岡田斗司夫ではないけれど、大変に有名な方に誘われて…元サークルクラッシャーが語る恋愛の危機

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岡田斗司夫の愛人になった女子と、サークルクラッシャーの犠牲になった男子。なぜ彼らは複数の異性とつきあう厄介なひとたちにハマってしまうのか。鶉まどか「岡田斗司夫の愛人になった彼女とならなかった私 サークルクラッシャーの恋愛論」。そこには、居場所を求める心があった。居場所がほしいがなかなか自分から動けない恋愛弱者たちは、積極的にコミットしてくるひとについつい依存してしまう。そうならないために、自ら一歩動く必要性を鶉まどかは説く。後編は、鶉まどかの恋愛指南。言って見れば、女性のための「恋愛工学」だ。
前編はこちら


岡田斗司夫問題は他人事ではないと思った


──ご自身も、岡田斗司夫ではないけれど、ある先生に誘われて・・・というエピソードがあります。あれは誰なんですか。
鶉 実名をあげるつもりはありませんが、まぁその学術分野では大変に有名な方です(笑)。余談ですが、私の父は大学教授で、その先生は父のことを知っていました。会ったときに、父のことも話題になったんですよ。父と私の顔が似ているって(笑)。
──お父さんが知り合いなのに、誘ってきたんですか。
鶉 そうなんです、すごいですよね。父のことも知ってる上で、ぜんぶこみこみで(笑)。
──さすがですね! って何がさすがなんだ(苦笑)。
鶉 さすがですね(笑)。出会いのエピソードは本にも書いてありますが、私が見に行ったある映画のアフタートークにその先生が登壇されていて。終演後、映画館のバーで飲んでいたら、先生が来たので話しかけたところからやりとりがはじまりました。人生、何が起こるかわかりません。
──そういうイベントなどで、有名人のところに行っておしゃべりできる頑張りやさんは出世していくんですよ。
鶉 ははは(笑)。その先生と出会った経験から、岡田斗司夫問題は他人事ではないと思ったんです。なぜなら、その先生もいっぱい愛人がいたんです。なんでそれを知ったかというと、先生が逐一、「今日はなんとかちゃんっていう愛人と会って」という報告を私にしてきたからです(笑)。岡田斗司夫もそうだったみたいで、他の女の子もいるっていうのをあえて言うみたいです。
──それって大奥的な何か?
鶉 ですかね? あるいは、嫉妬心を煽って、愛を深めさせたいんでしょうね。私は単純に何を言っているんだろう? と呆れましたけれど。そこでわかったのは、岡田斗司夫にしても先生にしても、世の中のモテる男の条件はマメであることです。先生、超忙しいはずなのに、日に何十通とLINEが来ました。もう朝から晩まで。ホテルで原稿のためにカンヅメになっている状況でも長文のLINEが来る。原稿は? みたいな(笑)。
──できる男のほうがエネルギッシュだから、なんでもできますよね。逆にできない男はなんにもできない。
鶉 それ、けだし名言だと思います(笑)。
──鶉さんの体験とそれに基づく考察は本を読んでいただくことにして、鶉さんは今後、作家になりたいんですか?
鶉 ゆくゆくは・・・とも思いますが、まだOLとしてやりたいこともあるんです。
──広報の仕事を?
鶉 はい。やっぱりやりたくてやっている仕事なので。その一方で、ブロガーとして謎の使命感に燃えてる部分もあります。というのは、世の中の恋愛論の傾向がいま、すごくマッチョなんですよ。有名どころだと、はあちゅうさん。六本木でシャンパンを開けて…みたいな雰囲気ですよね。
──バブルに回帰していますよね。
鶉 いま、恋人ができない人が、50%なのに、恋人ができる方法を通り超して、いい男にモテるという恋愛ピラミッドの頂点に君臨している人たちの話になっているんです。こういう恋愛論が出れば出るほど、世の中の大半は恋愛に絶望していくばかりなのではないかと思うんですよ。サークルクラッシャーをしていた私は、六本木でシャンパンを開けてフォアグラを食べ、男の子に車で家まで送ってもらうなんてモテはぜんぜん経験していませんが、男の子から好きって言われた回数だけはきっと多いはずなんです。
──ご自身の経験からマッチョでない恋愛を語ろうという使命感が。
鶉 恋愛弱者の立場に寄り添って、年収も高くないしイケメンじゃなくても恋愛していいんじゃない? ということを言っていきたいですね。


自分からごはんに誘いました


──鶉さん、いま恋愛は。
鶉 恋愛はしています。いまはわりと安定していると思います。
──おつきあいして何年ぐらい?
鶉 まだ1年経ってないです。本にも書いた私が150万円貢いだ男との関係が終わったのが一昨年くらいなので。
──その新しい恋愛は、失敗も成功も含めて、過去の経験が生かされているんですか。
鶉 と、私は思っています。たとえば、ものすごく好きな人が現れても、一歩が踏み出せなければ永遠に交わらない。この一歩を踏み出す技術は、サークルクラッシャーをやって身につけました。言ってしまえば、たぶん世の中のほとんどの人は、この一歩の踏み出し方がわからなくて戸惑っている。だから、私がこの本で言いたいのは、サークルクラッシャーをやれってことではなくて、一歩踏み出すだけのテクニックを獲得してほしいということなんです。
──今回の恋も鶉さんのほうから、気になる男子に向けて一歩踏み出した?
鶉 自分からごはんに誘いました。
──それはどういうふうに。
鶉 相手と知り合ったのはふつうに飲み会でした。相手はこの本にも出てくるような、いわゆるふつうの男の子で、連絡先を交換してもなかなか次に続かないんですよ。そこで私が焼き肉を食べに行きましょうとお誘いしました。
──いきなり焼き肉に。
鶉 持論ですけど、男の子は女の子に焼き肉に誘われると非常に弱いんです。男の子って基本的に、焼き肉とビールっていう組み合わせがとても好きです。あとラーメンですね。だから、焼き肉に誘うと、女の子に対してどうこう以前に焼き肉を食べたいという気持ちが先に立ってOKしやすい。さらに、自分が好きな焼き肉を食べにいける女の子は男の子にとって気楽な存在に映ります。これがおしゃれなイタリアンになってしまうと尻込みしてしまう。だから、私は、焼き肉に一緒に行ける気さくさを演出するんです。
──ほんとにサークルクラッシャー体験が役に立ったようですね。話をそのサークルクラッシャーに戻しますが、クラッシャーされた側のひとたちは、その後どうなるんですか? そのまま崩壊するんですか。それとも元に戻るんですか? 
鶉 両極端です。本来仲良かったのに、その子が入ったことで一時的に別れちゃった場合、また緩やかに復活することもあります。そもそも、男の子同士が、単に居場所を求めるだけでそんなにお互い好きじゃないけど集まっていた場合は元に戻らないですね。
──サークルクラッシャーは、コミュニティの欺瞞みたいなものをぶち壊す存在と思うとちょっと面白いです。
鶉 壊しやすいサークル、壊しにくいサークルがあります。一例として、確たるリーダーみたいな人がいると壊れ辛い。実際、私もリーダーみたいな人に阻止されたことがあります。
──すばらしいじゃないですか、そのリーダー。
鶉 見た目はひょろーんと痩せた、眼鏡の、いわゆるモテないお兄さんみたいでしたが(笑)、すごく仕事もできるし、カリスマ性もありました。私が不穏な動きをしたのをソッコーでキャッチして、私を呼び出し追求して、サークルクラッシャーする意図があるなら出ていって欲しいと言いました。すごく冷静に諭されたので、これは無理だなと思って私は去りました。
──その人のことを好きにならないんですか?
鶉 ないです、なんか怖いから。
──その人がいちばんいいじゃないですか、人間的に。
鶉 いいと思いますよ、人間的には(笑)。
──リーダーを狙うんじゃないんだ。
鶉 当時の私の目的は、恋愛することじゃなくて、とりあえずスライムいっぱい倒す、みたいな感じだったんですよ(笑)。
──既にサークルクラッシャーを卒業されているから言いますけど、志が低いですよね。
鶉 低いです! とっても低いです。なんでもいいからたくさんモテたかったんです。
──なんでもいいからモテたいって、男の子の、100人斬りとか威張っているけど、実際、風俗的なとこで100人斬っているだけなのに、みたいなこと?
鶉 男の子の100人斬りとの違いは、男の子の100人斬りって、ホモソーシャルありきなんですよ。つまり、俺は100人の女とヤったぜっていうのは、男の子に対しての自慢なんです。
でも、私は女友達にいっさいそんな話はしません。反感を買いたくはないので。そこが、女の子と男の子の友達関係の差かもしれませんね。
──おそらく岡田斗司夫もそういうことでしょう? 愛人リストとか書いているのも、男友達に自慢したかったからですよね、きっと。
鶉 男友達のなかでの「俺SUGEEEE自慢」の極端な例ですよね。
──そう思うと、岡田斗司夫も男の子的な自慢話をしたかっただけなのに、ちょっと度が過ぎて悲劇になってしまいお気の毒な気が。よく知りませんが。
鶉 そう、だからこそ、社会問題なんですよ。たぶん、同じようなことがそこかしこで起こっていますよ。
──そういった出来事をさらに叩くのではなく、鶉さんみたいに論理的に考えてみるっていう本はいいですよね。
鶉 ありがとうございます。

不景気であるかぎり、たぶんずっと続いてくでしょう


──面白かったのが、ほんとにすごくかっちり分析していますよね。結論としては恋愛したほうがいいというようなことなのに、まったく恋愛っぽいふわふわしたところがない。
鶉 いま、「恋愛工学」がすごく流行っていて、あれもすごく論理押しです。ふわふわした恋愛に行き着く方法論がふわふわしすぎていて、それに怒ってるひとたちが、「リア充爆発しろ」ってTwittertに書いているわけで。彼らのためには論理的に考えるしかないんです。
──それこそ全盛期の月9的なふわふわでキラキラな感じにどうしていいかわからないし、恋愛にしても結婚にしても、実は夢なんて甘いものじゃなくて、もっと頭をつかって関係性を構築していかないといけない厳しいものであると。
鶉 頭をつかうと言っても、難しい話じゃないんです。例えば、すごくつらいときに、誰かが隣にいてくれることはとっても幸せなことですよね。でもその幸せを得るためには、やっぱり相手のことも自分が理解しなきゃいけなくて、そのためには自ら一歩踏み出して、相手に歩み寄っていくしかないんです。
──レベルが多少低くても、それに目を向けて努力して、ということですか。
鶉 いま思うと、私がスライムのように斬ってきた子たちも、たぶんちゃんと向き合えば、決して雑魚ではなかったんですよ。私が雑魚だと規定しちゃっただけで。上ばっかり見ていると、目の前にいる人をスルーしちゃう。でも、恋愛においては、たとえスペックがそんなに高くなくても、お互いをいちばん分かり合えるような相手であることがベスト。目の前にいる人を根っこの部分から知っていくことが幸せにつながるんじゃないかと思います。これってすごく当たり前のことなんですけどね(笑)。
──そうやって、いまの日本の状況に危機感を感じてこの本を書かれた鶉さん、これから世の中が変わっていくと思います? 
鶉 リスクを抑えてコスパをとるやり方は、不景気であるかぎり、たぶんずっと続いてくでしょう。ただ、これからまだまだ人口が減っていくとしたら、もうちょっと他人との距離が近くなりそうな気はしているんです。若い人がどんどん減っていくからこそ。その一端を、私は、マイルドヤンキーに見出しています。若い人たちが少ない地方だからこそ互いの結束が固くなるんですよね。地方都市だけでなく、今後、お互いにもっと向き合わなければいけない時代がやってくるのではないかとも思っています。インターネットも成熟してきたいま、従来のような受け身のコンテンツではなくて、体験型のコンテンツに比重が置かれ始めている気もします。代表的なのが脱出ゲームです。仲間たちと一緒に謎解きをしてクリアしていくようなアナログなゲームにいま注目が集まっています。その反面、リスクを恐れて、他人とのコミュにケーションに踏み出さないで孤立する人も増えていく。孤独化する人と、マイルドヤンキー的なコミュニティで楽しめる人の二極化がどんどん進んでいくと思います。だから私は孤独死しないために一歩踏み出すことの大切さを語っていきたいです。
──孤独死かマイルドヤンキーかしかなくなっちゃう? 究極の選択(笑)。
鶉 老人ホームに取材に行くと、そこもすでに二極化しています。みんなでわいわい塗り絵やってる人もいれば、誰とも話せず、すみっこでずっとぶつぶつ言っているだけの人もいるんです。面白いのは、老人ホームで、15人の女性のなかにたったひとり男性がいるところがあって、そうすると女性は彼を王子様視して、生きる気力が沸いてくるんですよ。
──それ、老人ホームが意図的にやっているんですか?
鶉 それはたまたまなんですけど。ほかに、イケメンな施設長がいるところは、女性がみんなめちゃめちゃ元気です。70歳、80歳なってもそういうのは変わらないんですよ。
──まさかそこにもまたサークルクラッシャーが・・・。
鶉 いますよ。京都大学のサークルクラッシャー研究会の会長から、既に、老人ホームにサークルクラッシャー的な存在ができはじめていると聞いています。
──三つ子の魂百までって言いますから。死ぬまでクラッシュ。
鶉 死ぬまでクラッシュ(笑)。恋愛だけではなく、人とのコミュニケーションは、人間が生涯関わり続けていく根源的な問題だと思います。
(木俣冬)