匂い鉄」って新しいかも。
松井玲奈はもはや雨女ではない
このほか、13日の愛知県美浜町での美浜海遊祭にてここ数年恒例となっているSKE48のライブが行なわれるなど(残念ながら私は抽選に漏れて観に行けなかったが)、8月半ば以降はほぼ毎週何かしら玲奈さんの参加するイベントがあったことになる。そして29日には、豊田スタジアムでの卒業コンサートの初日を迎える。
この日のセットリストは玲奈さんが決めたもの。なかには彼女の依頼を受けてメンバーの高木由麻奈が作曲したテクノ調のダンスナンバーもあった。また、やはりメンバーの斉藤真木子が「Escape」という曲の振り付けをまかされるなど、後輩の才能を引き出すための玲奈さんの心遣いが随所にうかがえた。
ところで、私はこの日の午前中、豊田スタジアムに行く前にNHK名古屋放送局に立ち寄り、中部7県でのみ放送されたSKE出演の歌番組「Uta-Tube」のライブビューイングを観覧した(じつはこの回が公開収録された際にも見に行ってたりして)。
同番組のMCの鉄平が観覧者に質問したところ、ほとんどがきょうとあすのコンサートに行くファンであることが判明。まあそりゃそうだろう。ちなみに鉄平は名古屋で活躍するタレントで、SKEとはテレビやイベントでの共演も多い。玲奈さんのこともよく知るだけに、この日も彼女の雨女ぶりに冗談めかして触れ、ファンを笑わせていた。
そう、玲奈さんの雨女ぶりはファンのあいだではよく知られるところだ。そこへ来て卒業コンサートの29日・30日、そしてSKE48劇場での最終公演の行なわれる31日と連日雨の予報が出ていたのだからただごとではない。
29日は開演前からどんよりと曇っていたが、アンコール前まではどうにか雨に降られずに済んだ。それがアンコール明け、玲奈・松井珠理奈・大矢真那の1期メンバーが登場したとたん、雨が降り出した。そのときの曲が「神々の領域」だったこともあり、ここまで来ると神々しさすら覚えた。そう、松井玲奈は雨女などという俗なレベルではなく、“雨神”ともいうべき域にまで達していたのだ。
……などと、ひとりごちて帰途に就いた私は、そこで本降りにあい、会場で買ったコンサートのパンフレットを濡らしてしまうのだった。神様、むごうございます……。
卒業セレモニーの直後に奇跡が
2日目、正真正銘の卒業コンサートは、公演前には晴れ間がのぞくまずまずの天気。公演前のアナウンス(影アナ)には玲奈さん本人が行ない、「降水確率は90パーセントなので、レインコートの用意をしておいてください」ともはや自らネタにするほどに。
この日は、SKEからAKB48に移籍した木崎ゆりあ(崎の大は立)、振付師の牧野アンナがサプライズ出演したほか、玲奈さんが春まで1年間兼任していた乃木坂46のメンバーがコンサート中の神宮球場から生中継で大型ビジョンに登場した。乃木坂はVTR出演と当初伝えられていたが、生出演、しかも神宮にも玲奈さんのイメージカラーであるグリーンのペンライトがあちこちに光っていて、会場はおおいに沸いた。
しかしそれ以上に驚かされたのが、やはり雨の降るタイミングだ。卒業セレモニーを終えた玲奈さんは、メンバーに見送られながらゴンドラに乗りセットの頂点まで登りつめると、噴水が上がるとともにその姿を消す。雨が降ってきたのはその直後だった。ここまで来るともはや奇跡である。やはりただの雨女ではなかったな、松井玲奈。
新曲の歌詞に込めたメッセージ
明けて31日。ついにSKE48の松井玲奈としては最後の活動となるSKE48劇場での最終公演が行なわれた。この日、劇場の入るサンシャインサカエの地下1階にはモニター観覧用のスペースが設けられた。ただしここで公演を見られるのはSKEのモバイルサイト会員からの当選者のみ。けっきょく私は、劇場での観覧どころかモニター観覧にも外れてしまう。まあ、あそこの地下1階は1階まで吹き抜けになっているから、モニターを覗くことはできるだろう……と思ったのだが、甘かった。
1階の吹き抜け周辺のスペースは文字どおり黒山の人だかり。開演時間ぎりぎりに来た私の場所からはモニターを見るのは不可能だった。結局、現地では音だけ聴きながら、DMMでのネット生配信(1分ほどのタイムラグがある)を観るというよくわからないことに。まあそれでも多くのファンと玲奈さんのSKEでの最後のメッセージを聞き届けられたのはよかった。
ほかのメンバーたちがはけたあと、ひとりステージに残った玲奈さんは、新曲「前のめり」ではとくに「希望は体力」という歌詞に心を込めて歌っていたと語った。これというのも、うまくいかなかったり夢をあきらめかけたりしたときに力になるものこそ希望だと、後輩に伝えたかったからだという。公演前の影アナを担当したときも、「ほかのメンバーの名前も呼んでください」と来場者に告げるなど、最後の最後まで後輩を気遣い、そしてグループの未来を彼女たちに託して玲奈さんは劇場を去った。
最終公演には劇場に入りきれないほどの人が集まり、サンシャインサカエは大盛況だった。ただ、AKB48を前田敦子が卒業するときには、秋葉原の街のあちこちに前田の名前や写真の入った垂れ幕が掲げられたのに対し、今回、栄ではそういう光景を見られなかったのがやや心残りではある。地域密着は今後も引き続きSKE48に課せられたテーマだろう。W松井のもう一角、松井珠理奈が卒業するときにはもっと街ぐるみで送り出せるようになっていることを祈りたい。
(近藤正高)