「女の子に教えて何になる」最近話題の三角関数「Newton」特集号Kindle版セール中

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「高校教育で女の子に(三角関数の)サイン、コサイン、タンジェントを教えて何になるのか。社会の事象とか、植物の花とか草の名前を教えた方がよい」
8月28日の南日本新聞で報じられた、鹿児島県の伊藤祐一郎知事の発言。それと時を同じくして、科学雑誌「Newton(ニュートン)」のKindle版がセールを開始(通常価格400円から250円に)。
「サイン、コサイン、タンジェント: 三角関数がすぐわかる」特集号は8月30日現在、Kindle本の売れ筋ランキングベスト10に入っている。


三角関数ってなんだったっけ?


三角関数は、現在「数学2」で教えられる単元(1982年以前は「数学1」に含まれていた)。主に高校2年生で学習する。
有名なのは「加法定理」。
sin(α+β)=sinαcosβ+cosαsinβ
sin(α-β)=sinαcosβ-cosαsinβ
cos(α+β)=cosαcosβ-sinαsinβ
何が何だかははっきり覚えていなくても、「咲いたコスモス、コスモス咲いた」といった語呂合わせが頭に残っている人は多いんじゃないだろうか。
下ネタの語呂合わせも流行っていた。たとえば「さすってこすってこすってさすって」とか「しこってこすってこすってしこって」とかとか(私はこの覚え方を導入にしてエロ小説を書いたことがある)。

そんな不真面目な人でも、「Newton」の三角関数特集号を読めば、「ああ〜こんなのあった!」と思い出せる。大きく分けて3部構成だ。
・三角関数の基礎 サイン、コサイン、タンジェント
・三角関数の重要公式
・「三角形」から「波」へ

三角関数のはじまりは、紀元前のギリシアおよびエジプト。天球上の星の位置を正確に記述して暦を作るために生まれた。5世紀ごろにインド、8世紀ごろにアラビアに広まり、11世紀にはヨーロッパに伝わっている。

三角関数は「使える」?


伊藤知事は「(三角関数は人生でほとんど)使ったことがない」と語った。
しかし、三角関数は数学の中でも「使われている」単元。物理学や工学には必要不可欠。建築やプログラミングなどでも、基礎中の基礎として使われている。

三角関数は「使える」が、もっと目先のことを言ってしまえば、受験で「使う」。
多くの国公立大学では、理系はもちろん文系でもセンター試験で「数学2・B」を解く必要がある。
このシステムを変えないまま「女の子には数学は必要ない」と言ってしまえば、それはつまり「女の子は国公立大学に行く必要がない」と言っていることになってしまう。
私立でも最近は「センター試験利用入試」ができる大学が増えている。数学ができれば、受験できる大学の選択肢が一気に広がるのだ。
ちなみに私も私学文系で、大学受験のときは数学1Aをフルに利用した(センター試験で9割以上とった)。数学を勉強してなければ、私は大学に入れていない。一番の得意科目は今も昔も国語だが、中学受験で、高校受験で、そして大学受験で、数学は常に味方になってくれた。今もエロ小説のネタになるし、人生のあらゆるシーンで数学は大活躍している。

鹿児島県の四年制大学の進学率は、2015年のデータによると35.1%で全国最下位。女子の進学率も同じく最下位(29.2%)で、3人に1人しか進学していない。

Kindle版「Newton」は、「三角関数」特集以外もセール中。
「新・ゲノム革命:社会と暮らしはこう変わる」特集や「植物─驚異の生態:100メートルをこす巨樹、発熱して腐臭を発散させる花」特集なんかは、知事のお眼鏡にも叶うかもしれない。
(青柳美帆子)